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35歳、高齢出産。不安を乗り越えて見えてきた、仕事と私と子どものゆるやかな関係性

“好き”を仕事にした料理研究家のオガワチエコさん。著書や連載も数多く、華やかに活躍しているように見えるが、自身はこの働き方でいいのか……と悩みを抱えていた。そんなタイミングでの妊娠発覚。出産時は35歳となる。8ヶ月目を迎え、オガワさんが導き出した仕事との関わり方は――。

35歳、高齢出産。不安を乗り越えて見えてきた、仕事と私と子どものゆるやかな関係性

高齢出産。テレビなどで見ても、あまり現実味がなく、自分には関係のないことのように感じていた。子どもについては、いてもいいかな、いたほうがいいかな、とは思っていたけれど、特に何か準備していたわけでもなかった。

34歳で妊娠。わかった瞬間、素直に「うれしい」と思った。しかし、少し経って、出産時は35歳になっていて、自分が高齢出産にあたると気がついた。

自分ごととなり、よくよく調べてみると、高齢出産は、流産や胎児の先天異常などの可能性が高まるそうだ。重い気持ちになり、引きずられるように、どんどんと不安がよぎる。30代半ばを迎え、今の自分の仕事に対して、これからどう進めていくべきか模索し始めていた時期だった。

■ワークスタイルを変えようと模索していた矢先の妊娠発覚

百貨店の受付や派遣社員などの職を経て、ライターとしての活動を始めたのが今から10年前。料理学校を出ていたこともあり、しばらくしてフード関係の仕事を任されるように。料理研究家として今に至る。

ライター時代から、仕事につなげるため(という名目で)、交流会や食事会、飲み会などに参加する機会が多かった。それ以外の時間は、取材や撮影、執筆と、平日・休日・昼夜を問わず働いていた。しかし、好きな仕事だから決して苦ではなかった。だからこそ、時間を決められず、なんとなくずっと働くという生活でもあった。

そうなると、土日に連絡がつかない仕事相手に苛立ちを覚えることもあった。他にも、前夫と5日間、新婚旅行をしたときなどは、仕事をしないと落ち着かず、ソワソワしてしまう自分がいた。今の夫は土日休みのため、最初のうちは馴染めずぶつかることもあった。

この仕事スタイルでは、続かない。もっと他のやり方を考えなければ。と思うようになり、海外で働くことも視野に入れ、考えていた矢先で発覚した妊娠だった。

■精神的な落ち込みに苦しんだつわり時期

つわりの時期は、肉体面よりも、精神面のつらさが際立った。

妊娠に気づく前、打ち合わせの会食が多い時期だったため、飲酒したり、薬を飲んだりしていた。そこに加えての高齢出産。

仕事の面でも不安があった。

料理研究家として身につけるべき素養はまだまだあるのに、子どもができることで制限ができてしまうのではないか。
そもそも出産時期の仕事はどうする? そのときだけ誰かに変わってもらう、なんて都合のいいことはできそうにもない。自信のなさからくる考えなのかもしれないけれど、そんなことをしたら、そのまま自分の存在を忘れられてしまうのではないか。収入も激減するだろう。

などとあまりに思い詰め、心療内科を訪れたこともあった。

■仕事は「出産進行」で前倒し

苦しみながらも、私が導き出した解決策は、任されている連載を2~3ヶ月先まで進めておき、出産時とその後2ヶ月くらいはゆっくりできるようスケジュールを組んでおくことだ。年末進行やGW進行ならぬ、「出産進行」といったところだろう。

そうなると、出産前に秋冬のものを終わらせておく必要がある。時期に合わせた旬の食材の用意がやや困難だが、今も暑いなか、鍋料理やおせち料理を作っている。

■妊娠した、と軽々しく言えない

妊娠する前は、仕事関係者や友人になら、すぐ「妊娠したんです」と伝えられるのではないかと思っていた。

だが、いざ自分が妊娠してみると、そんなに軽々しく言えないことが身をもってわかった。流産の可能性もあるし、ちゃんと出産までたどりつけるかわからない。高齢出産であるなら尚更だ。

だから、飲み会などに誘われて断るにしても、しばらくは妊娠を理由にできなかった。風邪だと言って、はぐらかしたりしていた。着る服にしても、お腹のふくらみが目立たないような、ゆったりとしたものを選ぶようになった。

さらに私にはもうひとつ、妊娠を隠したいと思う個人的な事情があった。それは、ぽっちゃりとした体型であることだ。

痩せた人のお腹が大きくなってくると、周囲は「妊娠したんだ」と思うのが自然な反応。対して、ぽっちゃり体型の人のお腹が大きくなってきても、「また太ったんじゃないの」と口には出さずとも密かに思っているような気がする。だったら早く伝えたほうがいいじゃないかと思うかもしれないが、そこは複雑な女心。

そういった妊娠を隠すような言動が、お腹の子どもに申し訳ないなと思うこともある。そんなもどかしい日々が続いた。

■つわりが明け、気持ちも前向きに

つわり時期は不安に苛まれてばかりだったが、安定期に入ると、自然と気分は晴れ、悩んでいたことも気にならなくなった。

マタニティドレスの楽しみ方がわかるようになり、妊娠で変化した生活環境にも慣れてきた。

お酒を飲まなくなれば、自然と夜に出かけることもなくなる。早くベッドに入れば、当然のように朝起きる時間も早くなる。そこで大きな変化があった。夫にお弁当を作るようになったのだ。

これまでも作ってはいたが、毎日とはいかなかった。それが今では日課になっている。できたお弁当の写真を撮ってSNSにアップすると仕事にもつながった。

妊娠してから増えた連載は4つ。単発の仕事もあり、以前より充実している。

とはいえ、無理をしようと思ってもカラダが思うようにいかないこともあるので、以前より計画的に仕事をこなすようになった。

今までの仕事の進め方とは違う、健康的で建設的なやり方を、初めて身につけたように思う。

■妊娠中・出産後、親にはもっと甘えていい

そして現在。妊娠8ヶ月目を迎え、胃が苦しくなったり、動きが遅くなったりと、さらなる変化に戸惑うこともある。お腹が大きくなりすぎて脚が上がりにくく、スカートを履くのすら苦労する場面も。

マタニティヨガなどでの会話によると、今の時期も大変だが、産まれたら産まれたで、いっそう大変になるらしい。そんな話を聞くと、仕事の前倒し進行だけでは、考えが甘いのではないかという予感もある。

しかし、不安になることはもうない。とことん家族に頼ることに決めた。特に母親。

だって、今の状況からしても、お腹の中の子どもはこんなに私を頼っている。だからといって、迷惑だなんて感じたことはないし、もっと甘えてほしいとすら思う。妊娠してわかった。親とはきっとそういうものなのだと。

■妊娠して変化した人や仕事との関係性

以前の私は、多少無理をしていた。仕事に対して捨て身になりすぎていた部分もある。

妊娠前の、仕事と私、1対1の関係では、その状況は変わらなかったかもしれない。

しかし、妊娠し、仕事と私と子どもという関係性に変化した今初めて、仕事と自然体で向き合うことができた。もう、無理はしすぎない。

それは夫や家族、仕事関係者や社会との関係においても同じだった。理解と協力のおかげもあり、今、着々と出産に向かうことができている。

Text=オガワチエコ

料理研究家。ル・コルドン・ブルー、東京會舘クッキングスクールで料理と製菓を学ぶ。
大手百貨店の受付係として勤務しながら、仕事後や休日を利用して、和、伊、エスニック、仏菓子それぞれの専門店で調理技術を修得。
退職後、ブログを通して依頼された新聞でのエッセイ連載にてライターデビュー。
現在は、雑誌やテレビ、書籍等のレシピ作りや調理、スタイリング、料理コラムなどで活躍中。
著書に『彼の家に作りに行きたい!純愛ごはん』(セブン&アイ出版)、『おにぎらずの本』(泰文堂)、『スティックオープンサンドの本』(講談社)。

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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