問題化問題

結婚を問題化することをやめたほうがスッキリします。

問題化問題

「最近、大臣になられたそうで」
DRESSが創刊されてから、反応を窺うようにそう聞かれることが増えた。
結婚問題担当相ってなにやるの?と。

 私には、結婚が「問題」なのかどうかは分からない。結婚とか子どもとか介護とか、女性が直面する家族との関係をひっくるめて、誰かと生きて行くことを考えるのなら分かるのだけれど、結婚だけを取り出すのは、なんだかピンと来ないのだ。

 でも、DRESSの読者にとってそれは大きな問題なのです、ということで結婚問題担当相ということになった。

 だけど……やっぱりモヤモヤする。

 愛され女子でありたいという思いの強い20代なら、「結婚=成功、幸せ」という価値観に縛られている女性も多いかもしれない。でも、仕事をして40代を迎える女性はもっと視野が広いし、手にしている選択肢も多い。結婚するかしないかを問題にすること自体の不自由さと偏狭さに気付いている人がほとんどではないだろうか。

 もちろんそれとは別に、経済的な理由で結婚を諦めざるを得なかったり、雇用が不安定で結婚が望めない人がたくさんいるという現状はある。それはもちろん国を挙げて取り組むべき大問題だ。まさに社会問題。

 しかしこれは「DRESS女の内閣」という企画。読者の関心事を語るのが大臣たちのお仕事である。
 となると、結婚しているかどうかを問題にするほど、もう子どもじゃないんですけど、って言いたくなる。

 先日、髪を切っているときに読んだ35歳をターゲットにしたある女性誌では「女・妻・母」という3つの役割をあげて、ファッションを3カテゴリー同時に提示するという企画をしていた。その雑誌に限らず、いまは同じ雑誌を独身も既婚者も子持ちも読んでいる。同じ歳でも人ぞれぞれの顔があり、同じ人でも場所ごとに違う顔があり、どれが正解なんて決めなくてもいいし、決めようともしていないというのが実情なんじゃないだろうか。

 結婚情報誌とか育児雑誌じゃない限り、何を面白いと思うかとか、素敵と思うかとか、この雑誌のこの感じが好きって言うのは、既婚とか経産婦とか、そんなことで括られることじゃない。

 結婚したら既婚者としか話が合わなくなるとか、子どもを産んだら産んでない人とは価値観が違ってしまうとか、何でも陣地争いが好きな人がいるけど、奥様ソサエティーで疲弊したり、ママ友付き合いで地獄を見ている人もいっぱいいる。人を繋げるのは立場じゃなくて、ウマが合うかどうかなのだ、やっぱり。

 その共感ポイントがなんなのかを、もう結婚とか出産とかで線引きして語るのをやめないか。これが好き、これが大事、で人が集う場所は豊かな世界。

 そこで、「結婚するかどうかが問題だ」という思い込みは余計なお世話だと提唱する大臣として、新しい肩書きを考えた。

結婚問題化問題担当大臣

どうだ。長いか。

自分では、これでようやくスッキリした心持ちである。
 

小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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