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妻は専業主婦、夫は会社員。大切なのは“今っぽい選択”だけじゃない

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「夫が働き、妻が家事育児」が日本のスタンダードであった時代は変わりつつあり、共働き家庭はめずらしい存在ではなくなりました。一方で、自らの適性や意思から「夫は仕事、妻は家庭」を選ぶ人ももちろん存在します。妊娠を機に退職し、専業主婦&会社員のスタイルを選んだ三輪さん夫婦にお話を聞きました。

妻は専業主婦、夫は会社員。大切なのは“今っぽい選択”だけじゃない

結婚したら、夫は大黒柱として一家を養う。
妻は寿退社、または妊娠を機に退社をし、専業主婦として家族を支える。

一昔前まで、日本で“ベーシック”とされてきた夫婦・家族像。しかし、1997年以降、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回っています(※)。

DRESS編集部が目指したいのは、その人が希望する選択肢をなんの罪悪感や後ろめたさもなく選べる社会。そして、他人の価値観を押し付けられることがない社会です。

「そういう時代だから」で思考停止せず、家事や育児に重きを置きたい女性は専業主婦を選び、バリバリ稼ぎたい男性は仕事に集中する選択ができればいい。大事なのは「どちらが優れているか」を比べたり、周りがふたりの選択を否定したりしないこと。

今回ご紹介する夫婦は、妊娠を機に新卒から働き続けた大手商社を辞め、専業主婦&会社員というスタイルを選んだ三輪亜沙美さん、明毅(あきたけ)さん。「専業主婦はリスク」という言葉に思うことや、仕事を辞めたあとの夫婦間の歩み寄りの過程について伺いました。

■「仕方なく専業主婦になった」わけじゃない

──亜沙美さんが専業主婦になったのは、妊娠出産がきっかけですか。

亜沙美:はい。新卒で入社して7年勤めた会社を、出産3カ月前に退社しました。退職は2018年1月なので、専業主婦歴は2年ほどです。

──会社の産休・育休制度は充実していたのでしょうか。

亜沙美:きちんと整えられていましたね。だからこそ、産休に入るのか退職するのか、迷いがありました。「辞めるのはもったいないかもしれない」という気持ちもあって。

──妊娠前は「専業主婦になりたい」「仕事を続けたい」、どちらに近かったのでしょうか。

亜沙美:どちらかというと共働きをイメージしていましたが、揺れていましたね。仕事に面白みを見出している時期には「やっぱり仕事を続けたい」と思ったり、本格的に子どもを授かりたいと思い始めたあとは「仕事のストレスが原因でなかなか授からないのかもしれない……」と辞めたい気持ちに傾いたり。

最終的には、「子どもと過ごせる時期は限られているのだから、成長をそばで見たい」と退社することに決めました。世帯収入は少なくなるけれど、私にとって子どもと過ごせる時間は、お金や他の何かと天秤にかけられるものではないかなと思って。母が専業主婦だったことも関係しているのかもしれません。

──明毅さんの希望はいかがでしたか。

明毅:どちらでも、彼女が選びたいほうでいいと思っていました。彼女の人生を僕が一方的に決めつける権利はないですし。

亜沙美:「こうしてほしい」と言われることがなかったんです。私が「絶対こっち」と思っていなかったのと同じような気持ちだったのかな。だから、なかなか決めきれなかった。

──決め手は「子どもとの時間を過ごしたい」だったのでしょうか。

亜沙美:大前提としてはそうです。ただ、現実的な理由として、共働きだと日常生活がままならなくなりそうだなと思いました。明毅くんの仕事はハードで、妊娠前も家事の大半は私が担っていたんです。

明毅:僕が働いている業界の雰囲気から、自分が仕事を減らして家事育児を多めに担うのは厳しいだろうなとは感じていて、彼女にもそう伝えていました。

亜沙美:復帰後に被るかもしれないリスクを負ってまで何とかしてほしいとは私も思っていませんでした。ただ、この現状で共働きをしながら子育て・家事をやっていくのは厳しいなと思ったんですよね。

──夫側の仕事の事情で仕方なく仕事を辞めて専業主婦にならざるを得ないことに、もやもやを抱く妻もいると思います。亜沙美さんはいかがでしたか。

亜沙美:結婚する前から彼の仕事の忙しさは知っていましたし、専業主婦になるというのは私が自分で選んだ、選べたことだと思っています。一馬力で生活することになるので、東京を出て家賃の安い郊外に引っ越すことを決めたんですが、住む場所は私の実家に近いエリアを選びました。ひとりでの子育てが辛くなるのは想像できたので、実家のサポートを受けられるようにと思って。

引っ越しに伴って明毅くんは通勤時間が長くなりましたし、私ひとりだけが変化に対応しなきゃいけなかった……といった不満はないですね。

■「一生専業主婦でいる」しか頭にない状態にはならないように

──夫が外で働き、妻が専業主婦のスタイルになってからの生活はいかがですか。

亜沙美:今は、平日の家事育児を私が担っています。週末には、明毅くんが子どもと割とよく遊んでくれているかな。

明毅:週末は交互に朝ゆっくり寝る時間を取ったり、自分の時間を作ったりするようにしています。

亜沙美:ただ、最初のうちは結構大変でしたね。仕事って、休む日がはっきり決まっているじゃないですか。でも、専業主婦の仕事って、どこまでやればいいのかわからないんですよね。何となく、家事は私の仕事だから土日もやらなきゃ……って思っちゃって。で、「私の休みは?」っていう気持ちから、イライラしちゃって当たっちゃうとか。

──専業主婦になる前はどうだったのでしょうか。

明毅:家事に関しては完全に妻のほうが得意なので、彼女が司令塔で、僕は言われた通りに動く……という感じでしたね。

亜沙美:以前は、家事を頼むことに抵抗感がありませんでした。仕事をしているときは、家事の手を抜くことに罪悪感がなかったんですよ。でも、いざ専業主婦になってみると、家事が私の仕事だから、手を抜く=仕事ができていないと思ってしまう。土日くらいは明毅くんを休ませてあげたいという思いと、「これくらいやってよ」という苛立ちとがありましたね。一時期、結構揉めたんです。

──「これくらい」、例えばどのようなことでしょうか。

亜沙美:自分が出したゴミを放置せず都度捨ててほしいとか、本当に些細なことなんです。細かいことを私がいちいち言うので、彼もイライラしてしまって、大喧嘩……みたいな。当時、私は引っ越しの手続きや家事育児で手一杯で、明毅くんも仕事がハードだったので、お互いに余裕がなかったなと思います。

明毅:彼女の環境の変化を、僕が理解していなかったところがあったと思います。たとえばゴミの話だと、「これまでは放置したままでも許されていたのに、なんで?」って僕も思ってしまったり。

亜沙美:専業主婦になってから、家が散らかっている状態を見る頻度が増えてイライラするようになっちゃって。

明毅:前は互いにフルタイムで仕事をしていて、子どももいなくて……という環境だったので、同じ立場で物事を考えられた。今は、彼女が許容できなくなったことは伝えてもらって僕が変わるようにし、それは細かすぎるのでは? と思ったことは伝えて歩み寄っているところです。

──すり合わせているところなのですね。インターネット上などで「専業主婦と会社員、どちらが大変か」という議論が見られることがありますが、正直なところ、おふたりはどう考えているのでしょうか。

亜沙美:「専業主婦は楽」と言われると、「そんなことないよ」とは思いますが、共働きで大変な思いをしている人もたくさんいるし……。それぞれの受け止め方なので、具体性がない議論だなと感じます。

明毅:そもそも、「楽」や「暇」が何でダメなことだとされているのか不思議です。楽できるなら楽なほうがいいし、暇なら暇でいいじゃんと思うんですが……。

亜沙美:ただ、専業主婦の仕事が理解されにくいこともわかるので、私は「大変だ」と感じたら自ら主張するようにしています。

──明毅さんは、大黒柱としてのプレッシャーを感じるといった大変さはありますか?

明毅:共働きだろうと一馬力だろうと、働く内容に変わりはないので、今のところそこまでの気負いはないかな。もちろんお金の使い方は考えないといけないけれど、家族が食べていける程度の収入はあるだろうと思っていましたし。

亜沙美:共働き時代から互いの収入は把握していて、専業主婦になるにあたり、家計の見直しも行いました。固定費を下げるために引っ越しもしましたしね。

──「専業主婦は経済力がなくリスク」と捉える風潮もありますが、亜沙美さんはどう感じていらっしゃいますか。

亜沙美:多様化と言われている割に、専業主婦はマイノリティで、風当たりが強くなってきているなあとは感じます。経済的な面でも、専業主婦の控除額が減らされるニュースを見聞きしますし、だんだん肩身が狭くなっていくのかなあと。

周囲には「働いている女性の方が偉い、すごい」マインドの人はいないんですが、ネット記事なんかではそうした論調のものを見かけますし、悲しくなることはあります。今後育児が少し落ち着いたら、家の外で何かやりたいな、見つけたいなとも思っています。

今は専業主婦を選んでいますが、一生専業主婦でいることしか頭にない状態にはならないようにしたいんです。明毅くんが何らかの事情で働けなくなったときには、私が働く番ですし。

■親世代からは「夫(息子)を立てて」という思いを感じることも

──「男は仕事・女は家事育児」というステレオタイプに、自身が縛られているなと感じることはありますか?

亜沙美:私の場合は料理ですかね……。もともと、特別料理が好きなわけではないんですよ。でも、実家では母しか料理を作っていなかったので、「女がやるもの」と刷り込まれている節があります。ただ、今は作ったものを「美味しい」と言ってもらえたり、いい調理器具に出会うとうれしさを感じられるようになったりして、料理への意識が変わったかな。

──明毅さんはいかがでしょうか。「働かなければ」「男の方が稼がなければ」といった思いはありますか。

明毅:働かないと生活できないので働きますが、働かなくていいなら働かないです(笑)。周りには「妻よりも高収入でいたい」と思っている男性も割といますが、僕は妻の給料が高いのは、むしろラッキーなことだと思うほうですね。

亜沙美:内助の功を理想とする男性は、やっぱり多いのかな。でも、今までのように妻に専業主婦でいてほしいとは限らないのかもしれません。友人の夫には、「男女平等だから働いてね、だけど夫の自分を立ててほしい」っていう人もいます。

──今の価値観と従来の価値観が混ざって、ちぐはぐになっている印象ですね。

亜沙美:ただ、明毅くんのご両親からは、息子を立ててほしい思いを感じることがありますね。義姉が食べものを取り分けているときに「いいお嫁さんもらったなあ」とうれしそうにしていたのが印象的で、「ああ、やっぱりそうした思いがあるんだな」と。

年代が違うので、「専業主婦は家のことを何でもやって当たり前」「子どものこと含め、家のことで旦那さんを煩わせてはいけない」という価値観は、ある程度仕方ないのかなと割り切って接しています。

明毅:そういうのは、会社の偉い人が言う「俺の若いときはさ~」と一緒ですよね。

──うまく折り合いをつけていらっしゃるんですね。実のご両親はいかがですか。

亜沙美:実母には「明毅くんは疲れているんだから、土日くらい寝かせてあげなさいよ」って言われますね。実母が尽くす系妻だからでもあるのでしょうが、これも世代かなと思っています。私は「いや、私も休みたいよ!」って思いますし、明毅くんにもそう伝えています。

■夫婦が決めたスタイルに、周りが口を出すべきじゃない

──今の生活は、おふたりにとっていかがでしょうか。

亜沙美:すっごい紆余曲折して、悩んでぶつかって、やっと何となく思い描いていた姿に近づいてきた……って感じですね。子どもが生まれたばかりの頃は慣れない育児が結構つらくて、正直「仕事をやめちゃったの、失敗だったかもしれない」と頭をよぎったこともありました。

明毅:僕も、「保育園を探して共働きに戻ったほうがいいのかも?」と感じたこともあります。

亜沙美:でも、今は家事も育児も楽しめるようになって余裕も出てきたし、やっぱり子どもの成長を近くで見られる環境を選んでよかったと思っています。

──紆余曲折を経て自分たちに合うあり方を探っていくのは、スタイルに関わらず多くの夫婦が経験するプロセスなのかもしれないですね。

亜沙美:あとは、当たり前ですけど、お互いに「主婦なんだから」「働いてるんだから」と言わないのは大事だなと思います。「専業主婦なんだからご飯作れよ」とか、ないよね。「無理はしなくていいよ」って言ってもらえています。

明毅:僕は主夫に向いていない自覚があるので、彼女が家の多くのことをやってくれるのはありがたいしうれしいんです。「男だから・女だから」というよりは、たまたま我が家の実態と性別による役割分担が調和されて上手くいったケースなんだと思います。

──自分たちの向き不向きを考慮しつつ、それぞれの役割を考えていくということですね。今のスタイルでうまくいっている要因、ほかに思い当たるものはありますか?

亜沙美:たとえば、お金に対する考え方かな。我が家は共働き時代から互いの収入を把握していたからこそ、お互いのお金はすべて「三輪家のお金」という認識なんです。それもあって、収入マウントも起こらないのかな、と。

──家庭内で「より稼いでいるほうが偉い」という価値観を作らないのは大切ですね。

亜沙美:友だちからたまに聞くのは、財布を別々にしていて、どっちがどれだけ出すのかで揉めるケース。これは、結局「自分の財布は自分の財産」って意識が強い表れなのかなと思うんです。

明毅:自分と相手のものを分けて考える裏には、将来的に別れる可能性もいくばくかは想定しているのかな。

亜沙美:かもしれないし、単に「その方が平等だよね」って感じる人もいるのかも。でもそう考えると、専業主婦っていう選択は「ずっと一緒にいる」が前提になるんですよね。その覚悟が、共働き夫婦よりは必要になるのかなと感じています。

どちらのスタイルの方が素敵だとか優れているというわけではなく、どんな形が自分たちのあり方に合うのかが大切なんじゃないかな。そして、その夫婦が決めたスタイルは、周りが口を出すべきものではないと私は思います。

(※) 男女共同参画白書(概要版) 平成30年版より


そもそも“結婚と性役割”の固定観念は、どのように形作られてきたのでしょうか。家族社会学の専門家・永田夏来先生にインタビューしたこちらの記事も、ぜひ併せてご覧ください。

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卯岡 若菜

フリーライター/インタビュー、対談記事、イベントレポートを手掛ける。2児の母。少女時代に憧れた女性は「若草物語」のジョー。

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