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結婚=家庭的? 前編

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「案外、家庭的なんですね」という褒め言葉にはご用心。そういう言葉を口に出す人たちは善良な人とは限らないのです。

結婚=家庭的? 前編

「大きくなったら、およめさんになりたいです」という女の子を身近に感じたことは一度もなかった。将来の夢がお嫁さんて!そんなの、あたり前でしょ? 誰だって結婚するんだから。どんな仕事がしたいかって訊かれてるのに、質問の意味が分からないのかしら? 女も大人になったら何か職業を持つものだと自然に考えていたのだから先進的とも言えるが、人は結婚するものだと思いこんでいたという点で、私は彼女たちと何も変わらなかった。

60年代生まれの私の姉は、25歳の女が独身なのは後ろめたいという風潮の中で24歳11ヶ月で結婚して、仕事を辞めた。1988年のことだ。その12年後、2000年に私が28歳で結婚したとき、周囲からは早いねと言われた。

同じ年頃の同業者では既婚者は少数派だったので、自分でも意外だった。年齢を意識して結婚を決めたのではなく、3年半同棲していたので変化が欲しかったのと結婚の具体的手続きに対する好奇心から決めたのだが、周囲には思い切ったことに映ったようだ。

今や誰も25歳でオールドミスなどと言わないばかりか、30代の花嫁は当たり前だ。だから、私が28で結婚して働きながら30で最初の子どもを産んだと言うと「案外、家庭的なんですね」と言う人がいる。

辞書で引くと、家庭的なとは、家庭生活に向くさまを言うらしい。家族が集まり一緒に生活する場所への適応力が高いことを指すようだ。しかし結婚していたって家庭的でない人はいるだろう。実際、私はどちらかと言うと集団生活に不適応なたちである。

私がどんな人間かはどうでもいい。問題は、私のような押しの強い印象を他人に与える女が20代で結婚してほどなく子どもを産んだことを「案外」家庭的だと言い切る人の家庭観だ

彼らの言う家庭的な人とは、どうやら家族の喜ぶ顔を見るのが生き甲斐の善良な人のことらしい。愛する人のお世話をして、愛する人と一緒に過ごすのを何よりも優先する慈愛の人。無私の人。しかし家庭的でも性悪な女はいくらでもいる。家族にはマメに尽くすけど近所のうわさ話ばっかりかぎまわっているとか、毎朝5時起きでキャラ弁作るけど、ママ友に意地悪するとか。

家族との共同生活の質の向上に熱心であるということと善良であることを分けて考えると、一体どちらがより家庭的であることの証なのだろう。私にはどうも後者に重点が置かれているように思えてならない。家庭的=善意の人。

だから女の子たちはさもいいことを言っているかのような顔で「およめさんになりたいです」と言い、出たがり女が子どもを産むと、案外いい人なんだなと見直される。それを上手く利用してママイメージを前面に押し出せば、若気の至りのおイタは帳消しになる。

けど実際は、嫌なやつだって人を好きになるし、わがままな人物だって親になるのだ。家庭的かどうかは、結婚していることや子どもがいることとは関係ない。家族との共同生活に適しているか否かという生来の適性の問題だ。

褒め言葉として「案外、家庭的なんですね」と言う人には用心しなくてならない。彼らは、家庭を聖域だと信じて疑わない人だからだ。それがどれほどたちの悪いことか、知らない人たちなのである。

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小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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