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「姓を変えるのは事務手続きが得意なほう」最強の幸せビジョンのための、合理的な結婚生活

初婚同士の場合、妻の姓を採用する夫婦は3%以下(平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」より)。そんな中、「事務手続きが得意なほうが姓を変えればいい」と妻側の姓を採用した漫画家・横嶋じゃのめさん、三田さん夫婦。おふたりに「“我慢しない”結婚生活」の心がけを聞きました。

「姓を変えるのは事務手続きが得意なほう」最強の幸せビジョンのための、合理的な結婚生活

平成28年度人口動態統計特殊報告の「婚姻に関する統計」によると、夫婦とも初婚の場合、妻の姓を採用した夫婦はわずか2.9%。この数字からもわかるように、今の日本では妻が夫の姓を名乗るのが、まだまだスタンダードな状況といえます。

今回は、2年前に入籍し、その際に妻側の姓を採用した、漫画家の横嶋じゃのめさん(代表作:「合理的な婚活 ~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~」)と、その夫の三田さん(旧姓)にお話をお聞きしました。

マッチングアプリで出会って成婚したおふたり。「子どもはいらない」「経済的にお互い自立していたい」「別居希望」を結婚の条件としていた横嶋じゃのめさん。一方で三田さんの希望は「自立している女性」。

しかし、お互いの条件がピッタリとハマったとしても、実際に結婚生活を送るとさまざまな問題点が生じてくることは当然のこと。しかも、「妻側の姓を採用する」は条件外でした。なぜ夫婦は「妻側の姓を採用する」という選択を取ったのでしょうか。

『合理的な婚活~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~』より ©横嶋じゃのめ/ホーム社

■「95%以上の夫が自分の苗字を選択するのが、逆に不思議」

『合理的な婚活 成婚編〜子なし別居婚をめざすおたくの婚活実録漫画〜』より ©横嶋じゃのめ/ホーム社

――横嶋さんご夫婦が妻側の氏を採用したのは、どうしてなのでしょう。

横嶋じゃのめさん(以下、横嶋):そもそも私は、あまり法律婚に意味を感じていませんでした。法的なことに無知だったり、制度に興味がなかったりで、「別に籍は入れなくてもよくない?」くらいの感じだったんです。けど、制度とかをちゃんと認識している三田さんから、「入れたほうがいいです」っていう提案があって。

三田さん(以下、三田):「結婚」は法的な地位を形成する制度だという認識を強く持っているので、私はあえて事実婚を選ぶ必要性を感じられなかったんです。

横嶋:「では……」っていう感じで入籍することになったんですが、私は名義変更などの細かい手続きが苦手なので、「じゃあ得意なほうがやりましょう」ということで三田さんが姓を変えることになりました。それ以上の議論はあまりしてないですね。

『合理的な婚活 成婚編〜子なし別居婚をめざすおたくの婚活実録漫画〜』より ©横嶋じゃのめ/ホーム社

三田:夫婦別姓にできたらベストですけど、今の制度ではどちらかを選ばないといけない決まりなので。私はファミリーネームにこだわりがないし、物心ついたときから「苗字を変えてみたい」と思ってました。苗字を変えるタイミングって結婚しかないですから。

横嶋:それは初耳!

――なぜ苗字を変えようと考えていたんですか? ご自身の苗字が嫌いだったとか。

三田:嫌いとか好きとかじゃなくて、こだわりがなくて。それに男性で変えているのはレアなので、「変えたことないの?」っていう話ができるわけじゃないですか。95%以上の夫が、自分の苗字を選択するわけですよね。逆に、不思議です。そんな感じでいいんですかね。

横嶋:もし私が苗字を変えてたら、私が三田家の人になった感がすごくあっただろうなって思います。“嫁に行った感”というか。想像すると、結構嫌です。

三田:手続きや心理的なものも含めて「嫌じゃない方」が変えればいいっていう、それだけの話です。

――実際に妻の姓に変わってみて、どうですか?

三田:私、自認してるのは三田ですけど、病院とかで呼ばれるのは横嶋なんです。それは違和感がありますね。でもそれって結婚すると、どちらかが絶対に経験することなので、男性がゆえに姓が変わったことに対して特別な実感があるかといったら、たぶんないです。

――姓を変えたことによる煩わしさはなかったですか?

三田:名義の変更手続きに関しては、そういうものだという認識を持ってやっているので、面倒くさいという気持ちはないですね。気が向いたときにやればいいので。銀行の口座の名義を変えたのもつい先週だし、パスポートはまだ変えてないです。

ただ、表札があるマンションだと、郵便物が届かなかったりするんですよね。「苗字が違いますよ」って言われることがけっこうあって。それって、男性が結婚で苗字が変わることに対する想像力がないんじゃないかなと思います。

横嶋:私は自分に降りかかってきてないので他人事ですけど、細かい手続きが本当に苦手なので面倒に感じただろうなと思いますね。

――三田さんのご両親は、どんな反応でした?

横嶋:ちょっと嫌そうだったよね?

三田:そうだったのかな。でも嫌かどうかって親が決めることじゃないから、関係ないです。

――会社の同僚の方たちとかはどうでしたか。

三田:みんな辞令で私の新しい名前を見て、知らない名前だから「新しい人が来るぞ」ってざわついてました。「それ、私です」って説明しましたね。

――割とすっと受け入れられた感じですか。

三田:特にあれこれ聞かれたりはしていないです。ただ、職場では公式な発表以外は旧姓で通してます。みんな混乱して「誰だよ」ってなるので。

横嶋:私は結婚するって言ったら、「(新しい苗字は)誰さんになるの?」ってめっちゃ言われました。女性はまぁ、聞かれますよね……。

■無理と我慢は絶対にしない

横嶋:私はそもそも、「別居婚希望」とか「子どもはいらない」とかいろいろ譲れない条件を掲げて婚活をしていましたが、その話をしたときに、周囲から「結婚は修行だから」って言われたこともあって。

――「結婚に必要なのは我慢、忍耐」と主張する人、いますよね。それこそ「人生の墓場」とか。

横嶋:それって結婚そのものを、馬鹿にしてると思います。結婚したときに、夫から「無理と我慢はしないってことを約束して」って言われたんですけど、それはすごく納得感があります。修行っていう話と真逆だと思うんですけど。だから「苗字を変えたくない」という話もすんなり進んだんだと思います。

『合理的な婚活 成婚編〜子なし別居婚をめざすおたくの婚活実録漫画〜』より ©横嶋じゃのめ/ホーム社

――もともと横嶋さんは別居の通い婚希望だったのが、今は一緒に暮らしてるということですが、どうして考えが変わったのでしょうか。

横嶋:もともとは、母とわたしが暮している同じマンション内に、夫が別の部屋を借りたんです。それで行き来していたんですが、夫との生活がストレスなくいけたので。

私が別居を希望していたのは、自分が人と24時間一緒にいると相手のことを2000%嫌いになるタイプだという自覚があるからで。あと、料理や掃除など家のことが得意じゃないので、「靴下が落ちてる」とか小言を言われたら、もう2秒で嫌いになるんです。そんなことで嫌いになるくらいなら別居でもいいかなっていう提案だったので、そうじゃないなら一緒に暮してもいいかなって。たまたま合ったからよかったけど、もし生活のリズムが合わないとかだったら、手段として別居婚をしてたよね?

三田:うん。でも私は、別居はちょっと寂しいなって思ってました。

――我慢や忍耐がなくても、一緒に生活できることがわかって同居に踏み切ったわけですね。普段何か気を付けていることや、仲良く暮らすコツってありますか。

横嶋:三田さんが効率厨(編集部注:「効率を最優先する人」を表すネットスラング)なんです。なので、家事でもなんでも、得意なほうがやる。逆に非効率が死ぬほど嫌いなのと、慣習にとらわれて非合理的に物事を進めていくことはすごく嫌みたい。そういう特徴があるので、うちは、炊飯器がなかったり、食器が紙皿だったり、お互い気にしないところは完全に削っています。ご飯はいつも外で食べる。

三田:アウトソーシングです。

横嶋:けど、三田さんは洗濯は好きなので、全部やってもらう。

三田:洗濯機はめっちゃいいのを買いました。柔軟剤を勝手に入れてくれるので、便利です。

――掃除はどちらが?

横嶋:掃除はしてないです(笑)。でも最近、「物を捨てるのは私」という分担ができてきました。

三田:私が物を捨てられないんですよ。たしかにゴムがゆるゆるになったズボンとかありますけど、ゆるゆるになった歴史がちゃんとあるんですよ。私からすると大事なのに、妻はそれをスパッと捨てようとするんです。それってちょっと悲しいんですよね。たとえばポケモンで、サトシがピカチュウを捨てたら嫌でしょ。

――伸びたズボンはピカチュウじゃない気が……。

三田:でもそのズボンとともに、私は故郷を出てきたんですよ。すごく物に対して愛着がわくタイプで。

横嶋:最近発見した、夫の癖ですね。ためらう期間が必要。お互いの特徴を客観視して、運用に組み込むほどに生活が円滑になると思いますね。

――なるほど。相手の特徴を許容するんですね。それぞれに「これだけはされたくないこと」ってありますか?

三田:命令ですね。小さなことでも命令されるのがすごくいやです。

横嶋:指図は本当に嫌がりますね。「早く寝なよ」とかでも嫌がってる。自分のことは自分でコントロールしたいんだろうなぁと思って見ています。あと、結婚したばかりの頃は、私が電子レンジの温め時間が残っている状態で開けたりすると、私の野蛮さにショックを受けた夫がしばらく口も利けなくなるみたいなこともありました。

そうやって夫の心の扉が閉まってしまうことも度々あったんですけど、最近はコミュニケーションで回避できるようになりました。お互いのタイプを分析できてきたし、きちんと言ったらわかるはずだっていう信頼も出てきて。夫は図星をつかれるのが嫌なタイプで、当初は空気が悪くなったりもしたのですが、最近はそれをかわいい仕草でかわすことを習得しました。

三田:お尻を出したりね。

――ちょっとおちゃらけた非言語コミュニケーションでもって、空気を和ませる。

横嶋:そうそう。そういうコミュニケーションのパターンが増えて、だいぶ楽になりました。最初はそれがなくて、なんでもマジレスになってしまっていたけど、これはこのパターンで回避できるっていうノウハウが溜まってくると、だいぶ楽になる。

■夫婦関係は特別なものじゃなく、人間関係の一種でしかない

――お話を聞いていると “おふたりらしい結婚生活”を作り上げているように感じるのですが、そもそも理想の結婚や、家庭の姿ってありましたか?

三田:うーん。

横嶋:三田さんちのお父さんとお母さんは仲が良いよね。お母さんがスーパーに行くっていうと、お父さんが「どこに行くの? 俺も行くよ」ってリュックを背負う、みたいな。

三田:そうですね。うちの父と母みたいなものなんですかね。出かけるときはいつも一緒に出かけて……一緒にいたい人と一緒にいること、それが法律的にも認められたのが夫婦って感じですかね。

横嶋:わたしの漫画を読んだ人から「三田くんは婚活するタイプに見えません」という感想が、すごく来ます。たしかにぱっと見はしなさそうなんですけど、たぶんもともとはロマンチストなんでしょうね。お父さんとお母さんが、ラブラブだったりするのが前提だから。

『合理的な婚活 成婚編〜子なし別居婚をめざすおたくの婚活実録漫画〜』より ©横嶋じゃのめ/ホーム社

――ちょっと上の世代だと、「父親が亭主関白」がありがちですが。

三田:うちはぜんぜん違いますね。父と母は対等な関係でした。

横嶋:素晴らしいですよね。

三田:そもそも夫婦関係って、特別なものじゃなくて、普通の人間関係の一種だから、男女とか関係なく、「誰と誰の関係なのか」っていう一点につきると思います。「男は外で稼いで、女は家を守る」みたいなのは関係なく、得意なほう、やれるほうがやればいいんじゃないかって。

――なるほど。

三田:家事が得意な男性もいれば、家事が不得意な男性もいるし。外で稼いでくる女性もいれば、外で稼ぐのが嫌だっていう女性もいる。うまくいくかどうかは相性次第だし、どうしても相性が合わなければ、離婚すればいい。「結婚はいいものだ」というのは、結果論だと思います。誰と結婚するかで生活は変わるので、「理想の結婚」は正直あまり考えてなかったですね。

横嶋:でも、「一緒にお墓に入りたい」みたいなこと言ってたよね?

三田:え? 入るんじゃないの?

横嶋:いや、入るけど(笑)。わたしは、友だちとも長時間遊べない性格で、女友だちと二泊三日とかで旅行すると、帰りには一時的にその子のことが好きじゃなくなってしまうタイプなんです。母とも嫌。けど夫は、一緒にいてもストレスがない。夫という存在が初めてだし、まだ結婚して2年ちょっとなのでわからないですけど、人といる時間が記録更新できているのがすごいなって思います。

――お話を聞いて、結婚はふたりで形を作っていくものなんだなと再認識しました。今日はどうもありがとうございました!




そもそも「結婚したら女性が姓を変える」という役割の固定観念は、どのように形作られてきたのでしょうか。家族社会学の専門家・永田夏来先生にインタビューしたこちらの記事も、ぜひ併せてご覧ください。

妻が夫の姓を名乗るのはなぜ? 「結婚で変わるべきは女性」はもうやめよう



大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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