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「真夜中のベリーサーフィン」ただいまみいちゃん#3

文筆家・佐々木ののかと、イラストレーターのぱのが送るコミックエッセイ『ただいまみいちゃん』。猫のみいちゃんと、ひとりの女性によるささやかな日常をお楽しみください。

「真夜中のベリーサーフィン」ただいまみいちゃん#3

みいちゃんは年齢のせいか、トイレに行くのが間に合わなくていろんな場所でおもらしをしてしまう。あるときはベッドの下で、あるときは枕の上で。最近は、お気に入りの電気カーペットに2回もおもらしをしてしまい、泣く泣く捨てることになってしまった。

暖房をつけてはいるものの、東向きの我が家の日中は暗くて寒い。ちょっぴり寒そうで不憫だなと思っていたけれど、冬物家電のセールもとうに終わって、これから暖かくなるのに電気カーペットを買う気にはなれない。友達にもらったハロゲンヒーターをつけて、みいちゃんをあたためる。4月は春なのに寒い。夏も冬も嫌いだけど、もう少しだけあたたかくなってほしいな。

■真夜中の猫、ベリーサーフィン

そんなある日の夜、私は何か重たいものに押しつぶされる夢を見た。息が苦しくて、胸のあたりがぐうっと押し込められる感じがする。これは夢だと気づいて目を開くと、暗闇の中ランランと輝くふたつの目がこちらを見下ろしていた。みいちゃんだった。

甲状腺の病気になってしまったみいちゃんは食べれども食べれども太ることができず、成猫なのに2kgほどしかない。それでも細い四つ足で骨のない場所に乗られると、内臓が圧迫されてけっこう苦しい。でも、きっと寒くて、少しでもあたたかい場所に身を置きたいのだろうと思うと邪険にはできず、私はなけなしの腹筋を上下させて、みいちゃんを降ろそうと試みた。

「みいちゃん降りてよ」

夢と現実の狭間に挟まったまま、私はぼんやりと言葉を放つ。みいちゃんは返事もせずに、ときどきあくびまでしてこちらを見ている。

しかし、みいちゃんは降りようとしない。降りようとしないどころか、パジャマに爪をガッシリと立てて踏ん張り、むしろサーフィンのように楽しんでいるように見える。お腹の上のサーフィンだからベリーサーフィンだ。

どんなに激しく波をつくっても降りてくれないので腹筋がつらくなり、起き上がるのも億劫になってしまった私はそのまま眠ることにした。その後はまた性懲りもなく何かに押しつぶされる夢を見て、翌朝目が覚めると、やっぱりみいちゃんは私のベリーの上に乗り、こちらを見据えている。そうして起きたのを確認して、顔を横断したり、足で頬を叩いたりして「ご飯をよこせ」とせがむ始末だ。

だんだんと暖かくはなってきたものの、明け方が冷えるときがある。そんな日はみいちゃんがお腹に乗っているので、起きがけすぐにどんな気温なのかがわかるのだ。深夜と早朝のベリーサーフィンも悪くないけど、早くあたたかくならないかな。

Comic・Illust/ぱの(@panoramango

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