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私も、あなたも、わがままでいい。伊藤野枝が求めた自由 2/3

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■生きづらい道徳なんていらない

「在来の道徳の中でも一番婦人を苦しめたものは貞操であるらしい」

『「青鞜」女性解放論集』「貞操についての雑感」伊藤野枝著,岩波文庫,1991年,250頁

20歳の伊藤野枝が平塚らいてうから『青鞜』の編集を引き継いだ頃に掲載した、『貞操についての雑感』の冒頭である。女性の貞操はこうあるべきだと抑圧されていた当時の社会に衝撃を与えたことは想像に容易いが、今読んでも考えさせられる。

男性だけが浮気をしてよくて女性がしてはいけないのは不平等だ、女性の人格を無視しているではないか――姦通罪への抗議がメインだと思うが、この論考の中で私がいいなと思うのは、単に「女性も浮気しろ」「自由が正義だ」と言っているわけではない点である。

どうしても貧乏でパンを引き換えに貞操を失うとしたら、悲しいだろうけれど仕方がない。苦しいくらいなら貞操という概念なんて考えなくていい。私たちの生活から、呪いを解いていこう。そういう、正しさでは語りきれない優しさに満ちているのだ。

「道徳は必ずしも真理ばかりではないと思います、神様は決してあんな道徳などという窮屈なものは造りはなさらなかったのだと思います。都合次第にできたものなら都合次第に破壊してもさしつかえのないものだと思います。人間の本性を殺すようなもしくは無視するような道徳はどしどし壊してもいいと思います」

『定本 伊藤野枝全集』第二巻「S先生に」伊藤野枝著,79頁

家庭や結婚制度、貞操など、誰かの都合で作られた道徳で、生きづらくなるのなら。好きな人を好きと言えず、セックスできず、思ったことを自由に言えないのなら。そんな道徳は無視したって、壊したっていい。生きづらい決まりなんていらない。そんな彼女の言い分に、私は共感する。いつの時代だって道徳は、私たちの生きやすさのためにあってほしいと思う。

■私も、あなたも、わがままでいい

伊藤野枝のわがままっぷりは、すごい。結婚騒動で親族といろいろとトラブルがあったにもかかわらず、出産のときは実家に帰って世話をしてもらっている。お金や食べ物も必要であれば、「ください」と言う。えっ、こんなにわがままでいいのだろうか……と思うのだけれど、いいのかもしれない。ひとまずお願いしてみる。断られたら断られたで、それでいい。

大杉との間に初めての子どもが産まれると、その報告と合わせて、妹に「少しでいいのでマツタケを送ってください」という旨の手紙を出している。がめついと眉をひそめる人もいるだろうけれど、私はこれを読んで、ああ、こういう人が幸せになるんだろうなあ、と思ってしまった。

でも、彼女はただわがままなだけではない。他人のわがままも気にしないし、お願いされたら協力できることは協力している。大杉の仲間でお金に困った人がいたらお金を渡したり、活動仲間と一緒に暮らしたり、料理を作ってあげたり。そもそも大杉と親密になるきっかけになったのは、彼らの書物が官憲(役人)の目につかないように家に置いてあげたことだった。政府の言論弾圧が厳しい時代、既存国家への批判が書かれた書物は、国に発見されるとすぐに発禁処分になっていた。

「皆は私のことをわがままだとか手前勝手だとかいってますけれども本当に考えてみると私よりも、周囲の人たちの方がよほどわがままです。私は自分がわがままだといわれるくらいに自分の思うことをずんずんやる代りに人のわがままの邪魔はしません。私のわがままと他人のわがままが衝突した時は別として、でなければ他の人のわがままを軽蔑したり邪魔したりはしません。

自分のわがままを尊敬するように他人のわがままも認めます。けれども世間にはそういうことを考えている人はそんなにありません。皆誰も彼も自分はしたい放題なことをして他人にはなるべく思うとおりなことはさせまいとします」

『定本 伊藤野枝全集』第二巻「従妹に」伊藤野枝著,61頁

私も、あなたも、わがままでいい。自分の欲求に優しく、他人の欲求にも優しく。私は、自由というのは、そういうことじゃないかと思っている。正義を振りかざして他人の自由を制限するのではなく、「あなたはそうしたいのね、ご自由に」と認めていく彼女の考え方が好きだ。

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雨あがりの少女

セックスは舞台。いつも世界の背景に溶けてる地味な私でも、ベッドの上では主役になれる。日々ツイッターでセックス&オナニーポエムを書いてます。

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