Text=坂下由貴子
1984年7月14日京都生まれ。
慶応義塾大学文学部卒業後、株式会社サイバーエージェント入社。
「Ameba」の広報を8年間勤めたのち、結婚を機に独立。
現在、スタートアップの広報や、東京カレンダーWEB編集部で企画立案及び、ライティングを手掛けながら、週5日は奥さま業に専念。
独立するまで 独立してから #4 坂下由貴子(31歳) 東京での仕事と地方都市に住む彼との結婚。両立のジレンマを克服するために。
仕事に結婚、出産、子育て……女性の人生は選択肢であふれている。どれも犠牲にしたくない。すべて手に入れたい。そう願ったとき、雇われない働き方(=独立)は、女性の強い味方になってくれると思う、と坂下さんは語ります。
今回、DRESS WEB編集長の池田園子さんから、お声がけいただき、まことに恐縮ながら、筆を取らせていただきました。
この連載にふさわしいかわかりませんが、私は独立を夢見ていたわけでも、今後事業を拡大させていきたいという立派な意気込みもありません。望む人生に働き方を最適化した結果、自分にとって気持ちの良いスタイルが、独立という結果だったのだと思います。
独立するまでのことを振り返ってみます。
2007年に慶応義塾大学文学部を卒業後、サイバーエージェントに入社した私。
サイバーエージェントでは、「Ameba」というサービスのPRを担当し、入社から退職までの8年間、広報職一筋で仕事に従事してきました。
サイバーエージェントでの仕事は、非常に刺激的でした。サービス担当者と二人三脚で、ネタを考え、話題を作っていき、それがテレビや新聞、雑誌、WEBニュースに取り上げられ、サービスのポテンシャルとの相乗効果でどんどん大きくなっていく。その過程は、とても面白く興奮に満ちたものでした。上司にも恵まれ、常にホームランを狙って、既視感のない面白いものをと考えていました。
マネジメントしづらいけど、ハマると爆発する性質を称して「テトリスの棒」と言われていたそう。そんな特性をわかってうまく転がしてくれた上司のおかげで、モチベーション高く保て、2013年の社員総会では、ベストスタッフ賞を受賞。
■東京での仕事も、地方都市に住む彼との結婚生活も、全部諦めたくない
そんな私が30歳のとき「結婚」という岐路に差しかかります。
詳しい話は割愛しますが、結婚を考えた男性は、とある地方都市在住の方でした。手前味噌ながら、ハンサムで背も高い、歌もうまくて、運動真剣も抜群。根拠はないのに自信過剰な私が初めて出会った「遺伝子的にすべて負けている」と感じる男性でした。
そんな彼から、銀座の宝飾品店である日突然のプロポーズ。
喜びYESと言ったものの、冷静になり、はたと現実的な問題に直面しました。
彼は、お父さまが代表を務める組織を継がなければならない人。ということは、その土地から離れられないということ。
仕事は? 東京での生活はどうする……?
仕事を続けるのであれば、彼との結婚を諦めなければいけないし、結婚するのであれば、刺激的な仕事と東京での生活を手放さなければいけない。
何かを得れば何かを失うと言いますが、私は何一つ諦めたくなかったのです。
数ヶ月悩み、仕事も彼との結婚もどちらも実現させるために選んだのが、独立という道でした。遠隔で仕事をしながら、週1回東京での会議に参加。それ以外の時間は、愛する旦那さまの元で奥さま業を全うするといういわゆるデュアルライフ。
会社員時代、広報業務に加え、企画力と文章力が強みとなっていた私は、ありがたいことに、信頼してくださった方々からお仕事を発注していただけました。
■インターネット時代だから実現する新しい働き方
現在は、東京カレンダーWEB編集部での企画立案及び原稿作成や、前職でつながりのあったスタートアップのPR兼企画など数社とお取引をしています。週1回の仕事ながら会社員時代と同等以上の売上を出せているのは、「やりたいことだけ」に集中し、ストレスを限りなくゼロに、パフォーマンスを高めることだけに集中できているからかもしれません。
会社員をやめること、東京を離れることで失うこともありますが、それでも、インターネットが普及した現代なら、不可能なことは何一つないはず。外から東京の街を見ながら、週1回その感覚を確かめるように東京で働くことで、より鮮明に東京の輪郭も実態もはっきりすることも学びました。
冒頭にもお伝えした通り、私は独立を心から望んでいたわけでも、この先事業を拡大させていきたいという思いもありません。働き方を自分が望む人生に最適化した結果、自分にとって気持ちの良いスタイルが、独立という結果だったのだと思います。
■独立は女性の人生にとって心強い味方
女性の20代、30代は、分かれ道の連続で、自分の生き方や覚悟を問われる曲がり方が試練かと思うほど訪れます。地方移住にとどまらず、結婚や出産、子育てなど、ライフイベントに応じて、仕事に対する感覚も刻々と変化していくはずです。
そうなったとき、会社に依存しない自分だけの武器があれば、何かを諦めることなく社会と関われるオリジナルのライフスタイルを築くことができると思っています。
もちろん、仕事は代替可能なものだから、あっという間に、不要になるかもしれませんが、自分の得意分野でスタイルを確立し「あいつじゃなきゃダメ」と言われるスキルを身につけ、研鑽し続けることで、不測の事態でも好転できるハンドリング力がつき、人生をより自分の思うように楽しむことができるのだと信じています。
そういう意味で、「独立」は女性の人生にとって、何よりも大きな味方になってくれるもの。私はそう考えています。
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