セックスするとかしないとか、それよりもただドキドキしたい
「セックスしそう。だけど、しない」。そんな関係は、親密とドキドキの良いとこ取りが叶う。これからセックスしてもいいし、しなくてもいい。いつかふたりの気分が乗って、タイミングが合えば、突然したっていい。どんな夜になるんだろう。どんな声を聞かせてくれるのかな。想像するだけで楽しい。
恋愛の楽しみ方は人それぞれだけれど、私は不確定な男女関係にドキドキするのが大好きだ。もしかして、彼は私のことが好きなのかな? もしかして、キスするのかな? もしかして、セックスするのかな? などと期待に胸をふくらませながら、夜な夜なマニキュアを塗ってみたりする。すっごくドキドキしちゃう。
■セックスしそうでしなかった旅行のこと
男友達とふたりで旅行をしたことがあった。新宿で一緒に焼鳥を食べていたら彼が「仕事ひと段落したし、温泉にでも行きたいなあ」と言うので、「じゃあ今度私と行こうよ」と言ってみたら、本当に行くことになったのだ。
彼とはかつて仕事で関わったこともあり、その後はたまにお酒を飲みに行く関係である。お互いに何でも話せるし、間違っていると思ったら面と向かって言える。そんな信頼関係があった。
友達とはいえ、丸2日間、男女ふたりきりだ。もしかして……何かあるかも……という気持ちも正直あり、前日にデパートに寄ってちょっと可愛い下着やリップを買ったのを覚えている。荷造りで少し悩んでパンツを1枚多めにカバンに詰める。もうこの時点でドキドキするね。楽しい。
待ち合わせの駅で、ラフな私服姿の彼がすごく新鮮に見えたのを覚えている。お酒のノリで約束してしまったのもあって、最初は少し気まずかったけれど、途中からだんだんとほぐれていった。
結局、セックスはしなかった。でも、ドライブでお気に入りの曲を一緒に歌った。旅館の個室の露天風呂に一緒に入り、「ちょっと待って、勃起してる?」などと冗談を言って笑い合った(本当に勃っていたかは知らない)。
ベッドに腰掛け、缶ビールを飲みながら初めてのセックスの思い出を語り合った。別々のベッドで眠りについて、朝方少し添い寝した。そのまま起きて展望台まで散歩し、生まれ育った地元のことを話した。
お互いセックスだけをしたいのであれば、旅行なんかしなくても、新宿の焼鳥屋からそのまま5分歩いて、ラブホテルに行けばいい話だ。そうするよりも、私たちはあの2日間、ずっとドキドキして、エロくて、楽しんで、深くわかり合えた気がする。
■関係性はもっと自由でいい
こういう話をすれば、たいてい「それは友情なのか愛情なのか」「男女の友情は成立するのか」などと聞かれる。でも正直、そんなことはどうでもいい。友情もあれば愛情もあるし欲情もある。むしろそのあいまいな感情の揺らぎをじっくり楽しむのが趣旨だ。
恋愛に、人間関係に、定義が役立つことがあるだろうか。私は役立てられた経験がほぼないので、あまり考えないようにしている。今、目の前にいる人に対して感じること、こうしたいという気持ちがすべてなのだと思う。もちろんある程度の信頼とマナーは必要だけれど。
彼とは旅行をした後も、何度か新宿や高田馬場でご飯を食べた。あの2日間を経て私たちはぐっと親密になったと思う。どちらかが他愛のない冗談を言う。カウンター席で肩をくっつけて自然に笑う。政治や仕事について意見を言い合うこともある。小振りのジェスチャーで指先が触れ合う。自分たちの恋愛の話もする。そっと膝が寄り添う。一瞬、ドキッとする。私たちの間にはまだひっそりと「もしかして」の期待感が息づいている。
セックスしそうでしない関係は、親密とドキドキの良いとこ取りができると思う。これからセックスしてもいいし、しなくてもいい。今はしなくても、いつかふたりの気分が乗って、タイミングが合えば、突然しちゃうかもしれない。ああ、その夜は、どんなふうなんだろう。どんな声を聞かせてくれるのかな。想像するだけでドキドキしちゃう。
関係の名前が、誰かの決めた決まりが、何だっていうのだろう。人の組み合わせの数だけ関係がある。今日も私はあなたにドキドキして、今日も人生を楽しんでいる。
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