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北条かやさん×荒川和久さん対談・前編 相手がいなくても「結婚したい」——根底にあるのは社会から認められたい気持ち?

毎日のように報道される日本の晩婚化、少子化問題。一方で、理想の結婚相手を求め婚活に明け暮れる女性たち……。どうしてこんなに結婚が難しい時代になってしまったのだろう。

北条かやさん×荒川和久さん対談・前編 相手がいなくても「結婚したい」——根底にあるのは社会から認められたい気持ち?

そもそも私たちは、本当に結婚したいのだろうか。結婚や恋愛を社会学的に考察するライターの北条かやさんと、博報堂「ソロ男(だん)プロジェクト」のリーダー・荒川和久さんに、その真実を語っていただきました。

■「あえて結婚しない」道を選ぶ人もいる


北条かやさん(以下、北):荒川さんの本『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』を読んで、私の周りにもソロ男いるなあ、って思いました。正社員でそこそこ高収入を得ていて、彼女もいて、日々が充実していて。今後の生活に不安がないからか、結婚願望も薄いっていう。

荒川和久さん(以下、荒):女性の読者から、よく共感されます(笑)。ちゃんと働いていて一人暮らしで、自由・自立・自給を求める男、つまりかなり面倒くさいタイプがソロ男なんです。でも北条さんの新刊『本当は結婚したくないのだ症候群』を読んで、女性側も同じように面倒くさそうだな、と感じました。

北:私は本の中で、結婚はしたいけど理想の相手とじゃなければしたくない、でも子どもは欲しい、だけど自由も欲しい……みたいな、迷える女性たちについて考察してきました。中にはソロ男的な女性、ソロ女もたくさんいます。

荒:結婚観については、大きく2通りの人間がいると思うんですよ。「結婚はするものだ」と最初から決めている人と、「別にしなくてもいい」と思っている人。

北:私も生の声を聞くまでは、結婚したがっている女性が圧倒的に多いのではないか? と予測していたんですけど、実際にインタビューしてみると半々くらいなんですよね。

荒:そうすると、ひとくくりに“既婚と未婚”って単純に分けてしまうのはちょっと違うのかな、と思って。仮に結婚しない人生だとしても、結婚しなくてもいい人からすれば未婚というよりは“独身”なだけで、結婚できなかった人とは価値観が違うはずなんです。

北:わかります。私、“未婚”っていう言葉が好きじゃなくて。未だ結婚していない、できていないとは限らないですからね。自主的に「独身」を選択している人もいるので。

荒:日本の結婚の歴史を遡ると、江戸時代の町民は結婚にとらわれず自由に生きていて、誰の子かわからない子どもを長屋の住人たちで育てるようなケースも普通にあったんです。だから日本人の中には、結婚にとらわれない感性を持つ人がいても不思議はない。

北:江戸の町は、独身男性で溢れていたとも聞きますよね。それが明治以降の法律や戦後の民法改正で、だんだんと核家族をつくることが基本になって……。その延長で結婚にこだわらない人が世間から理解されず、未だに生きづらさを感じているという現状があります。

■結婚でライフステージを変えたいと夢見る女性たち

荒:一方で、「相手はいないけど結婚はしたい」女性も多い印象がある。あなたたちは一体誰と結婚したいんだ!? って僕、ずっと疑問だったんですよ。でも北条さんの本の中に「結婚したいという人たちは、本当は結婚したいというより、社会から認められたいのではないか」という一節を見つけて、ハッとしたんです。

北:女性が特定の相手がいなくても「結婚したい」と言うのは、今の状況を打破したいとか、生まれ変わりたいからという理由が多い気がしています。もちろんそこには、生物学的なタイムリミットがあるのも関係しているんでしょうけど。

荒:結婚というものが、ライフステージを変えてくれるものだと信じているってことですか?

北:そうですね。たとえばあるCAさんは、新卒から8年働いて仕事も遊びも十分経験してきたので、これからは夫や子どものケアをする人生にシフトしたい、そのために結婚したい、と話していました。だけど、この人のためにライフステージを変えてもいいと思える異性がいないという。

荒:なるほどね。男性の場合、具体的な対象としての相手がいないと、あまり結婚について考え悩まないと思うんですよ。そう考えると、女性のほうがむしろ、結婚と恋愛を別物だと考えている人が多い気がします。

北:恋人はともかく、結婚相手には年収600万円以上を望む、みたいな?

荒:そうそう。好きだけでは結婚生活はうまくいかない、とか。だから結婚願望もあって性格も悪くない独身男性が、「俺じゃだめなんだ」と、どんどん結婚から離脱してソロ男化していく。

北:ただ年収に関しては、データが一人歩きしているところもあるんです。相手に年収600万以上を求めているのは、大半が40代の未婚女性というデータがあって。自分より稼いでいる人がいいという理由なんでしょうね。もちろん、そういうデータの中には、サンプリングが偏っているものもあります。でもそこだけ切り取ると、男性が怖く感じるのもわかります。

荒:だって、今時のソロ男が真っ先に言われるのが「結婚できないのは貧乏だからでしょ」ですよ(苦笑)。「結婚しない」とか言っているけど、本当は貧乏だから「結婚できない」んでしょ、と。でもソロ男が結婚しない理由は、必ずしもそこじゃないんですよ。

北:あ、女性もその鏡のようなことを言われます。「結婚相手がいない」とか言っているけど、相手に年収いくら以上を求めるからできないんでしょ、と。結婚にこだわりのない女性にとっては、相手の年収がいくらかなんて、関係ないんですけどね。

■実は相性がいい「ソロ男×ソロ女」カップル

荒:そもそもソロ男が結婚に魅力を感じない理由って、お金と時間を自分のために消費したい欲求が強いからなんです。

北:そうですね、自由に生きたいという欲求があって。

荒:逆に言うと、お金と時間を自由に使う余地さえ与えれば、ソロ男も結婚してもいいかな、と思い始めるケースが多いんです。そうすると、僕はソロ男とソロ女って意外と合うんじゃないか、と思っていて。

北:考え方も生き方も似ていますしね。

荒:そう。互いに自立していて、財布も別で、干渉し合わないで、趣味もそれぞれあって。協力すべきところはすればいい。子どもができたらできたで、ソロ男が育児にのめり込む可能性だってあると思います。彼らは趣味的な達成欲求につながることに対しては、力を発揮するタイプですから。

北:子育てによって達成欲求が満たされる……、興味深い意見ですね。女性にとっては、社会的な承認欲求の達成にもつながりますし。相性がいいっていうのはよくわかります。ただ、私は彼らに「結婚するべきだ」と言いたいわけではなくて……。

荒:僕も、無理に結婚という形にこだわる必要はないと思いますよ。

北:近い意見でホッとしました(笑)。もともと結婚に興味がない人たちを型にはめようとすると、未婚率はますます上がる気がします。ソロ男とソロ女は相性がいいとは思いますが、「だから結婚すれば?」とは言いたくない。そこがちょっと、個人的なジレンマだったりするんですけど。

構成=波多野友子

北条かやさん
86年金沢生まれ。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修了。
著書に『こじらせ女子の日常』『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。Web媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆のほか、
TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
Twitter @kaya_hojoFBページ、ブログ「コスプレで女やってますけど」

荒川和久さん
博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー
自動車・飲料・ビール・食品・流通・通販等幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手掛ける。2014年「博報堂ソロ男プロジェクト」を立ち上げた。著書に『結婚しない男たち~増え続ける未婚男性ソロ男のリアル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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