猫と“私”の愛の試み

私は悪魔、猫と暮らしてる
私は人のかたちをしているけれど、
なぜか人間は私を悪魔と呼ぶ
人間は見かけ上は2種類
2種類のうちの片方には悪魔が混じっているんだって
足の間にある三角州の内側、小さな突起が悪魔の証それで、私は悪魔
なんでかわからないけれど、悪魔
人間は怖い、言葉で私を規定する

私は人間が怖いけど、猫のことは好き
猫は言葉がなくても会話できる
人間は言葉で嘘をつくけど
猫は言葉を持たないから嘘をつかない
人間のことは信用できない
猫のことは信用できる

だけど、すっかり言葉に慣れてしまって、
猫との交流の仕方に自信がない
合っているのかな
間違っている？
そんなことあなたは気にしないね
でも、近づきたい
私はあなたに近づきたい
言葉なくして
猫に近づくってどういうこと？

ある日ケーキを食べていたら寄ってきたあなた
あなたは猫だから食べられないよ
そう言って最後のひとくちを食べて舌を出したら
あなたは臆せず舌を舐めてきた
薄くて小さくてザラザラのかわいい舌
私のは厚くて不格好だな
こうやって何度も舐められたら
私の舌もあなたみたいに薄くて可愛くなる？
あなたの舌みたいになりたい
あなたにもっと近づきたい

舌を舐め終えたら
満足げにすり寄ってくるあなた
太ももから腰回り、胸から首、頬へ
すり寄ることがあなたの愛情だって何かの本で読んだよ
あなたも私のことがすき？
ふわふわの顔が強めに押し当てられる肉体
私もあなたにそっと顔を押し当てる
あなたも私に押し当てる

私はあなたの匂いに
あなたは私の匂いに

あなたのふわふわのやわらかいからだ
私のかわいたかたいからだ
とけていきそう、ことばでひかれたりんかく
ことば、ことば、
さよならことば、

あなたのからだにかおをうずめて
めいいっぱいいきをすうよ
あたたかいてんぴぼしのにおい
はなからすって
わたしはあなたになる
あなたになっていったいになる
わたしたちはわたしになって
ふうけいになる