【前を向いて生きるということ #6】次から次へと出てくる課題、どう立ち向かう?
30代半ばの働き盛りのときに、胆管がん(ステージ4)の宣告を受けた西口洋平さん。仕事と家庭を大事にしながら、自身と同じ「子どもを持つがん患者」をサポートするWebサービス「キャンサーペアレンツ」を立ち上げ、普及させる取り組みを行っています。「今、できること」と向き合い、行動する西口さんの不定期連載をお届けします。
#1(https://p-dress.jp/articles/1758)
#2(https://p-dress.jp/articles/1800)
#3(https://p-dress.jp/articles/1865)
#4(https://p-dress.jp/articles/1911)
#5(https://p-dress.jp/articles/2064)
「ステージ4の胆管がん」であることをカミングアウトした2016年4月1日。数多くの応援メッセージをいただいた。本当に勇気づけられたし、前を向いて生きていこうと、心から思えた。「私も同じ病気でした」という人も現れ、ぼくがまったく知らないところで、孤独な闘いをしていたんだと思うのと同時に、がん経験者であるということが強い仲間意識へとつながることがわかった。また、これも後にわかることになるのだが、自らをさらけ出して情報を発信する人の元に、人や情報が集まるという「カリスマの構造」なるものが存在する。それからは、自分だけのニーズではなく情報を発信し、同じ境遇の方のニーズを広く集めていくことになる。
最終プレゼンでは不採択となったものの、次にぼくたちが見据えていたのは、その会社内で開催される次のプレゼンだった。課題となるポイントは、「このサービスを利用することによって、がん患者の方の悩みが解消されるのか?」であった。当初、ぼく自身のニーズで始めた「がん患者同士のピアサポートサービス」が、ぼく以外の方に受け入れられるのか? それからは、がん患者の方の話を聞くために、積極的にサービスの告知をして、キャンサーペアレンツの会員を増やし、アクションする内容を見たり、アクセスを分析したり、アンケートをとってみたり、また、実際にお話をしてみたり。その活動に時間を費やした。
■急遽入院で、プレゼンは仲間に任せることに
そして、プレゼンの日。その日までいろんな準備を進めてきて、いよいよというときに、体調を崩して入院してしまう。ぼくの体にはステントといわれる金属の管が入っている。これは、腫瘍が胆管を圧迫してくるので、それを防ぐためのもの。圧迫されると、胆管が閉じてしまい、胆汁という消化液が流れなくなり、正常な消化ができないだけでなく、体に異変をもたらすことになる。ただ、このステントも万能ではなく、カスのようなものが溜まり、詰まってしまうことがある。
つまり、腫瘍からの圧迫から守れるものの、適宜メンテナンスが必要なのである。プレゼンがあるその週に、胆管ステントが詰まってしまい、胆管炎という症状で高熱が出て、急きょ入院となった。詰まったステントをキレイにする必要があるため、内視鏡でチューブを体の中に入れて、一定期間留置し、カスを体外に出していく。適宜、採血を行いながら、状態を見ていくのだが、最低でも1週間ほどの入院となる。
チームのメンバーにプレゼン内容をまとめてもらい、メールを確認し、フィードバックをし。病院のベッドの上で、自分の無力さを感じながらも、こうやって想いを同じくして、サポートしてくれる人がいることに、改めて感謝の気持ちを持つことができた。病気になったことは不幸だったかもしれないが、病気にならなければわからなかったことや、出会えなかった人がいたり、キャンサーペアレンツの活動を通じて様々な学びがあったり、日々感謝や喜びであふれている。かけがえのないものがある。そういったことが頭の中をかけ巡っていた。
■またまた新たな課題が見えてきた……
プレゼンの日を前に、メンバーの緊張を少しでも和らげるために、またがん情報サイトで書いていたブログ記事に掲載するために、緊張いっぱいのプレゼン直前の姿を写真で撮ってほしいと頼んだ。プレゼンターの緊張の表情、震える手、がくがくの足。かたや、一緒に参加したエンジニアのメンバーは、いつも通りのイケメンの爽やかなルックスを崩さず、平静を保つ。みたいな構成を考えて提案した。写真が送られてきた。
依頼した通りの写真だったが、その写真からは、意図的に作った緊張の表情なのか、本当の緊張なのかはわからないが、相応の緊張感が伝わってきた。前回同様、音声を録音してもらい、後送してもらった。声は冷静で、落ち着いたプレゼン。感触は悪くない。当初の課題は、「このサービスを利用することによって、がん患者の方の悩みが解消されるのか?」というものであったが、そこはクリアになったようだ。
しかし、すぐにまた次の課題が出てきた。それは、事業としてどう続けていくのか? というもの。ずっと考えてはいたものの、ここはやはり避けては通れないところ。はて、どうしたものか……。
(つづく)
Text=西口洋平
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