モテる女は「ボケを拾うスキル」を持っている【植村絵里×竹中功】
「DRESS」コラムニストとしてもおなじみの植村絵里さん、元よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役で、新刊『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』を上梓した竹中功さんに、「男女間のコミュニケーションを心地よくするには?」というテーマで対談していただきました。
お互い好きになって付き合ったり、結婚したりしたはずなのに、いつしか相手に対して、負の感情が募る……。どうしてあの人は理解してくれないのか。どうしてあの人と行き違うのか。そんな風にパートナーとのコミュニケーションに悩む女性は少なくないのでは。
最も身近な相手、ともいえるパートナーだからこそ、心地よいコミュニケーションを楽しめるのが理想。そこで今回、仕事柄、多くの男女とコミュニケーションを図ったり、悩みを聞いたりしてきた「DRESS」著者陣としてもおなじみ、起業家の植村絵里さんをアサイン。
元よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役で、新刊『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』を上梓した、「笑いのコミュニケーションのプロ」ともいえる竹中功さんとおふたりで対談していただきました。
現在パートナーがいる人もいない人も、気になる人や好きな人がいる人も、今はいない人も、明日からのコミュニケーションに役立てていただけるアイデアがいっぱいです。
■「自虐」で笑いをとるのが大阪流
植村さん(以下、植村):竹中さんのご著書『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』を拝読しました。自分をいじって、自虐して笑いをとるスキルがある。ボケをかましていじられることを快感だと思っている。そんな大阪人が羨ましいなって、東京で生まれ育った私は心から思いました。東京人には、それがなかなか難しいので。
竹中さん(以下、竹中):僕のひとりめの奥さん、東京の方でしたわ(笑)。
植村:いじられても真に受けちゃう傾向があると思います。例えば、着ている服を「バスローブみたいやなぁ」といじられたら、「バスローブじゃないんですけどっ!」みたいにカチンときちゃう(笑)。
竹中:バスローブ……おもろいですね。今度どっかで使わせてもらってもいいですか(笑)。
植村:どうぞ(笑)。ただ、男性は女性を怒らせたいわけじゃなくて、楽しい会話のキャッチボールをするつもりで言ってるんですよね。男女が心地よくコミュニケーションをとるには、女性側もわざとコケてあげるというか、ボケてあげるほうがいいんじゃないかなと思います。
竹中:西と東の違いなんでしょうけど、大阪だと、自分や自分の家族、兄弟などの身内を自虐のネタに使って、相手を笑わせるのも笑いのパターンのひとつ。対して東京は弱者を笑う文化がある、と僕は長年お笑い業界にいて思うんです。あとね、ボケる側に少々、技術がいるんですよね。漫才はボケとツッコミの役割があって、ツッコミは「ほんまいかいな」「アホ言いな」「ええ加減にしなさい!」とか、言うことだいたい決まってるから(笑)。
植村:ボケはツッコミを誘い出すクリエイティブな力が求められますよね。
竹中:不条理、不可解なことを言わないといけない点で、ボケっていうのは、なかなか難しいんですよ。もうひとつ、大阪や関西出身の男性が面白くなろうとがんばるのは、女性にモテたいから。ここで宮迫博之くんの名前出したら気の毒やけど、彼もそういう志向のある人ですよ、きっと。一方、東京だと面白い男だからといってモテるとは限らない(笑)。
■ボケるスキルはなくても、ボケを拾ってあげるスキルがあればいい
植村:わかります。ちなみに、大阪の女性はどんな感じですか?
竹中:男のボケに対し、ツッコミできる女の人はけっこういますよ。自虐できる女の人もいっぱいいる。その上をいくのは、積極的にボケて、人を笑わしにかかる女の人。「私、ゆりあんレトリィバァよりちょっとかわいいから吉本興業に入れてもらおうかな?」みたいなレベル(笑)。
植村:そういう面白い女性はモテるんでしょうか?
竹中:残念だけど、モテないでしょうね(笑)。
植村:男女どっちも面白かったらバトルになっちゃうか(笑)。
竹中:例えば、もう結婚されてますけど、山田花子ちゃんあたりがわかりやすい例なんじゃないですかね。吉本新喜劇でキャラクターとしてはかわいくて、周りから愛されてるけど、恋愛対象にはなりづらい、というか。あっ、そんなこと言ったら旦那さんに叱られますね。
植村:なるほど。自分がボケるんじゃなくて、男性のボケを拾ってあげるタイプの女性だと、恋愛対象として見られそうですね。
竹中:こっちがボケてもスルーする人を「ボケごろし」って言うんです。大阪の男は笑ってもらいたがり、大阪の女性は「笑わしてちょうだい」というスタンス。だからコミュニケーションがうまく成り立つ、というのもある。東京はね、ボケごろしだらけですよ(笑)。
植村:最近、そういうことありましたか?
竹中:東京の事務所に通っている頃、たまたま右耳を何かで引っかけて膿んでしまったんです。病院で切開してもらい、大きな絆創膏を貼って会社に出ると、デスクの女性から「竹中さんどうされたんですか!?」って聞かれて、「昨日渋谷の駅前で飛んできた大きなトンボに耳を噛まれてん」ってボケたら、「はぁ、大変ですねぇ」って普通に返されて……。
植村:あはは。日本一大きいトンボは渋谷にはいない(笑)。
竹中:で、さらにボケたんです。「ごめん間違った、カブトムシに噛まれてん!」って。そしたら、「はぁ、カブトムシでしたか?」って、事実かのように受け止められてしまう(笑)。せめて「それ、おもんないですよ」とツッコまれるほうがいいですよ。もっとわかりやすくボケなあかんわ、と反省しました(笑)。
■会話のなかで笑いをキャッチボールできるカップルは幸せ
植村:「竹中さん、大きなトンボに噛まれたって言ってるし、そういうこともあるかも」と、信じちゃうのが東京の女性かもしれません(笑)。
竹中:東京だと周りにボケる人、いないでしょ? 大阪だと子どもの頃からクラスに何人もボケる人がいて、もちろん家族にもボケるが最低ひとりはいますから。あとね、特徴として、みんな、人の話をあまり聞いてない。
植村:あれっ、私の話聞いてくれてます(笑)?
竹中:聞いてるフリしながら、次にはどこでおもろいこと言おうか、と狙ってますね、僕も含めてみんな。笑わせる材料を常に探して、ネタを貯金してる。今もそうですよ……ってウソですけどね(笑)。
植村:東京の男女で話すと、どっちもボケないから、終始真剣モードでお互いの話を聞いている。でも、大阪の男女だと、どっちも人の話をあまり聞いてないから、ケンカも起こりづらいのでは、って想像しました(笑)。
竹中:「面白くない発言をしたこと」がケンカのきっかけになることもありますよ(笑)。女性から「今のおもろないよ。前は一応笑ろたげたけど、実はおもろなかったから」みたいに言われて、過去にまで遡ってダメ出しされる、みたいな。
植村:つらい(笑)。ただ少なくとも、笑いをキャッチボールしようとする姿勢がお互いにあると、男女間のコミュニケーションが楽しく、仲が深まるのは間違いないと思います。
竹中:コミュニケーションの過程で笑いが生まれたら、距離が縮まる速度は速くなりますよね。笑い合える、笑らかし合う、という交換ができると、男女間のケンカは少なくなると思いますけどね。
植村:例えば、さんまさんみたいに、もう本当に可笑しそうに笑ってくれる人だと、対面してて幸せな気持ちになりますよね。器の大きさを感じて、安心して身をゆだねられる、というか。このボケにツッコんでみよう、と思えたり。いい笑い方をする人は男女問わずモテると思います。
(つづく)
Text/池田園子
『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』書籍情報
著者 竹中功さんプロフィール
1959年大阪市生まれ。同志社大学大学院総合政策科学修士課程修了。吉本興業入社後、宣伝広報室を立ち上げ、月刊誌『マンスリ―よしもと』初代編集長を務める。吉本総合芸能学院(よしもとNSC)の開校や、プロデューサーとして心斎橋筋2丁目劇場、なんばグランド花月などの開場、 映画『ナビィの恋』の製作に携わる。よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役を経て、 2015年7月退社。現在は企業の危機管理・コミュニケーションコンサルタントとして活躍。 株式会社モダンボーイズCOO。著書に『よい謝罪』(日経BP社)などがある。
『革命力:仕事と愛と運に恵まれる女性が考えている18のこと』書籍情報
著者 植村絵里さんプロフィール
1980年東京生まれ、聖心女子大学卒。クイックエステBeautiQ(ビュティック)創業者。 自己実現と出産育児を自由に選択でき、内面も外見も美しい女性があふれる社会作りをモットーに、28歳で起業し、日本初の女子大生ベビーシッターサービスを立ち上げる。300人以上の子供と200人以上の母親と関わる中で、まず母親や将来母親になる学生自身が、外見から自信をもち笑顔になることが社会の基盤に重要だと考え、2011年、美容サービスの価格や所要時間に不満をもつ、子育て中の母親、ビジネスウーマンのニーズをカタチにした全く新しいコンセプトのクイックエステBeautiQを創業する。著書に『私の離婚の理由: Embracing My Divorce』(Kindle)などがある。
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。