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フリーランスになる前に知っておきたいお金のお話<老後への備え編>

フリーランスという自由な働き方が気になる方もいるのでは? そんな方に知ってほしい「お金の話」シリーズは、今回で最終回。フリーランス歴13年目で、ファイナンシャルプランナーである筆者が、「フリーランスの老後への備え」についてお伝えします。

フリーランスになる前に知っておきたいお金のお話<老後への備え編>

「好きなこと」「得意なこと」を仕事にしているフリーランス。日々仕事に追われていると、意識するのは「今」か、長くても「5年後、10年後」くらいになってしまいがちです。

しかし、フリーランスは「老後」もしっかり意識しておく必要があります。なぜなら、会社員と違って、老後(仕事引退後)にもらえるお金が少ないから。

老後に備えてしっかり準備しておく必要があるのです。

フリーランスには「退職金」がない

会社員の友人と「老後、不安だよね~」という話をしたとします。「貯金もないしね~」「年金も少ないらしいしね~」「このままだと不安だ~」と、ひとしきり盛り上がったとしても、ちょっと待って!

フリーランスは会社員と比べて、実は老後の費用について圧倒的に違うことがあります。

それは、まず「退職金があるかないか」。

会社員で退職金が出ないケースもありますが、一般的な平均では、退職金は1500万円ほどと思っておくといいでしょう。

※会社の規模、勤続年数等により退職金は大きく異なります。中小企業の定年退職金は、東京都産業労働局労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情 平成28年版 モデル退職金」より、大学卒で60歳定年の場合、1138.9万円。一般的な会社の定年退職金は、日本経済団体連合会「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」より、大学卒で60歳定年の場合、約2374.2万円。

その退職金がフリーランスには「ない」わけです。会社員とは、老後のスタートラインが1000万円規模で違うことを頭に入れておきましょう。

フリーランスには「年金の上乗せ」がない

他にも会社員と違うお金があります。

それは、「年金の上乗せ」。

年金は「2階建て」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。(詳しくいうと3階もありますが、今回は1階と2階についてお伝えします)。

家をイメージしてみてください。家の1階は「国民年金」と呼ばれ、2階が「厚生年金」と呼ばれます。フリーランスには、この1階部分の「国民年金」しかないので、何も準備をしていなければ、老後は”平屋“住まいです。

一方で会社員は、1階の「国民年金」も2階の「厚生年金」も両方あります。つまり自動的に、老後は“2階建て”に住めます。会社員は、現役時代に、お給料からこの厚生年金のお金を毎月引かれて(しかも会社が半額負担!)いるので、知らず知らずのうちに老後への準備ができているわけです。

では、現在年金をもらっている人の受給平均額を見てみましょう。最近のデータでは、「国民年金」だけをもらっている人(フリーランスも当てはまります)の平均は、月額約5.1万円。一方で、「厚生年金」をもらっている人(会社員ですね)の平均は、約14.5万円(厚生労働省年金局「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。

その差は、月額で9.4万円。年間で考えると、9.4×12か月=112.8万円にものぼるのです。

この違いだけ見ても、「老後に向けてお金を準備しなきゃ!」と感じるのではないでしょうか。

フリーランスの老後資金は「仕組み化」して貯める

老後の準備といっても、忙しいフリーランスです。余計なことを考えず、気持ちや体力を仕事にしっかり注ぎたいものですよね。

そこで、老後の費用に向けて、“自動的に”貯めていく方法がおすすめです。しかも、“節税”になるというダブルでうれしい方法を選びましょう。

そのひとつが“イデコ(iDeCo)”という愛称で呼ばれる「個人型確定拠出年金」です。専用口座で、投資信託や定期預金などを月額5000円以上積み立てていくしくみ。(フリーランスは、最大で月に6万8000円まで積み立てられます)。

積み立てているお金は、全額所得控除(つまり、税金がかからない)なので、確定申告をすることで税金がオトクになります。また、運用中に出た利益には20.315%の税金がかかりません。年間で手数料がかかりますが、節税のメリットが大きいので、ぜひ調べてみてください。

ただし、そもそも老後資金を作るのが目的なので、60歳になるまでは原則的にお金を引き出せません。「手持ちの現金が足りないので、やっぱり解約して引き出したい」ということがあっては大変。(途中で掛け金の金額は変更できますが)老後まで長く続けられる金額で始めることをおすすめします。

ちなみに筆者も、2014年からイデコで毎月5万円を積み立てています。大きなお金で始めてしまったので最初はきついかな……と思いましたが、自動的に引かれる仕組みのため、ムダなお金を使わないようになり、すっかり慣れました(笑)。

イデコ以外に、「小規模企業共済」というものもあります。フリーランスが退職金を作るイメージで毎月積み立てていき、廃業時に一括や分割で受け取るしくみ。月に1000円から利用でき(月に最大7万円まで)、筆者はこちらも10年ほど積み立てています。イデコと同じく、掛け金が全額所得控除になるのが大きなメリットです。

フリーランスにとって大切なのは、「できるだけ長く」働くこと

「フリーランスは老後に向けて準備をしなきゃいけないのか、大変だ……」と、少々驚かせてしまったかもしれません。でもご安心ください、フリーランスには大きなメリットもあるのです。

それは「いつまでも」「いくらでも」稼げるということ。

会社員が働く年齢は、一般的には長くても65歳というケースが多いと思います。ですが、フリーランスなら、やる気があり、元気であれば、何歳までも働けます。

また会社員だと、給料を2倍、3倍にするのは至難のワザ。ですが、フリーランスなら自分次第でいくらでも増やす方法はあります。

日々「目の前の仕事」に追われがちなフリーランス。仕事の引退後のこともちょっと考えてみると、老後まで時間があるうちにじっくりと備えることができます。

老後への備えができれば、漠然とした不安が消え、安心感が生まれるはず。「目の前の仕事」に全力を注ぐことができ、さらにいい仕事ができるのではないでしょうか。

西山 美紀

ライター・コラムニスト・ファイナンシャルプランナー。出版社勤務後、2005年にライターとして独立。ファイナンシャルプランナーの資格を取得。女性誌やビジネス誌で女性の生き方などをテーマに取材執筆を行うほか、貯まる人・貯まらない...

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