【前を向いて生きるということ #1】胆管がんステージ4だと告知された日

【前を向いて生きるということ #1】胆管がんステージ4だと告知された日

30代半ばの働き盛りのときに、胆管がん(ステージ4)の宣告を受けた西口洋平さん。仕事と家庭を大事にしながら、自身と同じ「子どもを持つがん患者」をサポートするWebサービス「キャンサーペアレンツ」を立ち上げました。「今、できること」と向き合い、行動する西口さんの不定期連載をお届けします。今回は第1回です。


はじめまして、DRESSでコラムを書かせていただくことになりました、西口洋平と申します。本題に入る前に、すこし自己紹介をさせてください。

妻と小学生の子どもを持つ、一般的な35歳男性です。「がん」であることを除いては。がんだと宣告されたとき、一番におぼえたのは孤独感でした。仲間がいない。話し相手がいない。同じ境遇の人が周りにいない。

それなら自分で仲間を募るサービスをつくろうと、ピア(仲間)サポートのWebサービス「キャンサーペアレンツ」を立ち上げました。

子どももいて、地元には親もいる。仕事やお金……心配は尽きません。そんなぼくみたいな働き盛り世代で、がんと闘う人たちをサポートしたい。そんな思いから、抗がん剤による治療、仕事と並行して、地道に活動を続けています。


サッカーが大好きでした。小中高大とずっとサッカー部に所属し、高校と大学ではキャプテンに選ばれるくらい、サッカーにすべてを捧げていた頃。陽の当たる前のサッカーがみるみるうちに一大スポーツになるのを目の当たりにしました。

就活時、小さなチームのほうが自分のがんばりが見てもらえて、大きな役割を与えてもらえるチャンスもあると考えこれから伸びそうなベンチャー企業に入ろうと決めていた(親は反対だったと思います)。このように、サッカーとの出会いが、生活や思想、選択基準を変え、ぼくの人生をつくり、今に至るまでの財産になっています。

■入社14年、結婚7年。仕事も家庭も順調だった

2000年に設立されたばかりの、社員50名(当時)ほどの会社に入社したのが2002年。あの頃は知名度の低い会社でしたが、不思議と不安感はなくやってやるぞ!という気持ちで満ち溢れていました。

勤務場所は、面接したビルとは違う、お世辞にもキレイとはいえない雑居ビル。全員が銀色のカギを持ち、ドアノブにカギを差し込んで出入りします。トイレは水洗ではなく、ラクガキだらけ。夜も終電まで、いや、泊まりもあたりまえ(もちろん今はそんなことは全くないですが)。

想像を超える環境に、心が折れそうになり、泣いたこともしばしば。でも、なにくそ根性で、歯を食いしばり、なんとか結果を出すことに集中し、1年目の最後の四半期で社長賞を(社内で最も活躍した人に贈られる賞)いただいたことも。中堅社員になった今まで、たくさんの経験を積ませていただきました。

そんなこんなで、働き詰めの毎日で現在に至るわけですが、家族のことにもすこし触れておきます。妻との出会いは、仕事にも少し余裕の出てきた社会人3年目の頃。先輩に誘われるがまま参加した合コンでした。

案の定、仕事で大遅刻し、到着したときには、女性陣が帰り支度の最中。全員の電話番号を聞いたところで、そのままサヨナラ。その後の男性陣の二次会で、無理やり電話をさせられてつながったのが、今の妻というわけで。これも縁だったのでしょう。

大阪から東京への転勤を経て、28歳の誕生日に結婚し、翌年には娘を授かりました。お互い実家が関西にあるため、子育てでは苦労しながら、近所の方の協力を受けてなんとかやってきました。すこしずつ手が離れてきて、今は小学校2年生。あれよあれよという間に、もうお姉ちゃんです。

■手術はできない――闘病生活の始まり

仕事も家庭も充実し、まさにこれから、というときのことでした。2014年夏頃から体調を崩し、体重が落ち、2015年のはじめに「黄疸(おうだん)」という症状が出たことがきっかけで、急きょ検査入院。さまざまな検査を通じて告知された病名は「胆管がん」でした。

頭が真っ白になったのを覚えています。すべての感情がなくなった感覚。放心状態。理解できない。何も考えられない。五感が機能しなくなったかのよう――。

医師の話が終わり、ぼくが最初に取った行動は、母親への電話でした。入院することも言っていませんでしたし、平日昼間に電話があったことで、驚いていました。入院していることを話すところまでは普通に話せたものの、病名を伝えた後で、言葉が出なくなり、止めていた感情が急に溢れ出し、階段に座りこみ、肩を揺らして涙を流しました。

数分の沈黙。電話の向こうでも、泣いている様子が伝わってきました。この電話で初めて、ぼく自身「自分ががんである」と理解できたのではないかと思います。

その後、すぐに手術をしましょうと提案されて、手術をしたものの、米粒ほどの転移が腹膜やリンパ節に見つかり、「手術は不可能」とされました。ステージは4段階でもっとも進んだ「4」の胆管がんで、そこから闘病生活が始まります。

(つづく)

Text=西口洋平

1979年大阪生まれの36歳。神戸商科大学(現:兵庫県立大学)卒業。一児(7歳)の父であり、両親も健在。
2015年のはじめ、ステージ4の胆管がんであると告知され、そのときに強烈に感じた孤独感。仲間がいない。話し相手がいない。同じ境遇の人が周りにいない。それなら自分でやってやろうと、ピア(仲間)サポートのWebサービス「キャンサーペアレンツ」を2016年4月に立ち上げる。
現在も抗がん剤による治療を続けながら、仕事と並行して、精力的にこの活動を続けている。

■キャンサーペアレンツ:http://www.cancer-parents.com
※Twitter:@cancer_parents
※Facebook:https://www.facebook.com/cancerparentscom

この記事のライター

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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