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避けられないワンオペ育児を、乗り切るポイント【母でも妻でも、私#9】

メジャーな子育て問題として、よく取り上げられる“ワンオペ育児”。回避できるノウハウはあるのでしょうか? 家庭の都合でどうしても避けられない場合、おだやかに乗り切る方法は? 当事者たちの声を交えて考察します。

避けられないワンオペ育児を、乗り切るポイント【母でも妻でも、私#9】

「ワンオペ育児」とは、家事や育児をすべてひとりで担うこと。

ひとりでやっているのは、だいたい妻のほうです。

ワーママだったら保育園にお迎えに行き、子どもの食事を用意し、お風呂に入れ、エネルギーが切れるまでマンツーで遊び、寝かしつける。
ゆっくりトイレに行くことも、たまった家事や仕事を片付けることもできないまま、時間ばかりが溶けていく……。

望む・望まないにかかわらず、この暮らしをこなしている方々は、本当にすごい。複数の子どもがいる方は、なおさら。一日中、子どもと一緒にいる専業主婦の方には、もうリスペクトしかない。

もちろん、かわいい子どもの一挙手一投足を堪能できるというメリットはある、けれど。

パートナーが単身赴任しているような「完全ワンオペ」から、平日だけ帰りの遅い「平日ワンオペ」など、負担の程度はさまざま。

だけど、めちゃくちゃ負担が大きくてもけろりとしている人もいれば、わりかしパートナーが協力的なのに疲弊している人もいる。

まずはその差に注目して、避けられないワンオペをうまく乗り切る方法を考えてみたい。

■ワンオペで疲弊している、梨沙さんのケース

専業主婦の梨沙さんは、夫と子ども(3歳)の3人暮らし。

夫はまじめな働き者で、一家の大黒柱として家族を養う、といった意識も強い。

梨沙さんは働くことにあまり興味がなく、専業主婦になったのは本人の希望だ。

平日、夫の帰宅は早くて20時、遅くて23時など。

梨沙さんの負担を減らすため、夫が自宅で夕食を食べることはほとんどない。

週末は子どもとみっちり遊ぶし、できるときには家事もする。自分のことは自分でさっさとできる、手のかからない夫だ。

でも梨沙さんは、毎日イライラしてしまう。

本当は19時に帰ってきて、子どもの夕食やお風呂、寝かしつけを手伝ってほしい。

20時に帰ってくる日は手伝ってくれるけれど、気持ちとしては全然足りない。

夫がときどきジムに行ったり、資格の勉強をしたり、自由な時間を過ごしているのも、気にさわる。

「養ってくれる夫に、もちろん感謝はしています。でも、夫が趣味や勉強に時間を遣っているのを見ると『どうしてそんな暇があるの』と思ってしまう。少しでも余裕があるなら、もっと子どもを見てほしいんです。夫と子どもは顔を合わせる時間が少ないから、どんな小さなことでも『ママがいい』となってしまい、それも結構しんどくて……」

子どもはかわいいし、夫のことも好き。

だけど、子どもがわがままばかりの日は疲れ切って、夫が帰ってきても会話をする気にならない、と言う。

■ワンオペなのに意外と幸せそうな、菜々子さんのケース

菜々子さんは、夫と子どもたち(2歳・0歳)との4人暮らし。

いまは二回目の育休を取得中だ。

夫の帰りは、いつも終電か深夜のタクシー。保育園の送りはしてくれるものの、出社が早いときはそれも菜々子さんが担当する。お迎えから寝かしつけまでの時間帯は猫の手も借りたいほどだけど、ひとり目のときからずっとこの生活なので、平日のワンオペはもう気にならなくなった。

とはいえ、週末まで遊びに出かけてしまう夫には、クレームをつけたこともある。

でも話し合って、土日のどちらかは子どもを見てもらうように取り決めた。

育児の当事者意識に差はあるけれど、大きな一歩だ。

「一緒にいるときに子どものお世話をお願いしたいと思っても、夫にやり方を説明する手間を考えたら、自分でやってしまうほうが早いんですよね。だから、つい自分ばかり担当してしまいます。それに、毎晩遅くまで仕事をしているのに、家にいるときまで頑張ってもらうのもちょっとかわいそうで……。ワンオペでふたりの子どもを見るのはたしかに大変なんだけど、夫が仕事に打ち込みたいなら、それをサポートしてあげたいとも思うんです」

ワンオペ中、菜々子さんはちょっとしたことでも夫にLINEをする。

夫も、すぐにリアクションを返す。

何気ないやりとりだけど、リアルタイムで気持ちを共有できるだけでワンオペ感がちょっと減る、と、菜々子さんは言う。

■ふたりが決定的に違うのは「納得感」の有無

最初に紹介した梨沙さんの夫の方が、菜々子さんの夫より、格段に家事・育児に参加している。

なのに、梨沙さんのほうがずっとストレスを感じているように見えた。

もちろん、もともとの性格も関係しているだろう。でもせっかくなので、ほかの理由を探してみたい。

ふたりとも、夫が自分の時間をゆったり過ごすことには、多少ひっかかる。
仮に、家庭運営での役割分担を「夫=仕事」「妻=家事・育児(の主担当)」とした場合、夫だけが自由に休めるのは、フェアじゃない。妻には、そんな時間がないのだから。

出産を境にがらりと生活が変わるのは、自分だけ。

そこに不公平感をおぼえるのは、ふたりの共通点だ。


では、ふたりの違いは何か?

話を聞いていて強く感じたのは、“納得感”だった。

梨沙さんは、現状に大きな不満を抱いている。”いま夫がしてくれていること”では足りない。自分だけが家事・育児の負担を強いられることに、まず納得がいっていない。タスクが多いだけに疲弊して、コミュニケーションを取る余裕もなくなっている。

菜々子さんは、現状をある程度受け入れている。夫はほとんど何もしてくれないけれど、仕方ない。彼は彼のやるべきことを頑張っている結果だから、ほどよいバランスを探していくしかない、と思っている。うまくやっていくために、お互いできる限りのコミュニケーションも忘れない。

自分がワンオペ育児を担うことに、納得できているか。

この意識の違いが、そのままふたりのストレスの差になっているような気がする。

■ワンオペでも、なるべく笑顔でいるために

ワンオペ

“納得感”を持つのは、たしかに難しい。

お互いの思っていることをテーブルに並べて、自分たちを取り巻く現状を踏まえながら「これがもっとも現実的で公平だね」というプランを導き出す必要がある。

まずは、それぞれの仕事のスタンスや家事・育児の分担について、よく話し合いたい。

相手がやりたいことや大事にしたいものがわかれば、お互いのどこを尊重して、どこを譲るべきかが見えてくる。

仕事を大事にしたい夫の気持ちがわかれば、いまは自分がワンオペをしてもいい、と思えるかもしれない。

自分の時間がほしい妻の気持ちがわかれば、夫は週に数回でも早く帰る努力ができるかもしれない。

夫の仕事がどうしようもないくらい忙しくても、感謝の言葉をこまめに伝えるだけで、妻はおだやかに家事・育児ができるかもしれない。


菜々子さんは夫の気持ちがわかるから、ある程度納得して、日々を過ごせているんじゃないだろうか。

梨沙さんは自分の気持ちがわかってもらえていないから、ついイライラしてしまうのではないか。

パートナーとのコミュニケーションが不足することも、ワンオペ育児の大きな問題点。仕事の都合でワンオペになるのが避けられないなら、コミュニケーションの部分だけでも、努力して埋めたい。

お互いにしっかり納得できるかたちが見つかるまで、話し合う。

気持ちのコストはかかるけれど、夫婦関係を良好に保つことを考えれば、費用対効果はいい。

■ワンオペに“しない・させない”コミュニケーション

……と、ここまでいろいろ考えてきたけれど、我が家はワンオペじゃない。

ワンオペを避けるために、私たちがどんなことに気をつけていたか振り返ってみたいと思う。

1.「夫は忙しい」で話を終わらせない

「うちの夫は20時に帰ってくる」と言うと、だいたい「いいな~、うちの夫は忙しいから無理」と言われる。

けれど、うちの夫もめっちゃ忙しい。仕事を持ち帰れる労働環境だった、という幸運はもちろんあるけれど、深夜も休日も働いてる……。

でもそれは夫だけじゃなくて、私も同じ。

忙しいなら、仕事のやり方を考える。

ボリュームを調節する。

ワンオペ防止を優先するなら、転職だってありえるかもしれない。

いまの仕事を大切にしたいけど、ワンオペにもなりたくないなら、妥協できるラインを考えればいい。「忙しい」で思考停止して、話し合いを怠ることが、のちのち不幸の種になる。

2.育児レベルをいつもそろえておく

妻は里帰りをして出産することもあるため、夫は育児のスタートダッシュが遅れるケースが多い。

それは仕方ないけれど、遅れたぶんを意識的に取り戻しておかないと「私がやったほうが早い」「ママじゃないとだめ」なことが増える一方。

そして、増えたぶんだけ、妻のワンオペ脱出は厳しくなると思う。

できないことはやりたくなくなるし、やらないことはできるようにならない。卵が先か、ニワトリが先か、という話なのだけど……。

妻はちゃんとタスクをシェアして、やり方を教える。夫はしっかり自分ごとにして、学ぶ。「リーダーとスタッフ」ではなくて「どちらもリーダー」の体制をつくることは、家庭運営のリスクヘッジでもあると思う。

3.共働き世帯は、産休・育休が明けたときのことをイメージしておく

里帰り後からすぐ、育児レベルの統一を図るのは、このため。

産後は「妻が育休をとっているうちは任せよう」と安易に考えるかもしれないけれど、その状態にどっちも慣れてしまうのが、ワンオペ量産の背景にあると思う。

夫は、妻がやるのが当たり前。

妻は、自分がやるのが当たり前。

子どもは、お母さんがやるのが当たり前。

そう思っちゃうのがやばい。

スタートダッシュから並走して、子どもの成長とともに増えるタスクや解決スキルも同じように身につけていかないと、いざ育休が明けるタイミングで夫が戦力にならない。

覚えることが膨大すぎるし、時間は足りないし、子どもとの信頼関係が充分できていないこともありえる。

5000歩譲って、育休中のワンオペは許すとしても、復帰後のイメージをちゃんと持っておくこと。

妻が復帰したら夫がどれだけコミットするか話し合い、そのための準備を粛々と進める。

それだけでも“なしくずし的ワンオペ”はかなり回避できると思う。

■ワンオペ=絶対悪、ではないけれど

とはいえ、家庭運営のスタイルには、夫婦の数だけ正解がある。

ワンオペは「絶対悪」なんて、全然思わない。

妻は家事や育児がめっちゃ好きで楽しいから、夫は仕事さえしてくれればOK! という家庭だってあるはず。もちろん、その逆も。夫婦がしっかり納得して、それがお互いにベストなかたちだと思えているなら、なんだっていいはず。

でも「いつのまにかワンオペになってしまっていてしんどい」とか「どんどん夫と距離ができる」とか「これから子どもを産んで、ワンオペになるのが怖い」とか思うのは、悲しい。

せっかくの子育て、せっかくの人生。

打てる手を打てるだけ打って、なるべくハッピーにやりたいものです。

菅原 さくら

1987年の早生まれ。ライター/編集者/雑誌「走るひと」副編集長。 パーソナルなインタビューや対談が得意です。ライフスタイル誌や女性誌、Webメディアいろいろ、 タイアップ記事、企業PR支援、キャッチコピーなど、さまざま...

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