1. DRESS [ドレス]トップ
  2. ライフスタイル
  3. 戦隊モノとお姫さまごっこ【子ども向け番組のジェンダーバイアス問題を考える #3】

戦隊モノとお姫さまごっこ【子ども向け番組のジェンダーバイアス問題を考える #3】

ジェンダーバイアスが問題になる子ども向け作品の中にも、多様性はあります。「できれば見せたくないもの」から子どもを遠ざけ、管理することよりも、いっそその多様性を楽しみ、また現実の様々なあり方も見せていけたら――。企業の人材戦略と同じく、子どもの世界でもキーワードは「ダイバーシティ」かもしれません。

戦隊モノとお姫さまごっこ【子ども向け番組のジェンダーバイアス問題を考える #3】

これまで「アニメの中の大人は『女性=ママ』」「セーラームーンとサッカー少女」と、アニメとジェンダーについて書きました。私自身は一部の「女の子向け」アニメから遠ざけられていた節がありますが、それによって友達との会話や遊びに入れなかった苦い記憶もあり、自分の子どもには「見るもの」をそこまで管理していませんでした。

ところが、4歳になっていくにつれて我が子の「男子化」はどんどん加速しています。ある日、それまで着ていたTシャツや靴下を「こんなのいやだ」「かっこいいのがいいの」と断固拒否するようになり、「どういうのがほしいの」と2日に渡って探し歩いた結果「こういうの!」と言ったのは戦隊モノの服でした。

そこから、歯止めなくウルトラマン、仮面ライダー、戦隊モノ……といわゆる「男の子もの」に走っていきます。AmazonプライムやTSUTAYAで過去のシリーズも見られるということがばれてしまったのもまずかったのですが、しかし、なんとまぁここまでハマるか、というくらい。

少し前に放映されていたシンケンジャーという戦隊モノを見て、レンジャーの顔に書いてある「火」「水」「天」といった漢字があっという間に読めるようになりました。意味もわからず「いっけんらくちゃく(一件落着)!」(シンケンジャーのセリフ)「ほんのうかくせい(本能覚醒)!」(ジュウオウジャーのセリフ)と四字熟語も連発しています。学校の勉強やドリル的なものより、よほど教育効果が高そうです……。

最近は、夫や男友達から「今がピークだから」となだめられ、どこにいても見えない敵と戦っている彼を見て「子どもの想像力ってすごいね……」という感じでやや遠い目で見守っています。

ただ、一応私も横目で見ていて、特に戦隊モノについて「まぁいいか」と思えるのは、作りそのものが「男の子向け」で、様々な固定概念はあるものの、ドラマの中のジェンダーバイアスは意外とステレオタイプ化されておらず、キャラクターに多様性があるという点です。

たとえば今年4月からのジュウオウジャーは、5人のレンジャーのうち2人が女の子で、しかも過去の戦隊モノにおそらく典型的な「ピンクと黄色」ではなく、「白とブルー」が女の子です。特にジュウオウシャークのセラちゃんはカッコいい感じの女の子で、私も好きです。

一時期、息子は私や妹に対して「女の子だからピンクね」と言うなど、何かと色と性別を結びつけてあてがってきました。でも「ジュウオウシャークだって女の子だけどブルーでしょ」と言うことで「女の子だってピンクが好きな子も嫌いな子もいる、青が好きな子もいる。女だからって勝手に決めないで」という私の主張に彼も納得してくれるようになった気がします。

今、多くの日本企業の課題は「ダイバーシティ」をいかに進めるかだったりするのですが、「女性活躍」と一口に言っても、女性の中にも多様性がある。戦隊モノは男の子のレンジャーたちもキャラが色々なのですが、もちろん男性の中にも多様性がある。それと同じで子どもたちにも、属性による規範に縛られずに「個」を発揮してほしいし、お友達の「個」を見てほしいなぁと思います。

時代による多様化もあると思います。「アナと雪の女王」が流行ったときに話題になりましたが、プリンセスものも、主人公のあり方が王子さまの助けを待つお姫さま像から変化してきています。ディズニーの「白雪姫」は典型的に女同士の対立や女性が無償の家事労働と外見で評価される構図を描いていて、私の最も嫌いなプリンセスものです。でも、2012年にクリステン・スチュアート主演で実写化された「スノーホワイト」の白雪姫はジャンヌ・ダルクばりのリーダーシップを発揮する主導者として描かれていました。

私の上司の娘さんは「美女と野獣」のベルがお気に入りらしいのですが、お姫さまごっこで「私、仕事行ってくるね!」と王子さまをいつもお城に置き去りにしているそうです。明らかに仕事に生き生きと出かけていくお母さまの影響だと思いますが、一口にお姫さまと言っても色々な解釈があり、いろいろなお姫さまがいていいんだなと私自身気づかされました。

「戦隊ものだから」「お姫様ものだから」と毛嫌いして遠ざける、何か特定のものを見せないようにするというよりも、むしろ多様なものを見ながら、その違いや番組自体が作られた背景を子どもと一緒に話してみるというのもありかもしれないなと感じています。

そしてそれ以上に現実が多様であることを伝えていくこともしていきたいです。子どもの触れる世界については頭を抱えることも多いのですが、なかなか親の思うとおりに育つものでもないですし、今のところの私の解はそんなところに落ち着きつつあります。

中野 円佳

女性活用ジャーナリスト/研究者。『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)著者。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。14年、育休中に立命館大学大学院先端総...

関連するキーワード

関連記事

Latest Article