家事をしない夫、息子への影響は? 男の子の親3人の本音座談会
https://p-dress.jp/articles/9462我が子には「男らしく」に縛られず、のびのび育ってほしい。でも、親が気づかずに男らしさを求めてしまったり、前時代的な男らしさに影響されてしまったりすることもあるかもしれません。今まさに子育て中の3人に、普段気をつけていることや不安に思っていることを聞きました。文末には専門家からのアドバイスも。全3回の座談会です。
「家事をしない夫、息子への影響は?(第1回)」に続き、男の子を育てるお母さん、お父さんに今考えていることを話してもらいました。全3回の座談会、第2回です。
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家事をしない夫、息子への影響は? 男の子の親3人の本音座談会
https://p-dress.jp/articles/9462我が子には「男らしく」に縛られず、のびのび育ってほしい。でも、親が気づかずに男らしさを求めてしまったり、前時代的な男らしさに影響されてしまったりすることもあるかもしれません。今まさに子育て中の3人に、普段気をつけていることや不安に思っていることを聞きました。文末には専門家からのアドバイスも。全3回の座談会です。
――最近だと、「男の子だから泣いちゃダメ」とか「女の子だからおしとやかにしなさい」のような、性差を意識したしつけは減っているのかなと思います。
田中:その点、うちはちょっと心配なところがあって……。主人が長男だけ厳しくしつけるんです。「男が泣くのは許さない」みたいな。長女は幼稚園から私立へ行かせるけど、長男は切磋琢磨させたいから公立だと言っていて。その差がすごくて。
田中「主人が長男にだけ厳しくするのが心配」
――男の子は厳しくしなきゃという考え方があるんでしょうか?
田中:「自分は甘やかされて育ってきたから、自分みたいな甘っちょろい人間にしたくない」って思っているみたい。「自分が“男らしく”育ちたかった」という思いがあるのかも……。
飯田:もうちょっと大きくなったら、本人もきょうだいも「なんで?」って思いそう。
田中:「男だから」って言うのだろうな。それを心配しています。私も「やめてよ」って何度も言っているんだけれど。
薗部:田中さんは「息子にこう育ってほしい」というのはあるんですか?
田中:息子は亭主関白じゃなく育ってほしいし、時代に合っている男の子になってほしい。ママ友と話していても、大体旦那さんたちすごく優しくて、料理したりお風呂掃除もしたりしてくれている。自分の息子もそうなってほしいし、娘にはそういう人と結婚してほしいな。
飯田:息子さんには、パパがいないところで「泣いてもいいんだよ」って言ったり?
田中:かわいそうだから、パパがいないところで息子ばかりかわいがっちゃう。とはいえ主人も週末ごとにいろんなところに連れて行ってくれたり、子どもと遊ぶのは楽しくやってくれているかな。
――ところで、男の子だからランドセルは黒、女の子は赤みたいな分け方も最近はあまり聞かないですよね。色の問題についてはどうでしょう?
田中:どうだろう。薗部さんは子どもの頃、何色が好きでした?
薗部:僕はピンクが好きな子どもだったんです。でも小さい頃はなかなか言えなくて、社会人になってからやっとピンクのネクタイを選んだら、今度は社長から「ネクタイはピンクじゃダメだ」と怒られて。
一同:えー!
薗部:「男がピンクなんて」って考え方の社長だったんですよね。
飯田:半年ほど前、長男の保育園でTシャツを作ったとき、黄緑色とピンクのどちらかを選べたんですね。どっちを選ぶかな~と思ってたら、普通にピンクを選んでました。他の男の子はほとんど黄緑にしてたけど、長男に似合うのはピンクと思ってたから、良かったなって思いました。
田中:普段からいろんな色を選ぶタイプ?
飯田:そうですね。いろんな色を着る。塗り絵もいろんな色を細かく使い分けたり、キラキラが入っているのが好きだったり。カラフルな色使いが多い東南アジアで過ごしていたことが影響しているのかも。
お友達も優しいというか理解があって、たとえば息子が大好きな犬のぬいぐるみを園に持って行っても、みんな「ふーん、好きなんだね」くらいでからかわれたりしない。他の男の子は怪獣とかが好きで、息子のぬいぐるみはかわいらしい感じなんですけど、それを息子もお友達も気にしてなくて、そういう環境で良かったと思います。
田中:うちの場合、双子の服は収納の利便性もあって、基本的には女の子はピンク、男の子は青。でも一回、ふたりともピンクっぽい肌着を着せたら、保育園の先生に怒られたんです。「自分は男の子だと思ってるのに、ピンクは嫌だと思いますよ」って。
薗部:びっくり。それは園によっても違うでしょうね。息子が通ってる園はそういうことはないです。できるだけ性差を感じさせないために、子どもはみんな名前を“さん付け”で統一、先生は名字を“さん付け”で統一。帽子の色も全員エンジ色で統一。
田中:うちの園も、“ちゃん付け”で統一です。普段は結構ゆるいので、そのときはちょっと驚きましたね。
あと、ママ友が男の子に「男の子なんだから◯◯ちゃん(女の子)に優しくしなさい」って言ってるのを聞くことがあります。子ども自身はあまり考えてないと思うんだけど。
飯田:女の子の方がわんぱくだったりすることもあるのに。
田中:子どもの頃だと、どうしても女の子の方が言葉が達者だと思うんですよね。男の子が女の子に圧倒されるところがあるんじゃないかな……と思っていて、主人は「息子は公立」って言っているけれど、私は小学校から私立の男子校に行かせたい。そのほうがのびのびできるんじゃないかと思うんです。
――飯田さんは、東南アジアの子育てで日本と違うなと思うことはありましたか?
飯田:先生たちの愛情表現が日本と違うかな。めいっぱいギューってしてくれて、「I love you」「I’m proud of you」って日常的に言ってくれる。その延長で、子どももお友達にそうやって言うようになって。
飯田「東南アジアで子どもが通っていた保育園では、先生が子どもたちに『I love you』と普通に言います」
薗部:いい言葉だな~。
飯田:自己肯定感が育まれるようにそういうフレーズがある。子どものことを大切に思ってくれているんだな、子どもというより、人として接してくれてるんだなって感じました。
――大事な言葉だけど、日本語だとなかなか「あなたを誇りに思ってるよ」って言いづらいかも。
田中:代わりに何かいい言葉があるといいですね。
一同:ですね~。
――愛の話になったところで、男の子の恋愛や性について、親は何を教えていけばいいかというお話をお聞きしたいです。
飯田:パパ任せになっちゃう気がする……。
薗部:これは悩むところ。自分が親から何か言われたことはないんですよね。「優しくしなさい」とか、その程度で。
田中:うちの場合、私が中学生のとき、産婦人科医の親戚の家に子どもたちが集められました。男の子も女の子も。そこで性教育を教えてもらったんですよね。男と女の体はこう違うとか、避妊しなさい、みたいな。主人とも、そういうことは早めに話そうって言ってます。
早く言っておかないと、男の子の場合は特に力関係で相手を傷つけてしまいやすいっていうのが怖いなと思います。
――恋愛・性についての話を親子でどう話す? について、次回も引き続きお聞きしたいと思います。
Text/小川たまか@ogawatam
座談会で出た疑問や悩みについて、ジェンダー専門家の大崎麻子先生に聞きました。
良かれと思ってのことですよね。たしかに、今までの日本のように終身雇用を前提とした年功序列の企業・組織や、男性を意思決定の頂点とする、いわば家父長制的な価値観が行き渡った地域社会では、「強さ」が男性にとって大切な資質と考えられてきました。
でも、これからの時代は違いますよね。男女問わず、多様な人たちが共存する組織や地域で、自分の居場所を見つけ、能力を活かし、他の人と助け合いながら生きていく力が必要になると思います。
「ママは(私は)、あなたのこんなところがとても良いと思うよ」と、息子さんの優しいところ、他者の痛みに寄り添ったり共感できるところ、家事を手伝ってくれるところなどを具体的に褒めたり、テレビや映画や本にそんな男の子が出てきたら「このキャラクターのこういうところ、このセリフが良いよね」などと話してみてはどうでしょう。
「思春期にあたる時期は、男女別学の方がそれぞれの第二次性徴に合わせたペースやカリキュラムで指導ができる」「共学では、生徒会長や応援団長など、リーダーシップ・ポジションは男子の役割、運動部のマネージャーや補佐的なポジションは女子の役割とされがちだが、女子校ではリーダーシップ・ポジションも女子が担える」「実社会では男性と女性がいるが、別学だと協働の経験が少なく、異性とのコミュニケーションや距離の取り方を学びにくい」などはよく聞きます。
同じ女子校、男子校でも、それぞれの学校で教育方針は違います。女子校、男子校、共学校という括りよりも、一つひとつの学校の教育方針・特性と、子どもの特性を勘案して検討すると良いのではないでしょうか。
個人的な経験ですが、息子はインターナショナルスクールの男子校、娘は公立の小学校・中学校・高校を選びました。子どもの特性、その時々の家族の状況など様々な要因を考慮しつつ、学校訪問をして「良い雰囲気か、子供にとって居心地が良いか」も見極めながら決めました。
まさか! ダメなわけないですよね。「男の子はピンクはダメ」、それは偏見です。
家庭でおばあちゃんやおじいちゃんが言うならまだわかるのですが、プロの保育士さんががおっしゃったのだとしたら、教育の場、子どもが社会性を身につける場で、偏見を植え付ける行為を取っていることになります。
キレイな色、似合う色、好きな色に男の子も女の子も関係ありません。絵本、服、映像、子ども向けの美術館や博物館、自然など、いろんな色を親子で楽しみ、子どもたちの色彩感覚やアート感覚を豊かに養ってあげたいですね。
ジェンダー専門家。
1971年生まれ。上智大学卒業。米国コロンビア大学国際公共政策大学院で国際関係修士号を取得後、国連開発画(UNDP)に入局。世界各地で女性のための教育、雇用・起業支援、政治参加の推進などのプロジェクトを手がけた。大学院在学中に長男を国連在職中に長女を出産し、子連れ出張も多数経験。
現在は、フリーの専門家として、国際機関、政府関係機関、NGOなどを通じて、国内外で幅広く活動中。グローバル人材の育成にも携わり、全国の大学、高校で講義や講演を行なうと同時に、PTA会長や学校評議員等を務めるなど、地域での教育活動にも取り組んでいる。
著書『女の子の幸福論 もっと輝く、明日からの生き方』(講談社)、『エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力』(経済界)。
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「パパとママ裸で寝てたね?」 性と恋愛、子どもにどう教える?【男の子の親座談会】
https://p-dress.jp/articles/9472「家事をしない夫、息子への影響は?(第1回)」「男の子は青じゃなきゃダメなの?(第2回)」に続き、男の子を育てるお母さん、お父さんに今考えていることを話してもらいました。全3回の座談会、最終回です。
いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。