7万円のブーツは高いかもしれない。でも、金額を下げなかった理由【ジルデコchihiRo×JUCO.対談#1】

7万円のブーツは高いかもしれない。でも、金額を下げなかった理由【ジルデコchihiRo×JUCO.対談#1】

ジャズバンド「JiLL-Decoy association」のボーカルを務めるchihiRoさんがホスト役となり、同じく「ものづくり」に携わる方を招き、ものづくり、クリエイティブをテーマにあれこれ語らう対談企画#1では、シューズブランド「JUCO.」のデザイナー、ジュコさんをお招きしました。


ジャズバンド「JiLL-Decoy association(以下、ジルデコ)」のボーカルを務めるchihiRoさんがホスト役となり、同じく「ものづくり」に携わる方を招き、ものづくり、クリエイティブをテーマにあれこれ語らう対談企画がスタート。

初回ゲストはシューズブランド「JUCO.」のデザイナー、ジュコさん。ブランドの立ち上げ年とジルデコメジャーデビュー年が同じ2006年。

10年以上に渡り、かたや音楽、かたやファッション、ジャンルは違えど、広義でクリエイターとして走り続けるふたり。いったいどんなものづくり論が飛び出すのでしょうか。

■方向性を変えるときは、自分の感性と経験を信じる

chihiRoさん(以下、chihiRo):ジュコちゃんとの出会いは、けっこう昔に遡るよね。

ジュコさん(以下、ジュコ):chihiRoちゃんの旦那さんが、私の大学時代の友人で、最初は「彼女さん」として知り合ったんだよね。

chihiRo:そうだった!

ジュコ:JUCO.を立ち上げて3年くらい経ったとき、展示会にふたりで来てくれて。今もJUCO.の定番商品として出してるサイドゴアブーツを、chihiRoちゃんが気に入ってくれたのが嬉しかったな。

chihiRo:夫が婚約指輪ならぬ、「婚約シューズ」としてプレゼントしてくれて(笑)。デザインがすごく凝ってて、一見重そうなんだけど、履くとびっくりするくらいラクで、歩きやすいんだよね。だから今も秋冬はヘビロテ。

ジュコ:嬉しいなぁ。ありがとう!

chihiRo:サイドゴアブーツは、今やJUCO.の秋冬コレクションの「顔」だよね。ただ、サイドゴアブーツを発表したとき、「なんか雰囲気が変わったね」って言われなかった?

ジュコ:やっぱり、既存のお客様の中には「今までのJUCO.とは違うね」と言う方もいれば、「いい感じになったね」と言う方もいた。サイドゴアブーツを発表したのは、ブランド立ち上げ5周年くらいのときで、ちょうどJUCO.にとって大きな転換期で。それまではデコレーションをたっぷり施した、女性っぽいデザインが多かったんだけど、メンズっぽいブーツを初めて作ってみたいと思ったの。

chihiRo:いろいろな声が挙がっても、最後は自分の感覚を信じて、毎年発表することにしたの?

ジュコ:私はすごく気に入ってたから。最初に発表した年は、そんなに人気がなかったけど、どんどん改良を重ねていって、毎年、少しずつ注文が増えていって。ソール部分にデザインの焦点を当てるようになったのも、その頃からだったな。

chihiRo:私の中ではJUCO.靴といえば、「ソールがすごく凝ってる」ってイメージが強くて。ソールにデザインを施すようになったきっかけはなんだったの?

ジュコ:靴のジャーナリストさんから、海外の展示会に出店しないかとお誘いをいただいたときに、「ソールのデザインをもう少し考えてみたらどう?」とアドバイスをいただいて。それまでは靴の上の部分(アッパー)にデザインを加えることしか考えてなかったから、最初は「ソールにデザイン? どういうこと?」と理解ができなかった。

chihiRo:すごい発想の転換だ(笑)。

ジュコ:でも、世に出ている靴を意識して見てみると、ゴツめなソールの靴もたくさんあって。観察していくうちに、ソールを主役にしたデザインもできるんじゃないか、と思うようになって、今のサイドゴアブーツにつながっていった感じかな。

JUCO.で展開するサイドゴアブーツの一種

■「履きやすい」と言われるのが何よりも嬉しい

chihiRo:自分が心からいいと思って生み出したものが、今ではお客様からも支持されて、定番人気商品になっていて。傍から見ると、それってすごく幸せなことだと思う。ジュコちゃんにとって、仕事をしていて一番幸せなとき、嬉しいときって、どういうとき?

ジュコ:「(履いてみたら)すごく履きやすい!」って言われたときかな。

chihiRo:さっき言っといて良かった(笑)。

ジュコ:嬉しかった(笑)。やっぱりデザインに凝っている分、初めて見た方は、「履きづらそう」と思うみたいで、「重たそう」「メンテナンスが大変そう」と感じる方もいるみたい。だけど、履きやすさはとくに大事にしているから、自分の足でとことん試して、「ここが当たる」「ずっと履いていると痛くなる」「ヒールが低いかも」とか、考えたり感じたりしたことを、一つひとつ改良ポイントとして、生産時に落とし込むようにしてて。

chihiRo:研究し尽くされてるんだよね。ジュコちゃんは自分の足を「一般的な日本人ぽい足」って言うじゃない。そういう、いわゆる日本人的な足の人だと、すごく心地よく履けるよね。私も同じタイプの足だから、しっくりくるんだろうと思う。

ジュコ:あと、「全体的なバランス」は考えてるかな。デコラティブだけどケアがちゃんとできるようにとか、ゴツく見えるけど軽い素材を使っているとか。chihiRoちゃんは音楽を作ってて、どういうときが一番幸せ?

chihiRo:例えば、シングルマザーの友人を思い浮かべて作った曲があるの。彼女を応援したい、彼女がもう一度恋ができるようになりますように、という思いを込めてて。その曲を聴いてくれた方から、「私もシングルマザーなんです。あの曲を聴いて、すごく元気が出ました」とか言われると、作って良かったなぁ、と心から幸せになる。顔の見える人に向けて作った曲が、それ以外の誰かの心に元気や勇気を与えているのがわかったときは、すごく嬉しいよね。

ジュコ:音楽を作るときも、バランス感覚が必要なのかなと思うんだけど、トレンドや流行をしっかり取り入れたもの、自分らしさをたっぷり出したもの、人に喜ばれるもの……どういうバランスを意識して作ってるの?

■自分が本当にいいと思うものが、「結果」にもつながる

chihiRo:そこは一番難しい問題かも(笑)。例えば、「もっとカラオケで盛り上がれる、みんなが楽しめるような曲作ってよ」とか言われると、うーん……って思えて、着手できない(笑)。ただ、聴いてくれる人がいない限り、表現する意味はないのかな、とは思う。ジュコちゃんも「こういう靴作ってよ」とか言われない?

ジュコ:4〜5年前までは、「セカンドライン(既存で展開しているラインよりも少し安価なライン)を作ってくれたら買いやすくなるのに」と言われてた。JUCO.の靴はパンプスで4万円台、ブーツだと7万円台くらいで、値段に見合った仕事はもちろんしているけど、かといって気軽に買える金額でもない。

chihiRo:たしかに。若いときだと、思いきらないと買えない金額かも。

ジュコ:私も20代の頃は、自分が売っている靴の値段と自分の生活水準がマッチしてないなと感じてた。友達から「ほしいけど高い」と言われて、「高いよね、私も高いと思うわ(笑)」みたいな。

chihiRo:だよね(笑)。

ジュコ:ただ、大勢の優秀な職人さんに頼んで、自分のやりたいことを全部詰め込んだ、妥協のない靴だから、私はまっとうな値付けだと信じて、今まで制作を続けてきた。セカンドラインを作ろうかと迷ったこともあるけど、結局一度も作らなかったのは、金額を下げたときに、自分が本当にやりたいことができなくなるから。自分がやりたいこと、心から納得してできることを地道に続けるほうが、良い結果につながると信じているんだよね。

chihiRo:私も同じような葛藤がある。2013年に5枚目のアルバム『ジルデコ5』で、日本レコード大賞の「優秀アルバム賞」を受賞したとき、ファンの方たちからは賛否両論が巻き起こって。

ジュコ:そんなに大きく方向性を変えたアルバムだったの?

chihiRo:思いっきりポップな方向に振った、挑戦的な1枚だったんだよね。そのぶん、既存のファンはガッカリした方も多かったようで、Twitterで「ジルデコ終わったな」「ジルデコどうしちゃったの」みたいな批判的な声がたくさん挙がってて、うーってなった。

ジュコ:それはつらいね。

chihiRo:もちろんこのアルバムが一番好きと言ってくれるファンもいるし、今聴くとすごいエネルギッシュなアルバムだって思うけど、批評も多かったし、レコ大をとってもセールスがすごく良かったわけでもない。それなら、自分たちの中から出てくる、これが本当にいいんじゃない、と思える曲を出そう――そう決断するきっかけになった出来事だったな。誰かからこうすれば、と言われても、結局は自分が本当にいいなと思って、前向きな気持ちで取り組めることじゃないとできないし、良いものを作れないなと思った。

(つづく)

取材協力 JUCO./ジュコ
「履くと特別な気持ちになる靴」をコンセプトにしたブランドJUCO. 。
2006年シューズブランド JUCO.設立。
半年に一度の展示会を中心に、洋服ブランドのシューズデザイン・制作から、撮影用の一点モノまで、さまざまな靴を手がける。
www.jucojuco.com

JUCO.展示会情報

‘18 Spring-Summer collection 「JUCO.のクツ展」
<東京展>
'17.10.10(Tue)-'17.10.15(Sun)
12:00-20:00(最終日のみ19:00まで)
場所/DAYS- gallery 東京都目黒区上目黒1-7-5

<アトリエ展>
'17.10.27(Fri)-'17.10.29(Sun)
12:00-19:00
場所/JUCO. design room 東京都台東区東浅草1-9-4

<大阪展>
'17.11.2(Thu)-'17.11.5(Sun)
11:00-19:00(最終日のみ17:00まで)
場所/Gallery Sasaki 大阪市中央区心斎橋筋1-6-4 佐々木ビル3F

ライブ「chihiRo’s Birthday Live 2017」情報

■公演日
2017年9月29日

■会場
[横浜]Motion Blue YOKOHAMA
横浜市中区新港一丁目1番2号 横浜赤レンガ倉庫2号館3F
http://www.motionblue.co.jp

■時間
18:30 開場
20:00 開演
1ステージ入れ替えなし

■料金
自由席5000円
BOX席20000円+シートチャージ5000円
(4名様までご利用可能)

■予約
電話予約 045-226-1919 ※11:00am〜9:00pm
Web予約 http://www.motionblue.co.jp ※公演当日の2:00pmまで
チケットぴあ 0570-02-9999
イープラス http://eplus.jp ※公演前日の6:00pmまで
ローソンチケット 店頭2日前まで(他3日前まで予約可)

構成/池田園子
写真/小林航平

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人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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