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夫を「育てる」のではない。「よりよい生活を勝ち取る」ために闘う

出産後、募るイライラと、増える夫婦喧嘩。救ってくれたのは「夫を育てる」という考え方ではなく、自分にとって一番しっくりとくる選択をすることでした。

夫を「育てる」のではない。「よりよい生活を勝ち取る」ために闘う

息子が生まれてからの、この1年の間にした夫との夫婦喧嘩の数は、それまでふたりで暮らしていた7年間のトータル数を軽く上回っている。

妊娠中から、「産後は夫婦喧嘩が増える」というようなことをよく耳にしていたし、実際、子持ちの友人ばかりが参加しているグループラインには、彼女たちの配偶者への愚痴ばかりが送られてくるが、産前は「なぜそんなに怒っているのだろう」といつも疑問に思っていた。
夫婦なのだから、不満があればその都度、きちんと話し合い解決の手段を探ればいいと考えていたし、わたしはそれを実行もしていた。そもそも家のことは、互いに無理なく分担できて、ストレスなく生活していたので、喧嘩する理由もなかった。


ところが、いざ子どもが生まれた後になっては、子持ちの友人たちが言っていることが嫌というほど理解できるようになった。

自分でも信じられないくらい、夫の行動に腹が立ち、いちいち突っかからないと気が済まないのだ。書物などではそれを “ガルガル期”などと書いている。子どもを守ろうとする動物が持っている本能であり、ホルモンバランスの問題だから仕方ないとされている。

もちろん、そういうことがあることを否定はしない。けれども、わたしと夫が喧嘩になる場合においては、いちいち、きちんと理由があると思っている。ホルモンバランスが崩れていて、なんだかわからないけど、無性にイライラするわけではなく、むしろ発露するのは、筋道の通った怒りなのだ。

■夫の「電気を消せば?」のひと言。その態度に、怒りが爆発した

産後初めて夫にブチ切れたのは、電気のスイッチが原因だった。

その日は、夫の経営しているバーの定休日だった。

まだ息子が新生児のころ。だから家で焼肉でもして、ゆっくりしようという算段だった。ゆっくりといっても、息子が起きている限りはそうリラックスはできない。

時折、ぐずったりミルクを欲しがる息子の世話をしながら、それでもビールを飲みつつ焼肉を食べて、そしてようやくのこと、息子が眠そうなそぶりを見せたときのことだ。夫が言った「一度、電気、消せば?」と。その瞬間にわたしの怒りが爆発をした……という話をして、たぶん「わかる」と共感してくれる人と「なんでそんなことでキレるの?」と驚く人がいると思う。わたしも、産前は後者だった。


腹が立って仕方がない原因は明らかで、わたしが子育てのすべての負担を背負うのが当然だと思っているその態度だ。

そもそも、産後は、こなさなくてはならない家事の総量が、自分の容量をオーバーしている。これまでの家事に、育児が加わる上に、そのふたつを並行してしなくてはならず、育児と並行してだと、どんな簡単な家事でも途端にこなすのが難しくなる。洗濯物を干している最中でも皿を洗ってる途中でも、ぐずりだしたらすべて中断して、手を止め、「あと少しだったのに……」と後ろ髪をひかれながら子どもの相手をするしかない。

「少しくらい泣かせておけばいい」と考えられれば楽だけど、子どもの泣き声ほど、母親の神経を削るものはない。

子どもを背負って家事をするという手段もあるが、身体に負担がかかるのがつらい。そんなふうに、精神と体力を摩耗しながらやっているのに、「電気を消せば?」という発言に対する怒りは正当だと思うのだ。

大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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