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“芋虫ディナー”も“乳丸出し祭り”もどんとこい!

今や日本を代表するアボリジニアートのコーディネイターとして、数々のメディアに登場する内田真弓さん。華やかな日々を謳歌していた彼女が、どんなきっかけでオーストラリアに渡り、アボリジニアートと出会い、何を感じたのか。日々に少し息苦しさを感じているあなたにこそぜひ読んでもらいたい物語。第3回です。

“芋虫ディナー”も“乳丸出し祭り”もどんとこい!

晴れてメルボルンでギャラリーのスタッフとなった内田さん。けれど、まったく絵を売ることができなかった。

「当然ですが他のスタッフは、美術を専門に勉強してきた人たち。一方私は知識がほぼない上に、英語さえつたない。お客さまに、魅力をうまく伝えることができなくて」。せっかく雇ってくれたのに、売り上げに貢献できない日々が続く。心苦しさと、いつクビになるのかという恐怖心から、もはや自分から辞めたほうがいいのではと思わずオーナーに申し出ると、こう問われた。

「What do you want? キミはどうしたいの?って」。オーストラリア人には、この“問いかける”精神が深く根付いているようだと内田さんはいう。そして問いかけられたほうも、常に自分の意見をもっていなければいけない。「私はどうしたいか? 今は何もしていない人間だ、だから何かをする私になりたい。そう強く思いました」。

そこから内田さんは、誰もやったことのないことをはじめる。入るのに特別な許可が必要なアボリジニ居住区へ、ひとりで通い、時に住み込みながら、暮らしや文化を学ぶことをはじめたのだ。「最初はみんな目も合わせてくれなくて」。でも、根気よく時間をかけて彼らのコミュニティーに溶け込んでいった。

彼らがご馳走として出してくれた生きのいい芋虫を(目をつぶって!)食べ、祭りではみんなと同じように丸出しの乳にボディペインティングをして踊った。「いったん心を開いてくれたら、それこそ家族のように心温かな人たちです」。そして、気づけばギャラリーでもトップレベルの成績を収めるように。「専門書に載っていない、私だけのアボリジニアートの物語ができはじめたのだと思いました」。

「アボリジニの人たちは政府から冷蔵庫を支給されても使わないし、ベッドをもらっても地面に寝る。なぜなら、大地がスーパーマーケットであり、家だからです。お腹が空けば狩りをして火にくべ、眠くなればそこで横になる。思い切り怒り、泣き、笑う。自分の心に正直に、深くまっすぐ生きている人たちです。そんな彼らに魅了され、気づけば22年。ライフワークになっていました」。

>>次回
https://p-dress.jp/articles/1507

内田 真弓
アボリジニアート・コーディネイター。1966年茨城生まれ。大手航空会社でキャビンアテンダントを経験後、26才で退職しオーストラリアでボランティアの日本語教師に。1994年よりメルボルンのアボリジニアートの画廊に6年間勤務。2000年に独立、「ART SPACE LAND OF DREAMS (http://www.landofdreams.com.au )」を立ち上げ現在に至る。 著書に『砂漠で見つけた夢』(K.Kベストセラーズ)。今年10月、東京銀座三越にて「内田真弓プロデュース・アボリジニアート展(仮)」を開催予定。

DRESS編集部

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