山中智哉さんの連載バックナンバー
・「男性に『妊娠出産の現実』を知ってほしい理由」
・「男性に『体外受精の現実』を知ってほしい理由」
・「不妊原因の半数は男性にある。『男性不妊』を疑ったらしたいこと」
・「女性の体に起きている変化〜妊娠初期『4~8週』編」
・「女性の体に起きている変化〜妊娠初期『8~12週』編」
妊娠すると、女性の体はどう変化していくのでしょうか。今回は妊娠12〜15週頃(妊娠初期)の体の変化と、この時期に必要な検査について解説します。
妊娠安定期とは、通常妊娠15週以降を指しますが、妊娠12週を過ぎると初期流産の可能性も下がり、母児ともに状態が安定してきます。多くの方はこの頃に「つわり」症状も改善してきます。中には20週頃まで続く方もいますが、個人差もありますので異常ではありません。
安定期に向かう理由としては、妊娠8週頃から胎盤が形成され始め、妊娠15週頃には胎盤の基本的な構造が完成するからと考えられています。
「母子手帳はいつもらったらいいですか?」という質問をよく受けます。
実際には、妊娠がわかった後ならいつもらっても構いません。しかし、あまり早くもらって、万が一、流産になった場合のことなどを考えると、妊娠8〜10週頃にもらうのがいいと思います。そして、その時期から産婦人科で「妊婦健診」を受けることになります。
妊婦健診では、前回お話しした超音波検査とともに、血液検査も重要な検査になります。血液検査では、貧血がないか、ウイルス等の感染症にかかっていないかなど、妊娠初期に調べておくべき項目があります。
元々何か疾患を抱えている方は、その疾患が妊娠に与える影響について注意していく必要があります。自分で気づくことのできない疾患が見つかることもありますので、この初期の血液検査はとても重要なものです。検査の一部には、公的な補助金の適用もなされています。
妊娠12~15週は胎児がまだまだ小さいので、心臓や腎臓などの臓器についての評価は難しい時期ですが、全身の骨格ははっきりしてくる時期になります。
妊娠初期に評価する頭殿長(頭からお尻までの長さ)は、胎児の体の動きによって大きな差が出ますので、この時期の検診では頭部・体・脊椎・四肢など、体の個々の部分の大きさをチェックします。
前回お話ししたNT(胎児の首の後ろのむくみの所見)の評価も重要になります。
NIPT検査(胎児へのリスクが少ない新型出生前診断)が行われるようになって、出生前診断の考え方にも変化が起きましたが、従来よりこの初期のエコーも出生前診断として重要な意味を持ちます。体の構造異常をおこす染色体異常が疑われる場合には、羊水検査を行うかどうかを決める指標ともなっています。