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映画『12か月の未来図』感想。パリの学校を舞台に出会い・学ぶことの素晴らしさを描いた珠玉の物語!

桜が咲き始め、新学期ももうすぐですね! この時期、自分の未来に不安と期待の毎日を送っている方も多いと思います。【シネマの時間】第60回は、映画『12か月の未来図』をお送りします。“その時、人生に光が差し込んだ。僕たちの一期一会” 4月6日(土)より岩波ホールほかロードショー! 

映画『12か月の未来図』感想。パリの学校を舞台に出会い・学ぶことの素晴らしさを描いた珠玉の物語!

こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。

もうすぐ新入学、新学期の季節ですね。

移民問題で揺れるフランスで今、大きな社会問題になっているのは、移民の子どもたちが直面する学力低下と教育の不平等ですが、日本でも教育問題は他人事ではないのではないでしょうか。

【シネマの時間】第60回は、フランスの美しい四季を背景に描いたある教室の1年の物語、映画『12か月の未来図』をお送りします。

もし、フランス最難関のエリート高校の教師が、パリ郊外の教育困難校に赴任したら?

主人公の国語教師フランソワと劣等感の塊だった生徒たちが、教育の力で自信を取り戻し、新しい未来を自分の力でつかみ取ろうと模索するリアルな成長物語です。

教育格差に直面し真の教育に目覚めるフランソワを演じるのは、フランスが誇る劇団「コメディ・フランセーズ」のベテラン俳優で演出家のドゥニ・ポダリデス。

本作でプロの俳優が起用されているのは、なんと大人の役だけ。子どもたちは、オリビエ・アヤシュ=ビダル監督自身がほぼ2年に渡り、取材のために教育現場で関わった実在の子どもたちを起用。監督の真摯な仕事ぶりに感銘を受けます。

教育問題という難しいテーマを扱いながらも、子どもたちと堅物なフランソワの交流と成長がユーモアたっぷりに描かれ、”誰と出会うか” 良い出会いの大切さを感じずにはいられません。

また、この映画で本の力や美しいものを観ることの素晴らしさを再確認!

私も中学校のときに、授業前に朝の15分読書の時間があったことを思い出し、そのおかげで本から多くを学ぶことができました。

劇中、フランソワが授業で紹介していた「レ・ミゼラブル」の本も早速読んでみようと思います。

インド独立の父・宗教家のマハトマ・ガンディーの言葉に「明日死ぬかのように生きなさい。永遠に生きるかのように学びなさい」という名言がありますが、観たい映画、読みたい本、実現したい夢がいっぱいですね。

まずは、映画館で『12か月の未来図』をお楽しみいただければ幸いです!

■映画『12か月の未来図』あらすじーパリ郊外、移民・貧困・学力低下。フランスが直面する社会問題を背景に描く学ぶことの大切さ。

フランスが誇る名門アンリ4世高校で国語を教えるベテラン教師、フランソワ・フーコー(ドゥニ・ポダリデス)は、父は国民的作家、妹は彫金作家として活躍する知的なブルジョア一家に育ち、家庭も職場もブルジョアばかりという環境で生きてきました。

ある夜、フランソワは父の新刊サイン会でゲストに教育改革論を語ります。

「パリとパリ郊外の学校における教育格差を解決するには、問題校へベテラン教師を派遣して新米教師を支援すればよい」と。

偶然、その場で彼のアイデアを耳にした美女がいたことから、フランソワの未来が大きく変わっていきます。

アンヌと名乗る美女は国民教育省で教育困難校に取り組む専門家でした。

フランソワの話を気に入った彼女は早速、彼に教育優先地域にあるバルバラ中学校への1年間の派遣を依頼します。

移民、貧困により荒廃した街並み、真っ昼間から団地の空き地にたむろする若者たち。

荒れた光景に怯えながら、フランソワは郊外の赴任先へ。

新しく赴任した中等学校では、教師への敬意などなく大声でしゃべり続ける生徒たち、問題児はさっさと退学させればいいと冷ややかな若手教師たちに驚かされます。

初めて担当した授業で行った挨拶代わりの書き取りテストは惨憺たる結果で、初日から想像以上の問題ばかりです。

なによりエリート校でいわゆる“生粋のフランス人”を相手にしてきたフランソワにとって、さまざまなルーツを持つ生徒たちの名前を正確に読み上げるのも一苦労。

カルチャーショックに打ちのめされながら、フランソワはベテラン教師の意地で、まずは生徒たちの名前と顔を一晩で記憶しようと努力します。

クラスの問題児は、反抗的でお調子者のセドゥ(アブドゥライエ・ディアロ)という男の子。

好きな女子を追いかけ回す幼い一面もありますが、トラブルを繰り返すセドゥは教師の間では退学候補者のひとりとして目をつけられていました。

実はセドゥは大好きな母親が病気のため心が不安定だったのです。

もし、セドゥが中学を中退させられたら、一生社会から落ちこぼれ、這い上がることは不可能でしょう。

フランソワは今までに感じたことのない使命感と父性に駆られ、彼の行動を見守るようになります。

移民、貧困、保護者の無関心、不幸な環境の中で過ごしてきた彼らに、前任校と同じ指導は通用しないと悟ったフランソワは、生徒自身が自らの能力と未来を信じられるようにと意識改革を開始します。

「勉強しても意味がない」と無力感の塊だった生徒たちでしたが、フランソワの熱意ある指導で知的好奇心と自信を取り戻し、『レ・ミゼラブル』の本を読み込む授業に取り組めるほど授業態度が向上します。

他の教科でもクラス全体の成績が上がるなど、フランソワの指導は効果を上げ、生徒の心を掴めず悩んでいた社会教師のクロエ(ポリーヌ・ユリュゲン)は、フランソワに尊敬以上の感情を抱くようになります。

すべてが順調だったある日、遠足で訪れたベルサイユ宮殿でセドゥがトラブルを起こしてしまいます。

指導評議会で猶予なしの退学を宣告されてしまうセドゥ。

担任であるフランソワは、ベテラン教師のプライドを懸けて、また良識ある大人として、大切な教え子の未来を守るために必死に奔走するのですが……!

■映画『12か月の未来図』作品紹介

映画『12か月の未来図』
2019年3月30日(土)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
公式サイト:https://liverpool-movie.com

原題:Les grands esprits
原案:リュドビク・デュ・クラリー
脚本/監督:オリビエ・アヤシュ=ビダル
製作:アラン・ベンギーギ、マチュー・ベルアーゲ、トマ・ベルアエジュ
編集:アレクシス・マラール
キャスティング:ジュスティーヌ・レオカディ
音楽:フロリアン・コルネ、ガドゥ・ノダン
製作年:2017年
製作国:フランス
配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:107分
映倫区分:G
日本語字幕:岩辺いずみ
© ATELIER DE PRODUCTION – SOMBRERO FILMS -FRANCE 3 CINEMA – 2017

■映画『12か月の未来図』キャスト

ドゥニ・ポダリデス=フランソワ・フーコー
アブドゥライエ・ディアロ=セドゥ
ポリーヌ・ユリュゲン=クロエ
アレクシス・モンコルジェ=ギャスパール
タボノ・タンディア=マヤ
エマニュエル・バルイエ=校長
レア・ドリュッケール=キャロリーヌ
ジネブ・トリキ=アガト
フランソワ・プティ=ペランレミ
マリー・レモン=カミーユ
シャルル・タンプロン=セバスチャン
ジャンヌ・ロザ=生活指導専門員
マグディ・ファヒーム=ラン
シェイク・シラ=マルヴァン

【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO

諸戸 佑美

本や広告のアートディレクション/デザイン/編集/取材執筆/イラストレーションなど多方面に活躍。

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