私の場合

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結婚して友達が減って、子どもを持ってさらに減ったけれど、よかったと思っていること。

私の場合

たまには自分の話をしよう。
私にとって、結婚はとてもいいものだ。

結婚してから友達が減った。子どもを持ったらさらに減った。

よくあることだと思う。まず、時間が合わない。
夜飲みに行こうと言われても、自宅に夫婦でいる方が寛げる。
子どもが生まれると、当然飲みには行かない。

もともと友達とワイワイする方ではないので、話の合う人が一人いれば事足りる。その相手と人生の関心事やらやりくりやらを共有すると、さらに話が合うようになるので他の人と話す必要がますますなくなる。

夫婦のいいところは、相手を信じて話したことが漏洩する心配をしなくていいことだ。愛人とのピロートークでもれ出す危険はあるかも知れないが、愛人がいないと思われる場合には、親切そうな顔をして聞いていたのに陰で言いふらしていたなどという裏切りを受けることはまずない。

ある高名な作家が亡くなったあと、その妻が周辺に「一緒に悪口を言える人がいなくなって寂しい」ともらしたそうだ。とても悪口など言いそうもない上品なご夫人が、高邁な人柄を感じさせるその作家と一体どんな悪口を言っていたのか、なんだか微笑ましい。夫婦ってそういうものかとしみじみした。

悪口ばかりではあるまいが、夫婦は駆け引きや探り合いを抜きにした、気楽で下らない話のできる数少ない間柄である。その心地よさに慣れてしまうと、相手と自分の立場の違いを考え、受け取られ方を緻密に計算してリスク管理しながらの会話が億劫でたまらなくなる。

仕事ではそれが当たり前のなので苦にならない。
難しいのは、仕事関係でもなく家族でもない人との世間話、近況報告。
なるべく聞く。聞き役に徹しながら、質問されたことに当たり障りなく答える。
その当たり障りなく……が難しいので、気疲れする。

それであるときから、無理するのをやめた。気疲れする交流を避けるようになった。仕事の会合以外は、家族との時間で十分だ。

その結果、同級生とは縁が切れ、一緒につるむママ友もおらず、ご近所のうわさ話は何も知らない。女子会もママ会もない。

非常に平穏である。

夫婦喧嘩や子どもを叱るのはしんどいが、腹の探り合いに疲れることもなければ、無為なおしゃべりで時間を浪費することもない。

結婚生活は、防音壁つきのリビングルームのような寛ぎの場所。かつて、そのような場所を一緒に作った人はいなかった。

だから夫と結婚してよかったと今のところは思っている。
 

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小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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