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育児に専念する道を選んだ女性たちが、再び就労しやすい環境作りを【佐藤あつこ】

子育てに専念する道を選び、一度退職したお母さんたち。これからの時代、彼女たちが、自らの希望で再び、就労の機会を得るための、自治体独自の施策推進が求められている――。自らの経験を生かして支援を進めていきたい、と佐藤あつこさんが綴ります。

育児に専念する道を選んだ女性たちが、再び就労しやすい環境作りを【佐藤あつこ】

■着々と整う「子育てと仕事の両立」への環境

一昨年に「女性活躍推進法」が施行されてから、1年8カ月が経ちました。

301人以上の労働者を雇用する事業主は、優秀な人材の確保と企業の競争力向上につなげるため、自社の女性活躍に関する情報の公表を進めています。

一方で、国は「待機児童解消加速化プラン」を進めており、今年度末までに40万人分の保育の受け皿を確保します。

私の地元、東京都中央区は、今から9年前、平成20年度保育所定員数は1906名だったのに対し、今年度は4704名となりました。2798名も増員したのです。

しかし、今年4月の段階では、前年度を61名上回る待機児童数でした。

行政も保育園の整備に全力であたっていますが、作っても作っても保育園が満員になってしまうのです。

そのため、どうしても保育園への待機児童が発生し、我が子も生後7カ月で4カ月間待機した経験があります。

アベノミクス効果で景気が回復したことで、子どもを預けて働きたい人が増えたのは事実ですが、本当に子どもを預けて働きたいのか、仕事と家庭を両立させることができるのかについては、子育てとキャリア形成の両面からの板挟みとなり、難しい判断であると思います。

■たったふたつの選択肢、でも不安は尽きない妊婦時代

1.産休か育児休暇の後に元の職場に復帰する
2.いったん仕事を辞めて育児に専念する

選択肢はふたつだけですが、

「パパの育児参加してほしい」
「退職後は社会から閉ざされてしまうのでは?」
「経済的に苦しい」
「産後うつになったらどうしよう」
「仕事の勘が鈍るのでは?」
そもそも
「保育園へ入れるのか?」
なかには、「シングルマザーなので経済的に余裕がない」という方もいらっしゃいます。

かつては私も、キャリアか、子育てかは、人生で一番悩んだことと言っても過言ではありません。

結果、私は子育てに専念する道を選びました。

「なぜ、子育てに専念する道を選んだの?」とよく質問されますが、

「家事、育児を含めたあらゆることを自分で責任を持って行いたかった」

としか言いようがない……というか、家事・育児もこなしながら、仕事をする自信がなかったのと、すべてが中途半端になることがわかりきっていた。つまり、私のキャパシティをよくわかっていたから、単に「責任を負えるのは家庭と育児が精一杯」と悟ったのです。

それでも育児も家事も想像以上に大変でした。
休む間がない、そして経済的には結構苦しい。

でも、でも自分の責任で家庭を守り、子どもを見たかった。

もちろん経済的には本当に苦しかったです。なんとか切り詰めて、給料日前の銀行口座には「残高7000円」あればまし。

それから10年後の今、私は地方議員として働かせていただいています。

育児に専念した数年間に、子どもと毎日向き合えたからこそ今の私があります。当時悩んだこと、そして決断したことは、私にとっては正しかったと後になってわかりました。

■未就学児の子育ては時給1413円!?

育児に専念して、ある程度子育てが落ち着いた後で、再び仕事を探したいという価値観を、社会全体で尊重しなければなりません。

子を持つ保護者たちが、自らの希望に沿った形で就労し、男女がともに希望を持って子育てと仕事に取り組めることこそ、真の男女共同参画社会であると、私は思います。

今年2月、ソニー生命が行なった調査によると、家事を時給換算するといくらになりますか? との問いについて、

「未就学児の育児・世話」は1413円

との結果があります。特に未就学児の育児については、24時間365日続くので、年収にすると1238万円にもなります。

総務省発表の統計資料をもとに、課税対象所得の総額を、納税者数で除算した額を、平均所得とすると、たとえば、地元中央区の一昨年のひとり当たりの所得は618万円です。

育児とは、世代間をつなぐ尊い営みであり、原則的には未就学児を持つ保護者の子育てを賃金に換算することはできないと思います。しかし一例として、中央区の平均所得と比べ、「未就学児の育児」が平均所得の2倍であると評価しているのは、大変、興味深い結果であると思います。

■整えるべきは、育児が落ち着いた後の女性の再就職支援

生き方や働き方の価値観は多様化しています。一旦仕事を退職し、育児に専念する生き方を自ら選んだ保護者も尊重し、その方たちが希望する就労を再開できるよう、支援を進める必要があるでしょう。

実際に、私の専業主婦時代、周囲にいたお母さんたちは、驚くほど多才でした。社会に復帰しても十分にやっていける人たち。

たとえば育児の合間に、パソコンスキルの習得や、語学の定期的なブラッシュアップなどの講習会を定期的に行うことにより、再就職のきっかけとなると思います。

また、子育て中の保護者同士のコミュニケーションを通じて、その後のビジネスに通じるような機会づくりも推進すべきと思います。

これからの時代、一度退職したお母さんたちが、自らの希望で再び、就労の機会を得るための、自治体独自の施策推進が求められていると思います。そのことを私は自らの経験を生かして進めていきたいです。

佐藤 あつこ

地方議員であり、子育てママとして日々奮闘中。地元である東京都中央区では、自民党において戦後55年体制からたった2人目の女性議員(子育てママとしては唯一)である。 2017年は地方議員として活動しながら、子どもの「お受験...

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