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子どもがいない友人を羨ましいと思ったこともありました

子どもを強く望むほうではなかったものの、あるときをきっかけに気持ちが変わり、二児の母になった平美和さん。子どもが大きくなって子育てが落ち着いてきた現在、子どもを持つことで抱えていた葛藤やいま思うことを振り返っていただきました。

子どもがいない友人を羨ましいと思ったこともありました

子どもを持つか持たないか――選択に迷う人は少なくないのではないでしょうか。特に女性は、妊娠や出産の影響を強く受けるため、キャリアとの間で思い悩む人も少なくありません。

アラフィフの主婦を中心としたパフォーマー集団「コマエンジェル」を率いる平美和さんもそんな女性のひとり。

大学時代に劇団の座長を務めた経験を生かし、いまやイベントで人気を博するグループを引っ張る存在ですが、ここに至るまでにはさまざまな葛藤があったといいます。

■「産んでおけばよかった」と後悔したくなかった

ーー平さんはふたりのお子さんに恵まれ、幸せな家庭を築かれています。独身時代から子どもを望んでいたんですか?

大学時代に「私は演劇で身を立てる」と思い、20代は演劇活動に没頭する日々を送っていました。

夫とは当時から交際していて、「この人と結婚するだろうな」と感じていましたが、子どもを持つ考えはありませんでした。正直に言うと、私は子どもが好きなタイプではなかったんですよ。

ーー「子どもを持とう」と思うようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?

劇団メンバーは女性が多く、適齢期を迎えて続々と結婚、出産をする姿を見てきました。気持ちが大きく変わったのは、私が書いた作品でヒロインを演じるはずだったメンバーが「妊娠したの」と言って役を降りたときです。

座長として劇団をリードする立場にあったので、結婚後は妊娠しないよう気をつけていたんですが、このときに「私も子どもを持とうかな」と思いました。

女性には肉体的な“リミット”がありますよね。年を重ねてから、「産んでおけばよかった」と後悔したくなかったんです。

その後長女を妊娠し、29歳で出産しました。私が親になるイメージはなかったみたいで、妊娠を周りに明かしたとき、「お前は一番親になってはいけないやつだ」なんて言われましたね(笑)。

■「いい母」になろう……もがいた時期

ーー産後は劇団の活動を一度ストップされました。強い情熱を注いでいた演劇から離れることに葛藤はなかったのでしょうか?

仕事と違って育児は、途中で嫌になったからと言って投げ出せません。なので妊娠前から「私は戻れない旅に出るんだ」と覚悟していました。

とはいえ、しばらく経てば演劇の世界に戻れるだろうと思っていたのですが、その考えは甘かったです。長女の子育て真っ只中に、劇団時代の仲間とのプロデュース公演の話が持ち上がり、引き受けたものの、やってみたら想像以上にハードで……。子育てをしながら座長は務まらないなと痛感しました。

当時、夫は失業中で家にいて、家事や育児を彼が協力してくれたので、「できる」と思ったんですけどね。ひとつの演目のプロデュースに専念できる環境が必要でした。「夫が働き始めたらとてもできないな」と感じましたね。

ーー子育てではやることがたくさんあって余裕がなくなります。子どもを持ったのは自分の選択ですが、自由な時間は思うように取れず、やりたいことを我慢するシーンも増えてストレスを抱えることも……。そんなモヤモヤをどう乗り越えられましたか?

子どもがいない友人を見て、羨ましく思ったことは何度もあります。「なんで自分は好きな活動をできないんだろう?」「もっとやりたいことがあるのに」って。

育児は初めてのことだらけで、心に余裕がなくなりがちです。子どもは言葉は話せないわ、いたずらばかりするわで、ストレスが溜まって、子どもに向かって「うるさい!」と怒鳴ったことも何度もあります。

自分には母性がないと感じていただけに、いいお母さんになろうと必死でした。毎日のように「自分なんて母親失格だな。もっといいお母さんならこの子は幸せなのかな」なんて考えて、落ち込んだ時期もありましたよ。でも、これは子どもが反抗期を乗り越えて成長するように、母親の成長過程だと思うんです。

■母になった人生は、子どもからの贈りもの

ーー思い悩みながらもお子さんを育てられてきて、平さんが「育児を通じて得たな」と思うものは何でしょうか?

昔と比べると、相手の立場に立って物事を見られるようになったのかな、と思います。舞台の脚本を書くとき、以前は自分が書きたいことを前面に出した内容で、見る方のことを第一に考えられていませんでした。でも、子育てする中でいろいろな経験をしたことで、これまでとは違う視点で表現できるようになりましたね。

仕事のやり方だって、何の制限もない状態なら、成果が出るのは当たり前です。制約がある状態にあるからこそ、工夫をするようになる。自分が変わっていくきっかけにもなります。

育児は大変なことだらけですよ。子どもが外で悪さをしてしまい、慌てて謝りに行ったことがあります。トラブルはたくさんありましたが、それも子どもを持ったからこそ経験できたことなんですよ。多様な経験を経たいま、私の人生は、子どもたちからのプレゼントのように感じています。

ーー子どもがいるからこそ体験できることはありますね! しかし、育児中は辛いことが多く、心が折れそうになることもあります。現在子育てに悩むお母さんが目の前にいたとしたら、平さんは何を伝えたいですか?

よく、子育てが一段落した人が「大変なのはいまのうちだけよ」と言うことがあります。子育て真っ只中の状況では「辛いのはいまなんだから、いまどうにかしてよ!」と感じて素直に聞けないかもしれませんね。でも実際に子どもに手がかからなくなった今は、私も心からそう思います。

いまは育児に追われて、周りから取り残されているように感じるかもしれません。でも大丈夫! 時が経てば、自分の好きなことが必ずできるようになります。子どもに向き合い、子どものために我慢することがあっても、その経験は決して無駄にはなりませんから。「自分を主役にした人生」以外の人生を経験した先には、想像できないほどの素敵なクライマックスがありますよ、きっと。

平美和さん
二児の母。「コマエンジェル」を主宰。
https://www.facebook.com/komaangels/

信じた道を進み続ける人の美しさ - コマエンジェル公演「幾星霜 RETURNS」を観て

https://p-dress.jp/articles/3745

東京都狛江市を拠点に活動する主婦パフォーマンス集団「コマエンジェル」による公演「幾星霜 RETURNS」を観た。昨年9月に上演された「幾星霜」の再演。そして、2017年5月には「幾星霜 OKAWARI」として、コマエンジェルが銀座博品館劇場に進出する。

主婦パフォーマンス集団「一流でなくてもがんばる姿は、見る人に勇気を与えられる」

https://p-dress.jp/articles/2435

東京都狛江市を拠点に活動し、10周年を迎えた主婦集団「コマエンジェル」をご存じでしょうか? アラフィフメンバーを中心とし、「更年期」や「オバさん」などの自虐ネタをおもしろおかしく魅せるショーで人気を集めています。今回メンバーの皆さんに密着。活動に込めた思いや今後の展望をうかがいました。

Text/薗部雄一
Photo/大島りんご

5月大特集「人それぞれな子どもの話」

https://p-dress.jp/articles/6759

5月特集は「人それぞれな子どもの話」。「子どもを持つ・持たない」について、現代にはさまざまな選択肢があります。子どもを持つ生き方も、持たない生き方も、それぞれに幸せなこと、大変なことがあり、どちらも尊重されるべきもの。なかなか知り得ない、自分とは異なる人生を送る人のリアルを知ってほしい。編集部一同そう願っています。

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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