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性の「当たり前」や「常識」という歪んだ概念と性教育

人間が生きていく上で切り離すことができない異性との性行為。子どもを作るためにも大切な営みだ。にも関わらず、日本では性教育がしっかりと行われていないために、不安を抱えながら性行為と向き合っている女性が多いように思う。今回はそんな性の当たり前や常識、日本の性教育の現状について掘り下げていく。

性の「当たり前」や「常識」という歪んだ概念と性教育

人間が生きていく上で切り離すことができない異性との性行為。

子どもを作るためにも必要な行為であるにも関わらず、日本では性教育がしっかりと行われていないために、不安を抱えながら性行為と向き合っている女性が多いように思う。

私も例に漏れず不安やわからないことでいっぱいだったし、28歳にして今もなお新しく知ることが多くある。

■核心を突かない、非実践的な日本の性教育

私が初めて性教育を受けたのは、小学5年生のとき。

中学受験のために通っていた学習塾の理科の授業である。教科書には男性器と女性器の断面図が描かれていた。

「男性の精子と女性の卵子が受精すると、新たな命が誕生します」

先生の説明はそれだけ。私は一体全体どうやって精子と卵子が出会って受精するのか想像できず「体から精子と卵子が飛び出て、空気中で出会うのだろうか?」という突拍子もない受精の様子を想像していた。

授業が終わってからも、どうやって精子と卵子が出会うのかわからないままでいた私は、家に帰り母親に質問した。

「精子と卵子はどこでどうやって出会うの?」

すると母親は「男性器を女性のおしっこするところらへんに入れるのよ」と、恥ずかしがりながらも具体的に説明してくれた。この時の母の説明がなければ、私はずっと精子と卵子の出会う場所について疑問を抱えたまま過ごしていたかもしれない。

その後も小学校や中学校の教科書で男性器や女性器の断面図を見ることはあっても、具体的な性行為の方法などについてはまったくと言っていいほど教えてもらうことはなかった。他の女性たちはどのように受精という現象について理解したのか、聞いてみたいほどだ。

今私たちの周りにある性に関する情報は、アダルトビデオ、手探りで手に入れた実体験の情報や、下世話な週刊誌、ネットの情報くらいである。

奥ゆかしさが美徳とされる日本であるが、教育の場で性教育は腫物を扱うかのよう。
できる限り核心に触れず、上辺だけしか教えない。コンビニには誰でも目のつくような場所にアダルト雑誌やマンガが置いてあるし、繁華街では堂々と夜のお店の客引きが行われているのに、だ。

(とくに男性の)性への欲望ばかりを刺激して、きちんとした性の知識を教育しないという矛盾したような環境に私たち日本人は置かれているように思う。学ぶべきことをしっかりと学ばずに、欲望に任せて動いてしまっては、取り返しのつかないことになる可能性があり、現にその犠牲に合ってしまった女性は多い。

■先進国とは思えない、ピルに対する歪んだ認識

ピルの認識についてもそうだ。

アメリカでは日本より20年も前にピルの導入が開始され、欧米諸国は30%ほど、とくにフランスなどではピルの普及率は41%ほど。しかし、現在の日本におけるピルの普及率はなんと1%程度という低さである(※1)。

※1:参照元『2013年度の国連人口部の統計』

日本では女性がピルを飲んでいたり、コンドームを携帯していると「やる気満々」「ビッチ」など風当たりの強い言葉が浴びせられる。ピルは女性自身が自分の体を守る上で大切なものであるというのに。

ピル自体には避妊効果だけでなく、生理痛やPMSの緩和という大きなメリットもあり、さらに卵巣がんや子宮頸がんリスクの低減につながるという効果も、医学的に証明されて来ている(卵巣癌の疫学を研究する「Collaborative Group on Epidemiological Studies of Ovarian Cancer」の報告で、詳細は『Lancet誌』2008年1月26日号に掲載されている)。

しかしそんな事実はほとんど知られていない。

性教育の中には盛り込まれていないからだ。私も最近子宮頸がん検診の際に、産婦人科の女医さんに聞いて初めて知った。そしてピルの普及率が低い日本では、卵巣がんの発症数は右肩上がりで上昇しているという現実もある。

「なんとなくこれがいい」「こういうのが当たり前」「ピルを飲んでいるなんてビッチだ」という性の歪んだ認識は危険性をはらんでいる。性行為は病気や死を招く可能性もあるほど、デリケートな問題だからだ。だからこそ噂や伝聞ではなく、日本はきちんとした性教育を行い、性のリテラシーをあげるべきである。

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中森 りほ

下北沢を愛するフリーライター、コラムニスト。女性向けウェブメディアでの編集・ライター経験を活かし、女性の生き方・働き方、恋愛や結婚など男女関係についてのコラムに加え、グルメメディアでの経験を活かしたグルメ記事、食レポを執筆中...

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