挑戦する人生は面白い。アメリカ永住権が当選した家族に聞く「移住の理由」
もしアメリカの永住権が得られるグリーンカードが当選したら、あなたはどうしますか? アメリカに移住すれば、今の生活がガラリと変化することは間違いありません。永住権抽選プログラムの当選を機に、家族4人で2年前にポートランドへやってきた高木家の挑戦とは。
米国永住権(グリーンカード)の抽選プログラムは、世界中の米国移住希望者の中から、コンピューターのランダムな抽選で、毎年5万人に永住ビザを発行するものです。移住者率の低い順に永住権が多く配分される仕組みのため、応募者の少ない地域ほど当選率が高いのだとか。
米国永住権の取得は、居住者にとってもハードルが高く、当選は一生に一度と言えるほどのビッグチャンス。けれど、学生の身軽な頃ならいざ知らず、キャリア、家族、友人、住宅、趣味など今の生活をすべて手放して、日本語も通じない、知り合いもいない場所での再スタートを決めるのは、それほど簡単なことではありません。
今回はそんな勇気ある決断をして、家族4人で移住した高木家のママ、裕子さんにお話を伺いました。
■軽い気持ちでの応募。「まさか当選しちゃうなんて!」
アメリカ移住を実行した高木さん一家
高木家は、裕子さんと夫、淳史さん、それに小学生の女の子がふたりの4人家族。グリーンカードの抽選プログラムに応募したきっかけは、旅行先のサンフランシスコで当選者に出会ったこと。
「応募してみれば? 俺、当選したよ」と聞いて、帰国後、楽しかった旅行の思い出を胸に軽い気持ちで応募。
「当たっちゃったらどうする?」などと夫婦で話しながらも、宝くじ同様、まさか本当に当選するとは思っていなかったというふたり。
当選者発表は、日本の夜中にスタート。すっかり眠っていた裕子さんは、「当たった! 当たっちゃったよ!」と大騒ぎの淳史さんに叩き起こされたそうです。
■移住を決断した理由
まさかの当選で、アメリカへ行くか、行かないかが現実の問題に。申請手続きなどにはタイムリミットもあり、迷っている余裕はありません。
当たるといいなあ、と思っていたとはいえ、市役所の環境課で20年以上働いた夫のキャリア、4月から小学校1年生になる長女と幼稚園の年長になる次女の学校、祖母から譲り受けて住み慣れた一軒家……引き止める要素が多いのも事実。
それでも彼らが移住に踏み切った理由は、意外にも子どもの存在でした。
「親として子どもの将来のために何か残してあげたいけれど、大した貯金もないし、この先も財産を残せるような見込みはない。だけどアメリカに行けば、子どもたちは少なくとも英語という盗まれないスキルを得ることができる。それが、自分たちが子どもにしてあげられることだと思った。子どもがいなくて夫婦ふたりだけだったら、もっと迷ったと思う」と裕子さん。
■決断してからの1年間
アメリカの小学校の新学期に合わせて、9月に移住することを決断してからは、ビザ申請にまつわる書類の作成や面接、予防接種などはもちろん、家を売るための片付けや手続き、引越し準備などで、慌しく過ぎていきます。
そんな中、裕子さんは、何かの役に立つかも、とアメリカの製菓道具・製菓材料会社ウィルトンのさまざまなデコレーションを身につけるメソッドコースに半年ほど通い、修了証を取得。
また、上司の「正気か? 考え直せ」という引き止めも振り切り、あっさり仕事を辞めた淳史さんは、1カ月ほど家族に先駆けて単身アメリカへ行き、日本語プログラムのある小学校の近くで引越し先を探しました。
子どもたちは学校を途中でやめることになりましたが、それまでに「アメリカに行くとこんな楽しいことがある、あんなこともできる」という話し方をしていたため、いざ出発する際も、涙や反対はなかったそうです。