2月特集「ねぇ、結婚したら苗字変えなきゃだめ?」編集後記
DRESS2月特集「ねぇ、結婚したら苗字変えなきゃだめ?」。DRESS会員のみなさまから届いた声を紹介します。
2月特集テーマは、「ねぇ、結婚したら苗字変えなきゃだめ?」。
・結婚したら女性が苗字を変える
・女性が仕事をやめて、男性の転勤についていく
・男性は“大黒柱”として一家を支える
このような「結婚(法律婚)にまつわる性役割」に焦点を当て、「女/男だから結婚したらこうしなければいけない」という慣習にとらわれないあり方を考える特集です。
今回の特集では、自分たちにとってベストな形を模索してきた5組の夫婦の話を紹介してきました。
ただ、彼・彼女たちのあり方や考え方が他の誰かにとっても”正解”とは限りません。ご紹介した5組もこの先、今回のお話を通じて見えてきた形とはまったく別の形に変化していくかもしれません。
答えがないからこそ、それぞれのやり方で、自分たちにとって一番いい形を模索する。その過程を、記事を通して感じていただけたらうれしいです。
■「結婚と性役割」、私はこう思います
今回の特集に合わせ、「結婚と性役割」をテーマにDRESS会員さんへアンケートを実施しました。届いた声を一部ご紹介します。
Q.「結婚したら女性が苗字を変える」という慣習について、どのように感じますか。
仕事に関わる発表など、姓が変わることで損なことばかりなので、職場や学会等は旧姓で通したいと思っていても、外部の圧力がわずらわしく、ある機会に結婚した姓で活動し始めました。今は結婚した姓が浸透しましたが、離婚したらペンネーム的に使うしかないのか考えます。仕事を続けていくには、姓の変更は足枷にしかならないと強く思います」
しかし、実際に苗字が変わると、印鑑を換えなくてはいけないし、印鑑を登録している銀行やクレジットカードの登録変更もしなくてはいけません。その手続きをする過程で、自分が結婚したことを実感させられましたが、苗字が変わらない相手の意識は、独身の頃とあまり変わってないようで、違和感もありました。
職場や病院などで呼ばれる名前が変わると、結婚した自分を誇らしく感じたりもしました。しかし、それまでの自分が消えたような寂しさも感じました。今更ながら、名前がアイデンティティーだったことを実感した次第です。相手の名前を名乗ることに不満などはありませんでしたが、離婚して旧姓に戻ったとき、自分を取り戻せたような、爽快な気分になったのを覚えています。
先日、姓名判断が出来る人が診てくださって『最高の名前』と言われました。それ以来、再婚したいと思ってた熱が取れた気がしました。愛し愛される相手は欲しいですが、結婚という形に拘らなくてもいいかなぁ?と。
結婚することは、それまで守ってもらっていた両親から、“夫”の庇護下に入ることを意味し、その代償として苗字を変えることに同意していたのかもしれません。しかし元々の名前を保証されると、自信のようなものができて、もう誰かに守ってもらわなくてもやっていけそうな気がしています」
Q.「結婚にまつわる性役割」について疑問・不満を感じていることや、気になっていることはありますか。
私も結婚していたときは、全部1人でやって来たし、手伝いを頼もうとも思っていませんでした。だけど、それは間違いだったと今は思っています。ハードワークであってもなくても、仕事だけして人生は回りません。
それに、サラリーマンは必ず定年が来ます。結婚してても、奥さんが先に亡くなるかもしれません。その時に、自分の身の回りの事も出来ないようでは、かわいそうです。女性の立場からだけではなく、男性も自分の人生を受け止め楽しむために、仕事以外の雑務?を取り上げてはいけないと思うようになりました。
育児も、女性だけが楽しんだらもったいないし、かわいそうです。仕事以外の雑務と思えるようなことが、人生を豊かにしている面もあります。自分自身を大切にする意味でも、家の中のことを男性から取り上げないようにしないといけないのではないでしょうか?
子供や家の雑務と向き合ってる男性の知人たちは、仕事とは違う楽しみややりがいを見つけ、人生を豊かにしているように見受けられます」
以前にも、結婚願望がそもそもあるのかどうかわからないような人に手当たり次第にお見合い話をつけてきたことがありました。私はそれを知らずにお見合いしそうになり、生恥をさらしたことが多々あったのですが、親はまだ理解していないようなので悩んでいます」
これでは女性ばかりがリスクを負ってしまい、キャリアを取るか出産を取るか人生を大きく揺さぶる。今の日本は少子化になって当然だと思います。
そして、仕事を取ったとしても女性には妊娠適齢期があり高齢となると命の危機もある。お産は命がけ。さらに、ある時、妊娠できない体になり、仕事を選んだことを後悔することもある。しかし、男性はいくつになっても妊娠可能な年齢の女性と結婚して、子どもを持つことができる。男性は孫くらい歳の離れた女性と結婚してもヒーローだが、その反対だと女性は物笑いの種となる。どこまで男女不平等なのか……。
日本人男性は高齢なほど、若い女性を好み、自分は初老であれ、30歳をこえると“三十路女”と囁かれおばさん扱い。なんともおかしい日本社会。
年齢で女性の価値を決める男性は本当に腹立たしいです。お見合いだと40代以上であれ、20代から選び、自分を棚に上げて同年代を価値のないものと判断する。女性は子どもを産む道具ではないのに。
結婚したらしたで、妊娠しない理由を女性のせいにするのは如何なものでしょうか。男性が不妊だというケースもかなり多いと聞いています。妊娠できる体であっても、周りはそれを女性のせいにして『不妊症ではないか』と噂し、お姑さんから責められるのもどうかと思います。不妊治療をして体に負担がかかり、ボロボロになって苦しむのも女性。
日本社会(特に高齢の男性)は、もっと女性をリスペクトすべきだと思います。男性の方が偉いと思っている方があまりにも多いです。
男性が主夫、女性が好きな事を仕事にする。性別に関係なく得意なことを得意な方がする、そんなパートナーシップがあっても良いと思います」
■それぞれの理想のパートナーシップを実現できる世の中へ
アンケート結果やSNSで挙がる意見を見ていると、まだまだ「結婚したら女性は/男性は〜すべき」という論調は根強いものだと感じさせられます。自分ではそれを変えたいと思っていても、パートナー、親戚、知人・友人など、周りから圧力をかけられるというケースももちろんあるでしょう。
今回の特集でインタビューした方々からも、「(自分が)性役割にとらわれている自覚がある」という言葉はよく聞かれました。
「性役割の固定観念にとらわれている」こと自体は、きっと当たり前で自然なこと。ただ、「とらわれていると認めた上でどう向き合っていくのか」を自分自身で、または周りと一緒に考えていくことが、世の中を変える一歩になるはずです。
「女/男だからこうしなきゃ……」という固定観念にとらわれて本当に目指したい形を諦めるのではなく、お互いが心から納得できる関係を目指せる社会になればいい。
DRESSはこれからも、望まない理想を押し付けられて苦しむ人の声、外からの力で抑圧されてきた声をすくい上げ、生きづらさを感じる人の道標となるようなメディアを目指していきたいと思います。最後に、インタビューにご協力いただいたみなさま、記事をご覧になり感想を届けてくれたみなさま、本当にありがとうございました。
※アンケートでいただいた感想は、一部表記などを調整の上掲載させていただきました。
Photo/阿部萌子(@moeko145)
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。