「生理が来るたび、夫をもっと好きになる」生理時の“神対応”が話題の夫婦にインタビュー
他人とは共有できない生理のつらさ。同棲や結婚などでパートナーと共同生活を送るにあたって、生理についての情報共有ができるに越したことはないですよね。Twitterで生理時における“夫の神対応”が話題になったあつたゆかさん&まさとさん夫婦に、普段から心がけていることを聞きました。
今月も、「いつものお決まり」がやってきた。
お腹が痛くて、起き上がるのもしんどい。
でも、仕事も家事も、いつも通りしないといけないから、憂鬱だ。
こんなとき、一緒に暮らすパートナーが理解を示してくれたら、どれだけ心強くて安心するだろう。
「生理中の夫の対応が神なんです」
そう語るのは、あつたゆかさん。
ゆかさん、まさとさん夫婦
ゆかさんとまさとさんは、2018年6月に入籍し、結婚式を間近にひかえる新婚夫婦だ。
彼女は、まさとさんの“神対応”について、Twitterでも投稿している。
「生理」というとどうしても、妊娠や出産と並び、「男性に理解してもらえない」というイメージが根強いが、なぜまさとさんはこれほどまでに女性側の立場に立って行動することができるのだろうか。
ゆかさん、まさとさんのおふたりにお話を伺った。
■夫は最初から“神対応”だった
――おふたりは、お付き合いして2年で婚約、そのうち1年は同棲をしていたそうですが、旦那さんの「生理中の神対応」というのは、いつ頃から始まったのですか?
ゆか:いやもう、最初からなんです。
――最初に「神対応だな」と思った瞬間は覚えていますか。
ゆか:覚えてます、覚えてます。22時半頃、突然生理になってしまったときがあったのですが、そのときちょうど生理痛の薬が切れていて。お腹が痛くて辛い、と彼に言ったら、その場で近くのドラッグストアを検索してくれて。「ここなら、俺がダッシュで行けば間に合う!」って、本当に走って閉店間近のドラッグストアにお薬を買いに行ってくれたんですよ。
――優しい……。ゆかさんは、生理の症状が重たいタイプですか?
ゆか:ものすごく重いわけではないんですけど、毎月3日間くらいはお腹が痛くて立ち上がったり歩いたりすることが辛くなりますね。そのときも、やっぱり動けないくらい痛くて。
――その状態でお薬を買ってきてくれる人がいるのは安心ですね。まさとさんは生理用の薬を買った経験などはあったんですか?
まさと:薬は初めてですね。昔付き合っていた恋人のために生理用品を買いに行ったりしたことはあります。
――たとえば、男性がパートナーの代わりに生理用品やお薬を買いに行くと、店員さんからの視線が気になることもありますよね。まさとさんは、そこに対する抵抗感はないですか。
まさと:まったく気にならないといったら嘘になりますけど、どちらかというと変な目で見られたときに堂々としていたいんですよ。偏見が嫌いなので。それに、堂々としていれば逆に恥ずかしくないですよ。
――そこで自分を貫ける強さがあるんですね。ゆかさんは、過去にまさとさんのような生理に理解がある男性とお付き合いしたことはありましたか?
ゆか:今までお付き合いした方も、辛いときは「大変だね」と気遣ってくれたり、優しかったとは思います。ただ、まさとさんの場合は、すべてを行動で示してくれるんですね。そこが大きく違うんです。
たとえば、二度目に神対応だと感じたのが、LINEで「生理が辛くて寝込んでる」と言ったら、定時の18時よりも1時間早上がりしてくれた上に、スーパーでアボカドや納豆、まぐろなど生理のときにいいと言われる食べ物を買ってきて、家で「生理痛撃退ごはん」を作ってくれたとき。
私は別に「ごはんを作って」と言ったわけではなくて、ただ辛いと報告しただけのつもりだったのですが、想像以上のあたたかい気遣いが返ってきたんです。
――レシピはオリジナルですか?
まさと:別に、そこまで凝った料理ではないですよ(笑)。ネットで「生理痛 効く 食材」みたいな感じで調べて、あとはアボカドと納豆とマグロなら丼物にしたらおいしそうだな、って。
――でも、自分で調べて作ってくれる、というのは寝込んでる女性からしたらありがたいと思いますよ。
ゆか:先月は、私の好物だらけの夕飯を作ってくれたんだよね。
まさと:そうそう。僕はてっきり「お腹が痛い」っていうから消化にいいものが良いと思っていたんだけど、何が食べたいか聞いたら「ラザニア」って言われたから、そうか、彼女は重たいものでも大丈夫なタイプなんだな、って。
おそらく生理には個人差があるから、誰しもが当てはまるわけではないと思うんだけど、ゆかの場合は大丈夫ってわかった。そこで1個収穫がありましたね。
■我が家の生理期間=「夫に惚れ直す期間」
――聞けば聞くほど、「神対応」とおっしゃっていた意味がわかりました……。
ゆか:ほんと、むしろアラを探してほしいくらいです。
まさと:正直、僕は別に「神対応」とは思ってないんです。もちろん、ある程度「親切なことをしている」という意識はありますけど、それって誰しもが何かしらの面で発揮する部分じゃないですか?
ゆか:彼にとっては、生理で苦しんでいる私にお薬を買ってきたり、料理を作ってくれたり、家事をすべてやってくれたりすることは「好きな人への接し方として普通」なんですよね。
彼はよく「もし目の前の相手が風邪で倒れていたら、何が欲しいのか考えたりリンゴをすったりしてあげるでしょ。それと一緒で、生理だから優しくしているのではないよ」って言うんですね。要は、生理の知識があるから神対応ができているのではなくて、常に目の前の相手を見て、自分が何をできるか考えているだけだというんです。
まさと:風邪だと聞いたら「大丈夫?」と言えるのに、生理だとそうはならないというのは不思議です。生理が病気という枠じゃないから切り替えがしにくいのかな……。でも、本当は病気かどうかってそんなに大切なことじゃなくて、「体調が悪い人がいたら気遣いましょう」って、ただそれだけだと思うんですよね。
ゆか:彼は生理のときに限らず、いつだって優しいんです。風邪で寝込んでいるときも変わらない。
――言われてみたら、たしかに「体調が悪い」という点で考えれば、生理も病気や風邪と同じようにいたわることができますよね。「女性じゃないからわからない」というのは、ナンセンスなことなのかもしれない。
ゆか:そう考えると、どんな病気に対しても同じことが言えますよね。たとえば私は胃腸炎になったことはないけれど、もし彼が胃腸炎になったら、「辛そうだな、何かできないことはないかな」と考える。それは男女問わずできることです。
「男だから生理の辛さはわからない」と言う人もいるけれど、生理痛に限らず、この世のすべての病気や苦しみを体験するのって物理的に不可能ですよね。なので必要なのは想像力で、「相手の痛みを可能な限り想像して、相手がしてほしいだろうことをする」、それだけだと思うんですよね。
――相手を思いやる、というシンプルな話として考えればいいんですね。
ゆか:彼はそういう点でとにかく理解がある人なので、もはや最近、生理が来るのが楽しみになってきたんです。
――生理が楽しみになる?
ゆか:もともとは憂鬱だったんですけど、毎月神対応が来ると思ったら、なんだか待ち遠しくなってしまって。いつも優しいし感謝しているけど、生理のときはより彼の気遣いが際立つんですよね。彼の良さを再発見できる。私にとって今、生理は「夫に惚れ直す期間」なんです。
■毎月必ず訪れる「セイリーさん」
――生理の時期を乗り越える上で、まさとさんの理解があることのほかに、おふたりで何か工夫をしていることはありますか。
ゆか:工夫でいうと、私は生理のことを「セイリーさん」って擬人化して呼んだりしています。月に一度ホームステイに来る留学生という設定で、私のことをめちゃくちゃいじめるんです。だから、生理がきたときも彼には「セイリーさんがいらっしゃいました。私の中で暴れまわっております」という風に伝えていて。
――なるほど。そこにはどんな意図があるんですか?
ゆか:うちの基本方針として、「人格と結びつけない」というのがあるんです。たとえば、生理で寝込んでいるときも「私が悪い」のではなくて、「セイリーさんが暴れまわっていらっしゃるからだ」と、擬人化して別のものに結びつける。クスリー(薬)さんもいますよ。セイリーさんが暴れまわっているときは「クスリーさんになだめてもらおう」みたいな。辛いときに自分を必要以上に責めなくてよくなる。
――たしかに「生理」を「セイリーさん」と言い換えるだけで、なんだかちょっと楽しげな気分になるのがいいですね。
ゆか:そうなんです。彼も一緒に楽しんでくれるのでさらにうれしいです。この間とても感動したのが、生理中で寝込んでいるときに「家事何もできなくてごめんね」と言ったら、「でも、ゆかはセイリーさんの面倒をみててくれたじゃないか。それも立派な仕事だよ」って返してくれたこと。生理なのは私ひとりだけど、どこかふたりで楽しんでる感じなんですよね。
■「男女だからわかり合えない」とは思っていない
――「セイリーさん」や「クスリーさん」というネーミングは、ゆかさんのアイデアですか?
まさと:そういうのは、全部彼女の発想です。「おおざっぱ王国」と「神経質な王国」とか。
――以前Twitterでかなり話題を集めていましたよね。これはどのような経緯で生まれたんですか?
ゆか:どうやって生まれたんだっけ。
まさと:たしか、お互いに「おおざっぱだよね」とか「神経質じゃん」ってふざけて言い合ってたら、いつの間にかそういう言葉を使うようになっていた気がする。
――日常的に使うんですか。
ゆか:使います、使います。たとえば洗い物をしていたときに、私が洗ったお皿に洗い残しがあると夫の悲鳴が聞こえてきて、「おおざっぱ王国の民よ! 洗い残しがあるぞ」って言われたりするんですね。
私はおおざっぱなのであまり気にならないのですが、彼がそこで「おおざっぱ王国では、洗い終わったあとにお皿に汚れが残ってないか、指で拭いて確かめないの?」と聞くんです。で、「神経質な国には、そんな法律があるの!? なんて几帳面な国なんだ……」と私は驚くんですね。
そこで「ゆかもお皿が汚れているのは嫌だよね? だったらこれからはお皿を流したあとに、指で拭いて確認しましょう」と提案をされ、お互いにお皿洗い協定を結ぶんです。
まさと:その協定、あまり守られてないんですけどね(笑)。
ゆか:ごめん(笑)。私がすぐに忘れちゃうので。
――そういうのって、けっこう喧嘩につながりがちな場面だと思うんですが、すごく建設的な議論が行われるんですね。
ゆか:家事などで喧嘩になったことは、一度もないです。あくまで王国の文化や法律のせいなので、そこが人格に結びついてないんですよね。たとえば、箸を使わない国で生まれ育った人が箸を上手に使えなかったとしても、誰もそれを責めたりはしないじゃないですか。文化の違いなんだから仕方ないな、って思える。
――今回「生理」というテーマでお話しする上で「男と女でわかり合えない溝をどう埋めるのか」というところが気になっていたのですが、おふたりのお話を聞いていると、もはや「男」とか「女」という枠組みから逸脱しているように感じました。
ゆか:そうですね。そもそも「男女だからわかり合えない」と思っていないです。男性でも彼のように生理中の私の立場に立って考えてくれる人もいれば、女性でも「私は軽いのだから、あの子があんなに重たいと言っているのは甘えだ」と感じてしまう人もいる。あくまで目の前にいる「個人」としてみようとすることで、わかり合うことができる気がしますね。
まさと:僕はもともと「偏見」というものに敏感で。生理の話でいえば「○○さんは軽いから君も軽いはず」みたいな基準で判断は絶対にしたくないんですね。
もちろん「どのような痛みなのか」という知識は大切だと思いますが、それは理解の助けにしかなりません。まずは目の前の相手を見て、いま彼女が何を求めているのか、どうしたら喜ぶのか、それを考えてみることが大切だと思っています。
Text/園田もなか(@osono__na7)
Photo/阿部萌子(@moeko145)
※ この記事は2019年3月19日に公開されたものです。
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