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許容できるリスクは、リスクではない。私が会社をつくるまで~起業に至る道

ビザスク・端羽英子さんの全5回に渡る短期連載も最終回。「やらない後悔よりは、やる後悔」をモットーに過ごしている端羽英子さんが、起業当時の思いや未来について綴ります。

許容できるリスクは、リスクではない。私が会社をつくるまで~起業に至る道

前回の連載は、留学で気づいた「Japanese Working Mother」という私らしい強みから。

最近は、ママ起業家という言葉を見聞きすることが多くなりました。私もシングルマザーになったのちに、ビザスクを起業しています。起業すると周囲に伝えたときには、「子どももいるのに、不安定な道を選んで大丈夫?」と声をかけていただくこともありました。しかし、「やらない後悔よりは、やる後悔」を選んできたつもりです。連載最終回は、「留学後に働き始めて~ビザスクの起業」までを振り返ります。

■素直に「助けて!」と言えば、子育てと仕事は両立できた

留学を終えて日本に戻ってきて、ユニゾン・キャピタルという投資ファンドで働き始めました。これまでの金融機関と事業会社で学んだ知識や経験を活かすことができ、仕事はとても面白かったです。忙しい毎日でしたが、時間よりも成果で評価される、シングルマザーとしては働きやすい環境だったと思います。早く帰る必要があるときは、家に持ち帰って仕事をする。必要があるときは、土曜日でも出勤するなど、子どもとの時間も大切にしながら、仕事にもしっかり向き合えるように工夫しました。

当時は子どもが保育園生だったので、東京で働いていた姉や学生だった姪、熊本の母、ベビーシッターさんの力も借りていました。家族には本当に助けてもらったと思います。子どもが寝る時間までに帰れるときは、早めに帰って寝る前に本を読んであげる。寝る時間に間に合わないときは、周りにサポートをお願いして仕事をするという毎日でした。

「自分が働かなければ、家計が成り立たない」という割り切りもあったので、母としても完璧でいなきゃというプレッシャーからは自然と解放されました。子どもには、「月曜日から木曜日はパパで、金曜日から日曜日まではママだよ。ママだと思ったら足りないかもしれないけれど、パパだと思ったらこんなにイクメンなパパはいないよ!」なんて話もしながら一緒に成長してきたという感覚です。

■「もっと起業家精神を持って」に後押しされた

しかし、小学校3年生くらいになったときに、子どもが「学童に行きたくない」とこぼすようになりました。サポートしてくれていた姪の1年間留学も決まり、転職して5年ほど経ち、私自身もこれからどうしようかなと思っていた時期です。もともと起業はしたいと思っていたので、いろいろなことが重なり「チャレンジするなら今しかない。最後のタイミングかもしれない」と思ったのが34歳のときです。

実は前職で「分析はよくできるけれどリーダーシップが足りない。もっと起業家精神を持とう」というフィードバックを受けて、それが最後に背中を押してくれた一言になりました。このままでは嫌だな、もっと成長したい、起業家精神がないというなら、起業してみよう! という気持ちです。どのようなビジネスをするかを決める前に、会社に退職の意向を伝えました。当時の上司は「えー、本当に?」と大変驚いた様子でしたが、とても応援してくれました。

■誰もが自分では気づいていない価値を持っている

退職を決めた後に、リサーチをし、経験者にお話もお伺いする中で、ビジネスモデルを考えていきました。そして、辿り着いたのが、ビザスクのスポットコンサル(個々人のビジネス知見と、新規事業や業務改善など新しい知識やノウハウの習得をしたい企業が対面/電話で1時間からつながるサービス)です。「ライフイベントによるキャリアの中断があったからこそ、自分の強みを作りたいと」と思っていたこと、留学時の「Young Japanese Working Mother」というキーワードを見つけてもらった経験から、自分が気づいていない価値を実は誰もが持っているから、ニーズに出会って強みが発見されるようなサービスを作りたいなと思いました。そこに、調査/コンサルティングへのニーズを掛け合わせました。

2012年末にβ版をローンチして丸3年が経ちます。"世界中の知見をつなぐ" というビジョンのもとにエンジニア、デザイナー、事業開発などさまざまなバックグラウンドのメンバーが集まってきてくれています。時短で働くワーキングマザーもいれば、タンザニアや与論島でリモートワークをしてくれているメンバーもいて、ビザスクの強みもパワーアップしてきました。日本では約3万名(2017年2月時点)の方にアドバイザーとして登録・活躍いただいていますが、今後は海外での展開もスピードアップしていく予定です。

■そのリスクを許せるなら、挑戦しない理由はない

何か新しいことを始めるときや、変化のときにはリスクを感じることもあります。しかし、一番悪いケースでも許容できるリスクだったら、チャレンジしない理由はないのではないでしょうか。私の場合は、最悪事業が立ち上がらなかったら、また就職すればいい。その間にお給料が出ないことと、事業の立ち上げにかかった費用が返ってこないことだけがリスクだな。許容できるな、と。で、そもそも事業がうまくいくと思っているからやるわけで、「やばい、アップサイドしかない」と思いました(笑)。許容できるリスクは、リスクではない。「やらない後悔よりは、やる後悔」といつも思っています。

もちろん、落ち込むときもありますが、それは目標やなりたいイメージに届かないから。そんなときは、目標設定が足りなかったのか、やり方が間違っていたのか、努力が足りなかったのか3つのうちのどれだろう? と自分に問いかけてみると、解決できる問題しかそこにないので、前に進む方法が見えて、勇気が湧いてくると思います。

これまで起業に至るまでの道の連載(全5回)を読んでくださり、どうもありがとうございました。皆さんがご自身の強みを見つけ、活かしながら充実した毎日を過ごされますように。私もがんばります!

■端羽英子さんのプロフィール

ビジネスのことなら何でも1時間〜聞けるスポットコンサルティング「ビザスク」の代表取締役。「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに、日々奮闘中。東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資にて企業ファイナンス、日本ロレアルにてヘレナルビンスタインの経営管理を経験し、マサチューセッツ工科大学にてMBAを取得。ユニゾン・キャピタルにて企業投資に5年間携わった後、起業。中学生の娘の母でもある。

全連載は「起業に至る道」から。

端羽 英子

ビジネスのことなら何でも1時間〜聞けるスポットコンサルティング「ビザスク」の代表取締役。「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに、日々奮闘中。東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資にて企業ファイナンス、日本ロレア...

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