【体験記】ベビーシッターに支えてもらう、リモートワークと子育て
仕事と子育てを両立するために、「ベビーシッター経験のあるメイドを住み込みで雇い、息子の面倒を見てもらう。私は自宅でリモートワークする」と決めました。海外で試行錯誤しているライフスタイルについてご紹介します。
私は東南アジアのITスタートアップで、ローカル向けのアプリ開発チームでシニアプロジェクトマネージャーとして働いています。プロジェクトの進行管理と品質管理が主な役割です。
幸い、業界柄「リモートワークができる下地」が整っていたのと、東南アジアという環境柄、ベビーシッター経験のあるメイドを住み込みで雇えば、自宅で息子の面倒を見てもらえるし家事もやってもらえる。そう考えて、上司の了承を得て、しばらく自宅でリモートワークすることにしました。
育休という制度がなく、産後2カ月でフルタイムで復職するには、これがベストな選択でした。
このライフスタイルをどのように構築したか、またメリットとデメリットについてご紹介します。
■身近にロールモデルがいない中での試行錯誤
「住み込みのシッターに子どもの面倒を見てもらいながらリモートワーク」というノウハウが見あたらず、経験者も身近にいない。
そうなると、メイドのマネジメントから私たち夫婦が息子との過ごす時間の確保、仕事と子育ての頭の切り替えなど、何もかもがゼロからのスタートでした。極端な話、「何時に起きるのがベストか」ということも悩みました。
特にメイドのマネジメントは、メイドにタスクをお願いしたらどれくらいの時間で終わるのか未知数だったので、「やりながら改善」の繰り返しでした。
料理は私が書いたレシピがハイコンテクスト過ぎて彼女に正しく伝わらなかったので、私がレシピを何度も書き直し、やっと「誰が作っても同じ結果になる書き方」をマスターしました。
昼間の子守りを彼女にお任せすると私の中の「母親」成分が減っていく気がしたので、ミルクは可能な限り私があげています。離乳食の進み方によっては、息子の食事も彼女の助けを借りることになるでしょう。
子育ても大事ですが自分のキャリアも大事。そのために、フルタイムできっちり働くための生活環境を整える手間は惜しみませんでした。
■メイドの健康管理とキャリアも考える
メイドの業務時間は7時〜21時です。
息子の面倒がメインで、次の優先度が料理、洗濯と掃除は状況によって後回し。拘束時間が長い分、日中に「やることがない時間」を必ず確保して休憩を取るようにしています。
やることがないのか、休みの日の日曜日も働きたいと申し出てくれて、それはそれでありがたいのですが、働き詰めで体を壊したら元も子もないので「お願いだから休んで」と言ってあります。
我が家のメイドは、国に家族を残して出稼ぎにでていて、2年間は帰れません。
彼女の判断なのでそれは尊重するとして、この2年間ただ家事と子守りで過ごすだけでなく、新しいスキルを身につけてほしいと思い、日本食を教えることにしました。
美味しく作れたレシピは印刷して渡すようにしています。将来、国に帰って次の雇い主を探す際に、「こういうスキルがあります」というエビデンスになって給与交渉の材料になるからがんばってね、と学ぶ動機づけもしています。
私にとっても、彼女の料理スキルが上がるとものすごく助かるため、教え甲斐があります。実際、ここ数週間はほとんど料理をしていません。
■子育て・生活面のメリット
メリット1:目の届くところに息子がいるだけで安心
産まれたばかりの0歳児、目に入れても痛くないようなかわいさです。
メイドが来る前の1カ月だけ保育園に預けていましたが、その頃は寝ている時間を除くと登園前の朝の1〜2時間と帰宅後の1〜2時間しか一緒に過ごせませんでした。今はいつでも息子の姿を見られるのが非常に嬉しいです。
とはいえ、息子とメイドは別室にいるので常に見ている訳ではありませんが、「いつでも見られる、数歩のところにいるという安心感」は得難いものだと気づきました。
ミルクも、メイドに丸投げでなく自分で息子に与えることができますし、通勤時間が0なので発熱や体調不良などの不測の事態にもすぐ対応できます。
メリット2:家事を都度指示できる
「息子が寝ている間」にしか家事をお願いできないため、必要に応じて優先度が高いものから指示を出せて助かっています。
特に、冷蔵庫の状況によって買い出し、料理のする・しないを決められるのはとてもありがたいです。
デメリットは特にありません。
「家族以外の人が家にいる」ことが気になる方もいるかもしれませんが、私はまったく気にならないのと、助けてもらっているメリットのほうが圧倒的に大きいです。
■仕事面でのメリットとデメリット
リモートワークすることは子育て面ではメリットだらけですが、自分のキャリアという点ではデメリットもあります。
メリット:
「結果を出すこと」に注力することになりました。
オフィスにいる同僚に私の姿が見えなくても、ロジカルな結果が出ていれば、評価する側は評価しやすくなります。
デメリット:
同僚とのコミュニケーションが取りづらくなりました。
これまでは職場での何気ない世間話の流れで、資料では見えない進捗を探ったり、同僚が元気かどうか探ったりしていました。
一方で、リモートワークだと何気ない世間話ができず、部下のキャリアの悩みに気づけなかったり、職場のちょっとした問題に気づけなかったりしました。
リモートで部下と定期的に会議をして双方の近況報告をしたり、社内で勉強会を主催してコミュニケーションを取る機会を増やすなど、常に試行錯誤しています。
■おわりに
日本でベビーシッターサービス事業者が増えたり、待機児童対策の一環として東京都がベビーシッター代を一部補助するなど、ベビーシッターを雇うことへのハードルが少しずつ下がっているように見受けられます。
自宅でリモートワークしながらの子育ては、サポートしてくれる人がいれば最高の環境だと思うので、私の体験が、そういったライフスタイルに興味がある方の参考になれば幸いです。