家事をしない夫、息子への影響は? 男の子の親3人の本音座談会
https://p-dress.jp/articles/9462我が子には「男らしく」に縛られず、のびのび育ってほしい。でも、親が気づかずに男らしさを求めてしまったり、前時代的な男らしさに影響されてしまったりすることもあるかもしれません。今まさに子育て中の3人に、普段気をつけていることや不安に思っていることを聞きました。文末には専門家からのアドバイスも。全3回の座談会です。
「家事をしない夫、息子への影響は?(第1回)」「男の子は青じゃなきゃダメなの?(第2回)」に続き、男の子を育てている3人が、普段気をつけていることや子育ての悩みを本音で語ります。今回のテーマは「セックスや恋愛のこと、どう伝える?」。全3回の座談会、最終回です。
▼第1回、第2回はこちら
家事をしない夫、息子への影響は? 男の子の親3人の本音座談会
https://p-dress.jp/articles/9462我が子には「男らしく」に縛られず、のびのび育ってほしい。でも、親が気づかずに男らしさを求めてしまったり、前時代的な男らしさに影響されてしまったりすることもあるかもしれません。今まさに子育て中の3人に、普段気をつけていることや不安に思っていることを聞きました。文末には専門家からのアドバイスも。全3回の座談会です。
息子にピンクを着せたら保育園で怒られた。男の子は青じゃなきゃダメなの?【男の子の親座談会】
https://p-dress.jp/articles/9471「家事をしない夫、息子への影響は?(第1回)」に続き、男の子を育てるお母さん、お父さんに今考えていることを話してもらいました。全3回の座談会、第2回です。
――今は、スマホやパソコンで手軽にいろんな情報が入手できます。極端なケースだと、性について親や学校から教わる前に、無修正のポルノ動画を見てしまうことも。
薗部:たとえば息子のスマホでそういうものを見られない設定にしても、友達のスマホで見るかもしれないし。情報を全部シャットダウンするのは難しいので、自分で良し悪しを判断できるように教えたいですね。「自分はどうして生まれたの?」と聞かれて「空から降ってきた」とは言えないから、こちらも教え方を考えないと。
田中:薗部さんはご両親から教えてもらいました?
薗部:うちは全然ですね。小学校に上がる前とかは結婚したら自然に子どもができるのかなと思っていて、僕はひとりっ子だから「両親が1回結婚して、僕が生まれたのかな」って。「友達の家はふたり兄弟だから、2回結婚したのかな……?」とか、子どもだからそんな認識でした。
――恋愛の話は親としました?
薗部:全然。全部事後報告です。付き合ったよとか、結婚決めたよとか。途中経過は報告しなかった。
飯田:うちもそう。それが私の中ではやりづらくて、もう少し話したかったけど、うちの親もオープンな感じじゃないし、私も薗部さんと同じひとりっ子で……。ひとりっ子って難しいですよね。
薗部:何か言ったときに、両親と自分で2対1になっちゃうんですよね。ちょっと言ったらあれこれ聞かれるから、誰にも言わずにあたためとく。
飯田:そうそう。おもしろく突っ込んでくれるような母だったり、怒ってくれるような父だったらいいけど、両親ともに、上手に会話に盛り込めるタイプではなかったから。
でも事後報告って、自分が子どもにされたらさみしい。子どもはそうならないように、パパとママは仲良しだよっていうのを見せて生活してます。
田中:うちの場合は真逆かも。両親はすごく仲良くて今でもラブラブ。オープンな家だったので、付き合った彼氏はいつも両親に会わせてました。
私、弟、妹の3人きょうだいなんですけど、弟が年頃になったら、「あいつが自分の部屋に引きこもっているときは勝手にドアを開けるのはダメだぞ」って。そういうことをしているから、プライベートには干渉するなって。
田中「恋愛や性についてオープンに話せる家で育ちました」
――すごい。
田中:実家は田舎で、ヤンキーとか多い地域。中学生で妊娠してしまって親に言わずに中絶する子とかもいたんですよね。それは悲しいじゃないですか。うちの場合は、「自分の体は大事なんだから、自分のことをちゃんと好きって思ってくれる人としかセックスしちゃいけない」って教育があったと思います。
飯田:具体的にどんな風に伝えてくれたんだろう?
田中:小さい頃はきょうだい3人で寝ていたんですけど、そこにお母さんが来て、ひとりずつに「大好きだよ~」って言っておでこにチューしてくれる。どんなに怒られても、おやすみのときはそうしてくれました。
――前回出てきた「I love you」だ。いいですね!
田中:あとは、「3人ともみんな大事だよ」って言い続けてくれた。真ん中の長男にだけ果物の一番おいしいところをあげるとか、一番広い部屋は弟とか、男子を優先する傾向はあったんですけど、「みんな大事」って言葉にしてくれてたのはありがたかったですね。
飯田:情報の入手が昔より早まってるかもというのが一番のネック。私自身は女子校出身で、中学のときに保健体育の授業で性教育があったんです。授業の最後に先生が「あなたを大切に思っている人は絶対に避妊してくれるからね」って言ったのが強烈に頭の中に残っていて。それだけは息子たちに伝えようと思ってます。あとは言う時期がいつがいいのか……。
田中:早く教えすぎて、(性行動が)早まっても困るし……。
飯田:昔、親戚のおばが言ってたのは、「男の子の親の心配は一個しかない。けんかで絡まれることだけ」。でも今は、リベンジポルノとか、スマホで大人のトラブルに巻き込まれるとか、そういう心配もある。周りの親御さんや地域のコミュニティとも連携できればいいなと思っています。
薗部:子どもが男の子でも女の子でも、夫婦の関係が大事だと思います。田中さんがおっしゃったみたいに、「自分も相手も大事なんだから、自分の都合で相手を傷つけるなんてダメだ」っていう、そこのところ。
普段から夫婦が会話をして、お互いをねぎらって尊重している姿を見せることは大事なんじゃないかな。とはいえ、ときどきけんかしてしまうことはあるけど。
飯田:うちも基本的には仲の良い姿を見せているけど、けんかしちゃうこともあります。そうすると長男がやってきて、「仲直りして」「仲直りのチューは?」って聞いてくる。
田中:かわいい(笑)。
飯田:仲の良い状態をつくって、平和に過ごして、「ありがとう。ごめんなさい。大好き。愛してるよ。ハグ。チュッチュ」みたいな、その日々の積み重ねは今の時点ではできてるかな。
――さっき、「どうやって生まれたの?」の話がありましたが、皆さん、お子さんに聞かれたことはありますか?
飯田:子どもが疑問に思ったときに伝えるのが良いっていう話でいうと、うちは若干チャンスを逃したんですよね。「赤ちゃんはなんで生まれるの? どこから生まれるの?」って聞かれたときに、「パパとママが仲良くしたからだよ。……おへそかな?」って言ってしまって。
飯田「『赤ちゃんはどうして生まれるの?』と聞かれて、つい言葉を濁してしまいました」
田中:うちは、長女が保育園で「この間、パパとママがパンツ履かないで寝てたんだよ」みたいなことを言ったことがあって(笑)。「結婚したらパンツを履かなくてもいい生活になるんだよ」と伝えたんですけど、恥ずかしかったですね……。
――保育園で言ったってことは、子ども心に何か引っかかるものがあったんでしょうね。
田中:私が子どものときも、3人きょうだいみんなそれぞれ、親のそういう現場を目撃したことがあって。うちはオープンだったからもはやギャグだったんですけど、目にしてショックを受けてしまう子もいるでしょうね。
薗部:たしかに、そのあたりの個人差は大きそう。
――みなさんのお話を聞いて、性教育ももちろん大事。でも子どもが思春期になってからいきなり性教育や恋愛の話は無理だから、それまでに充分にコミュニケーションやスキンシップを取っておくことが必要なのかなと思いました。
薗部:変にタブー意識を持たせてもいけないと思うし、抑圧しちゃいけないことや、接し方で気をつけた方がいいことがあれば知りたいですね。無自覚で抑圧しちゃっていたら怖いし。
飯田:そうですね。私はやっぱり、特に「いつ教えたらいいか」を知りたいと思いました。
――今日はありがとうございました!
「自分の心と身体を大切にすること」「相手の心と身体を尊重し、対等な関係性を築けるようにすること」が性教育の第一歩。その延長線上に、恋愛やセックスがあるのだと思います。
ニューヨークでは、保育園で「下着や水着で覆われている部分は、プライベートパーツ」「誰かが見ようとしたり触ろうとしたら、Noって言おう」と教えていましたし、それを伝えるための絵本もありました。
「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」「セックスってなに?」という質問が出てきたら、専門家が監修した絵本や動画や教材を使って、親子で会話をしながら一緒に学べると良いと思います。性に関してタブー視せずに話し合う、会話をするという経験自体が、思春期以降の親子関係の礎にもなると思うからです。
有名大学の男子学生によるレイプや性犯罪が立て続けに表面化し、話題になりました。性行為は「合意」「同意」に基づくものだったと主張していましたが、そもそも「合意」「同意」をどのように解釈していたのか、気になります。
セクシャル・コンセント(性的同意)に関する教育を受ける機会がないままに、男性はAVや漫画のようなフィクションを通じて「嫌よ嫌よも好きのうち」だと思い込み、女性もはっきりと「No」と意思表示をすることをためらう傾向があるのだとすれば、大問題です。
今、 大学生が「性的同意」のハンドブックを作り、キャンパスで自主的にワークショップを実施する動きが広がっています。親も、こうした若い人たちの取組みを知り、応援し、広げていきたいものです。
最も重要でありながら、今の性教育で最も欠けているのは、相手の意思と身体を尊重することの大切さ、コミュニケーションの取り方を教えることだからです。
ジェンダー専門家。
1971年生まれ。上智大学卒業。米国コロンビア大学国際公共政策大学院で国際関係修士号を取得後、国連開発画(UNDP)に入局。世界各地で女性のための教育、雇用・起業支援、政治参加の推進などのプロジェクトを手がけた。大学院在学中に長男を国連在職中に長女を出産し、子連れ出張も多数経験。
現在は、フリーの専門家として、国際機関、政府関係機関、NGOなどを通じて、国内外で幅広く活動中。グローバル人材の育成にも携わり、全国の大学、高校で講義や講演を行なうと同時に、PTA会長や学校評議員等を務めるなど、地域での教育活動にも取り組んでいる。
著書『女の子の幸福論 もっと輝く、明日からの生き方』(講談社)、『エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力』(経済界)。
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。