1. DRESS [ドレス]トップ
  2. 恋愛/結婚/離婚
  3. 「互いに絶対的な味方であり続けたい」 山梨と東京、別居婚夫婦のリアル

「互いに絶対的な味方であり続けたい」 山梨と東京、別居婚夫婦のリアル

Share

遠距離恋愛からの結婚。どちらか(多くの場合は女性)が相手の住む場所に引っ越すことを選ぶケースが多いなか、別居婚を選んだ奈良さん夫婦。第一子の出産を控えたおふたりに、別居婚を選んだ経緯やメリット、今後の暮らし方について聞きました。

「互いに絶対的な味方であり続けたい」 山梨と東京、別居婚夫婦のリアル

遠距離恋愛から結婚が決まったら、妻が夫の元に移り住む。

夫が転勤することになったら、妻は一緒についていく。

一見“よくある話”だけれど、女性ばかりが住む場所の変化を強いられるのはどうしてなんだろう?

その前提を見つめ直し、山梨と東京の遠距離恋愛からそのまま別居婚(週末婚)を選んだ奈良美緒さん・大輔さんご夫婦。2020年2月に第一子の出産を控えた(※)ふたりにお話を聞きました。

■2017年に結婚、別居婚生活は3年

──結婚したら共に暮らす夫婦がまだまだ多数派のなか、「週末婚」スタイルの奈良さん夫婦。どのような生活スタイルなのでしょうか。

美緒:平日は私が山梨県都留市で、彼は東京都品川区で……と離れて暮らしています。それぞれ山梨、東京で仕事をしているので、一緒に過ごすのは休日だけです。

──結婚してから、ずっとこのスタイルなのでしょうか。

美緒:そうですね。もともと遠距離恋愛で、その形が結婚後の今も続いているんです。2017年にこの生活を始めて、3年が経ちました。

私も以前は東京の会社員だったんですけど、仕事に疲れてしまって。実家のある山梨にUターンをして、働き始めたんです。夫と付き合い始めたのはその後で。

大輔:美緒ちゃんとは今から10年くらい前、彼女が大学生、僕が社会人2年目の頃にコーチングスクールで知り合いました。知り合いだった期間は長いんですが、交際を始めたのは彼女が山梨に帰ったあと、2016年に再会してからです。それからとんとん拍子で結婚に至りました。

■「20代の頃は、男は大黒柱であらねばと思っていた」

──周りを見ると、遠距離恋愛から結婚した多くの夫婦が、女性が男性の住む場所に移り住むという選択をしているように思います。おふたりにも、そういう選択肢はあったのでしょうか。

大輔:東京に来てもらう選択肢も頭にはありましたし、ふたりで検討もしましたね。ただ、美緒ちゃんの「山梨での仕事を続けたい」意思が強かったので、「じゃあ、平日はそれぞれの場所で暮らそうか」と。

美緒:山梨での仕事が軌道に乗り始めたタイミングだったので、「今、東京に戻るのはもったいないな。ここでの仕事を続けたいな」と思ったんです。東京での仕事に疲れてUターンしてきたという経緯もありましたし。あとは、彼の仕事に対する考え方が大きいですね。

大輔:僕は、どうやら労働にあまり向いていないようで……。働いて大黒柱になりたいとか、稼いで家族を支えたいとか、そういう意識がほかの男性よりも希薄なのだと思います。

とはいえ、20代の頃は「男は一家の大黒柱になる」「稼げなきゃいけない」「労働しなければならない」といった思い込みがありました。新卒でITのベンチャーに入社したのですが、当時は「仕事で世の中にインパクトを起こしたい」という夢もありましたし。

美緒:あったんだ(笑)。

大輔:でも、途中で「自分に労働は向いてない」って気づいたんですよね。評価はずっと最低で、成長を迫られるのも辛かった。さらに美緒ちゃんと付き合い始めてからは、彼女が仕事で世の中に与えるインパクトのほうが、自分が生み出すものよりもずっと大きいだろうという確信が生まれました。僕ができるのは、仕事が好きで仕事に向いているパートナーの応援をしたり、お金のことを勉強をして、パートナーがどうすれば仕事の成果を最大化できるか突き詰めることなんじゃないかと。

──なるほど。ご自身が「仕事に向いてない」というのは、すんなり認められたのでしょうか。

大輔:20代前半は「男性は働いて稼ぐべき」と思っていたので、向いてないとわかって絶望した時期はありましたよ。「この先ずっと働き続けなきゃいけないのに、お先真っ暗じゃん……」って。でも、“向いていないこと”がはっきりわかったので、自分が持っていた思い込みを外す努力をしました。

たとえば周りの本音を聞くと、「妻のほうが年収が高い」ことを嫌がる男性は多いと感じます。男性の気質として、そういう特性はあるのかもしれないし、僕の中にもそれはきっとある。でも僕はそれよりも「自分が稼がなきゃ」に縛られたくない気持ちが強かった。人の応援をするほうが得意だし、そのほうが自分の人生戦略的に生きやすいはずだと頭で考えながら、「人の仕事をサポートする資質がある」という自分のスキルを客観視するようにしてきました。

その結果、「自分よりも仕事ができる人、稼げる人」と結婚したいと思うようになりました。そして、美緒ちゃんはそういうタイプだなと思った。

──ちなみに、専業主夫として大輔さんが山梨に住むという選択肢はなかったのでしょうか。

大輔:いや、主夫にはなれないんですよね……家事能力が低いので、主夫には向いていないんです。

美緒:こう言っているので、最初は「ただ働きたくないから結婚したいのかな?」っていう思いもありました(笑)。でも、お金の運用方法を勉強したり、自分のやりたいことのために行動したりしている姿を見て、「稼ぐ能力に秀でていない男性とも幸せになれるんだな」と今は思っています。

──ということは、美緒さんも以前は「仕事をバリバリ頑張って稼いでいる男性と結婚したい」と思っていた?

美緒:東京で会社員をしていた頃は、「稼いでいる人と結婚すべき」「女は30歳までに結婚しなきゃ」とか、ありましたね。女同士で話していると、ついそんな話になっちゃって。

結婚前にお付き合いした人はみんな私より年上で、仕事を頑張っている優秀な人でした。振り返ると、「仕事ができる彼に追いつきたい」「支えたい」と、自分の立ち位置を相手基準で決めているところがありました。そんな「追う恋愛」ばかりで、たくさん失敗して、懲りちゃったんです。次はそのままの私を本当に好きになってくれるような人と付き合いたい、結婚したいと思っていた頃に彼(大輔さん)が登場して。

──いいタイミング!

美緒:友人や知人から、別居婚についての相談を受けることももちろんありますけど、一番多い質問は「どうしたらこういう(大輔さんのような)タイプの人と出会えるの?」なんです(笑)。

■「子育ては夫婦だけでするもの、とは思っていない」

──3年間、週末婚をしてみていかがですか? 率直に、「寂しくないのかな?」と思ってしまうのですが……。

美緒:それ、一番聞かれますね。以前テレビの取材を受けたときも、ディレクターさんがなんとか私から「寂しい」という言葉を引き出したかったようで、「寂しくないですか?」と何回も聞かれました。今「寂しい」と感じることは、ほぼないですね。

──大輔さんはどうですか? 美緒さんが、以前「体験や感情は共有したい」という大輔さんの言葉をTwitterで紹介していましたが、共有するなら一緒に暮らしていたほうがいいのでは? と感じるのですが。

大輔:僕は逆に、一緒にいる時間が長ければ長いほど、体験や感情の共有濃度が薄まってしまう気がするんです。ときどき会うからこそ、一緒にいる時間がより濃いものになるというか。ひとりで過ごすことでリフレッシュできるタイプなので、一緒にいすぎないほうがむしろ心地いい。

美緒:先ほど話したテレビ局のディレクターさんに、「でも、一緒にいるほうが寂しいときもありません?」と言ったら、あまりピンと来ていないようだったので、自分や相手のタイプによるとは思います。「結婚したらずっと一緒にいたい」という人ももちろんいると思いますし。

現状では、私たちにとっては別々に暮らすメリットのほうが大きいと感じています。喧嘩もしませんしね。一緒にいる時間が限られているから、喧嘩にエネルギーを割くのがもったいない。

──一番気になるのは、ご出産後のことです。美緒さんは2020年2月に出産を控えている(※)んですよね。

美緒:産後は、彼が1年の育休をとって山梨に住む予定です。それ以外は何も決まっていなくて。
正直、一緒に住むのはちょっと不安かな(笑)。というのも、今は一緒に過ごすのが週末だけだからこそ、生活習慣や価値観の違いがあっても互いに目をつぶれるし、笑いに変えられている部分もある気がするんですよ。

以前夫婦で取材を受けたテレビ番組が放映されたあと、見た人が「うまくいってるのは今だけ。子どもが生まれたら絶対に失敗する」とツイートしているのも見ました。まあ、見知らぬ人の言葉なのでどこ吹く風でしたけれど……。

大輔:1年一緒に子育てをしてみてどうなるか、自分がどう感じるかは正直わからないので、その時々でどうするかを考えていくしかないと思っています。育休が終わったら東京に戻る予定ですが、そのときにどうなっても生活していけるように準備や勉強はしておきたいなと思っています。

──また別居(週末婚)に戻る場合、育児はどちらかがひとりでするということですか?

大輔:平日は山梨で美緒ちゃんが、土日は僕も一緒に、かな?

美緒:ただ、私は「子育ては母親がするもの」とも「夫婦だけでするもの」とも思っていなくて。実母の力を借りることもあると思いますし、今一緒に働いている人たちも私以上に誕生を楽しみにしてくれていますし、周囲の人に恵まれているのはありがたいです。私自身も周りの大人たちに可愛がられて育ったので、いろんな人の力を借りながら子育てをしていきたいんです。

──お子さんが「お父さんとお母さんと3人で暮らしたい」と言ったら……。

美緒:そのときはそのときですよね。「お父さん、遊んでばっかりいないでちゃんと働いて」とか言うかもしれないし(笑)。

──「こうあらねば」から解放され、今後についても「こうしていこう」とはっきり決めていないところが、変化の余地があって良いですね。

大輔:たいがいの夫婦は片方が少しネガティブなしっかり者なのかなと思うんですが、我が家は能天気&能天気な組み合わせなんですよ。自分たちの代わりに親が心配してくれているくらいで。

美緒:私たちは、結婚前に「互いに絶対的な味方であり続ける」という約束を交わしていて、それをお互いに実感できているから、別居だろうと先のことが決まってなかろうとちゃんと安心感を持てているんだと思います。

大輔:「週末婚をしたかった」わけじゃなくて、今の自分たちにとって一番いい形を選んだら、それが週末婚だっただけなんです。形にはまったくこだわっていません。

美緒:これからも、そのときの私たちにとって最良の選択をしていきたいと思っています。

※美緒さんはこのインタビュー後、2020年2月13日に出産されました。


そもそも「結婚したら女性が男性を支える」「男性が働いて稼ぐべき」という役割の固定観念は、どのように形作られてきたのでしょうか。家族社会学の専門家・永田夏来先生にインタビューしたこちらの記事も、ぜひ併せてご覧ください。

妻が夫の姓を名乗るのはなぜ? 「結婚で変わるべきは女性」はもうやめよう



Share

卯岡 若菜

フリーライター/インタビュー、対談記事、イベントレポートを手掛ける。2児の母。少女時代に憧れた女性は「若草物語」のジョー。

関連記事

Latest Article