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産むタイミングは、私たちが決める。“妊娠ファースト”というひとつの選択

この3月にDRESS に掲載されたコラム「38歳独身、妊娠7カ月。私たちが妊娠するには『勢い』も欠かせないと身を持って知った」が大きな反響を呼んだ植村絵里さん。また少し大きくなったお腹を愛おしそうに撫でる植村さんに、妊娠ファーストを決意した経緯や現在の心境についてあらためてお話を伺いました。

産むタイミングは、私たちが決める。“妊娠ファースト”というひとつの選択

結婚することは、出産することとセットなの?
出産をして子どもを育てるためには、やっぱり結婚をしなきゃいけないよね……。

こういった見えない社会のルールに悩んだ経験はありませんか? 

そんな誰が決めたのかもわからないモヤモヤとした決まりに対して、「女性に対するさまざまな固定概念を打破していきたいんです」と話すのは、経営者の植村絵里(うえむら・えり)さん。

2018年3月に公開されたコラムでは、「結婚→妊娠」ではなく「妊娠→結婚」という“妊娠ファースト”という選択をとったことを打ち明けました。

今回は、常識に縛られない選択肢を生み出してきた植村さんに、子どもを持つことについて、そして妊娠ファーストという選択をとった経緯についてお話を聞いてきました。

■“妊娠したつもり”で過ごした日々

——前回のコラムでは、結婚の前に妊娠する“妊娠ファースト”についてお話しいただきました。その後反響はどうでしたか?


未婚の女性、既婚だけど子どものいない女性、シングルマザーなど、さまざまな女性からたくさんメッセージをいただきました。みんなけっこう温かいんですよ。「自分にはまだ勇気がないけれど、妊娠ファーストに賛成します」とか、「子どもってお母さんの一番の味方になってくれるから、これから楽しみですね」とか……。

一般論はさておき、実際に子どもを授かること自体は本当におめでたいことなので、最終的にはみんな祝福してくれるんだとあらためて実感しています。


——そもそも、植村さんが妊娠ファーストに踏み切った背景には、どんな思いがあったのでしょうか。


私は28歳から経営者として働き続けてきたんですけど、「仕事は充実しているけれど、女性としての人生、このままどうなるんだろう」という漠然とした不安が年々大きくなっていったんです。死ぬほど働いて、その後はひとりでワインバーに入り浸って、人の2倍のお酒を飲んで……。35歳になった頃、このままでは体をこわすと本能的に気づいて、ある時から一切お酒をやめました。


——それは妊娠を考えて、ですか?


もちろんそれもあります。

まず私が決めたのは「妊婦さんになったつもりで日々を生きる」ことでした。妊娠したら誰だってお酒も飲まない、タバコも吸わない、夜遊びもしないですよね。未来を先取りして現実をつくってしまえば、夢は必ず叶うという強い信念があったんです。


——まさに妊娠ファーストですね!


そうかもしれません。やっぱり35歳にもなると、将来の自分の姿が想像できるわけです。50歳になった自分が閉経を迎えて「若いうちにどうして子どもを作ることに挑戦しなかったんだろう」と後悔する姿が。

女性として生まれたからには“お母さんになる”という可能性も諦めたくなかったんです。そう決めてからは、体調を整えることに集中して過ごしました。体を温め、自炊をし、慢性的な肩こりと冷え性を直すために鍼灸へ通い……。マインドが一気に妊娠の方向へ向かっていきました。

■「いいお母さんになりそうだね」がすべての始まり

——35歳で妊娠ファーストを決めた……。でもお相手がいないと始まりませんよね。


正直、必死になってパートナーを探したというわけではなかったんです。

ただ35歳を過ぎてから恋愛観、キャリア観も変わっていって。それまでの私は経営者として爆走していて、男性と付き合っても必死で対等な立場を求めてしまったり、優しくなれなかったりして、うまくいかなかったんです。

でもある時「そもそもなんで仕事をしているんだっけ?」と。別に男性や周囲と戦うために経営者になったわけじゃない。精神的にも経済的にも自立して、みずから選択できる人生を送りたいからだった、と思い出して。


——そんな中でパートナーにめぐり逢った?


そうですね。彼、付き合ったそばから私に「いいお母さんになりそうだね」って言ったんですよ。結婚の話もまだ出ていないのに(笑)。それまで付き合ってきた男性は、仕事を頑張っている私が好きだという人ばかりだったので、すごく嬉しかった。

「じゃあ私の子どものお父さんになってね」と答えて、少し経って、お互いに人生のパートナーとしてこの人だという気持ちを固めてから、さっそく子づくりを始めないと、という運びになったんです。そして昨年の夏、晴れて自然妊娠することができました。


――結婚ファーストにならなかったのには、何か理由があったんでしょうか。


うーん、私にとって結婚と子どもってまったく別問題な気がしていて。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーじゃないですけど、海外では結婚しないで子どもがいるカップルってそんなに珍しくないじゃないですか。

もう一度結婚するとしても、子どもがいない生活を送るつもりはありませんでした。ですが前回の結婚から、「結婚したからって子どもに恵まれるわけではない」という経験が根底にあります。

結婚したからといって、子どもを授かる保証はどこにもないので、まずは妊娠の可能性にチャレンジするという選択をしました。

■お母さんだからこそ生産的に仕事ができる

——出産後のキャリア構築についてはどう考えていますか? そこがネックになって出産を躊躇する女性は少なくないと思います。


コラムにも「出産はキャリアのリスクでも会社の損失でもない」と書きましたが、これは大きなお腹を抱えた今から確信しています。つわりがひどい日や体調が悪い中で、時間の使い方と物事の優先順位のつけ方がすごく上手になってきたんです。

人のキャリアって、ただ“30年間働き続けました”ということじゃなくて、あるタームごとにやり方を更新・継続してこその価値だと思うんです。育児に入れば量こそ少なくなるけど、できる時に効率的に動き、自分がいない時にどうやって仕事を回していくか考える。そういう発想を持つことは、質の部分では向上していくことだと思います。


——お母さんだからこそ、働き方が上手になるということですね。


そうです。人って、制限がないと変わらないんです。でもお母さんって必然的に制限ができるからこそ、生産的な思考回路ができる。あとは実感として“母ちゃんやったるぜ! ホルモン”が分泌される気がしているんです(笑)。

この子が生まれてくる世の中を良くしたい、そしてこの子の可能性を狭めないために経済的に豊かでありたいという気持ちがどんどん湧いてくる。負けられない! という強い気持ちが芽生えてきているのを日々感じています。


——“妊娠ファースト”での出産に対するネガティブイメージを、一切感じさせないという気迫を感じます(笑)。不安はまったくないですか?


不安はありますよ! 今はポジティブに仕事も育児も両立させると思っているけど、「子どもの顔を実際に見たら考え方が変わるかもよ〜」なんて人から言われるし。

でも私って、生まれながらに未知の世界に飛び込むことが好きなタイプなんです。2歳で初めてプールに連れて行ってもらった時、何も考えず飛び込んだらしいんですよ(笑)。

それくらい大胆。だからこそ、その素質を生かして、女性に対するさまざまな固定概念を打破していきたいんです。

実は最近、私のお店の一角にベビーベッドを置いたんです。子どもが生まれて少ししたらここに連れてきて、授乳しながら寝かしつけながら仕事をするつもりで。

子どもを育てながら働いている人のリアルな姿って、なかなか見る機会がないでしょ? だからこそ、こういう可能性もあるんだ、ってポジティブなロールモデルになれたらと思って。

そう考えたらベビーベッドは、私の意思表示の象徴かもしれないですね。


(編集後記)

最後に、子どもを産むことについて真剣に考えている女性たちへメッセージをお願いすると「人事を尽くして天命を待つ!」と笑顔で答えてくれた植村さん。妊娠ファーストという選択肢が広く受け入れられる未来も、そう遠くないかもしれません。

取材・Text/波多野友子

5月特集「人それぞれな子どもの話」はこちらから

植村絵里さんプロフィール

1980年東京生まれ。聖心女子大学卒。内面も外見も女性がキラキラと美しく輝き、自己実現も出産育児も自由に選択できる社会作りをミッションに、28歳で起業。日本初の女子大生ベビーシッターサービス「KidsFlower」を創業し、子育て未経験の80人の大学生に現場で指導を行い、信頼されるベビーシッターへ育てあげた。300人以上の子供と200人以上の母親と関わる中で、まず母親や将来母親になる女子学生自身が外見から自信をもち笑顔になることが社会の基盤に重要だと考える。2011年、全く新しいコンセプトのクイックエステBeautiQ(ビュティック)を創業。美容サービスの価格や所要時間に不満をもつ子育て中の母親、ビジネスウーマンのニーズをカタチにした。

5月大特集「人それぞれな子どもの話」

https://p-dress.jp/articles/6759

5月特集は「人それぞれな子どもの話」。「子どもを持つ・持たない」について、現代にはさまざまな選択肢があります。子どもを持つ生き方も、持たない生き方も、それぞれに幸せなこと、大変なことがあり、どちらも尊重されるべきもの。なかなか知り得ない、自分とは異なる人生を送る人のリアルを知ってほしい。編集部一同そう願っています。

DRESS編集部

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