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性を楽しみたい人も、そうじゃない人も、お互いの選択を尊重していきたい【TENGA×LCラブコスメ】

「女性の性」というテーマで話すときに気を付けなければいけないのは、「性を楽しめる人はイケてる」みたいな価値観を押し付けないことなんですよね。

性を楽しみたい人も、そうじゃない人も、お互いの選択を尊重していきたい【TENGA×LCラブコスメ】

「女性が性を楽しめる世の中になった」

と言われてはいるものの、まだまだ性のことは、秘めごととされる風潮もある現在。

性にオープンなスタンスを示せば、一部の人たちからは「あいつには何を言ってもいいんだ」と認識され、「ビッチ」「ヤリマン」などの言葉をぶつけられる。

また、自分の身体の一部である、女性器の名前を口にすることさえ「はしたない」と諫められてしまう。外からの抑圧ばかりでなく、そういった「恥ずかしい」という自らの意識が原因となり、自由を失ってしまうことがある。

そこで今回は、「性」を舞台にして働くふたりを招き、「性を楽しみたい人も、そうじゃない人も、それぞれの選択を尊重するためにはどうすればいいの?」をテーマにして、お話しを伺いました。

ひとり目は、女性の人に言えないセクシャルなお悩みを解決するために生まれたセクシャルヘルスケアのお店『LCラブコスメ』で、ラブグッズや商品の企画開発を行っている福田春子さん。

そして、ふたり目は、「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というビジョンのもと、セクシャル・ウェルネスをサポートする株式会社TENGAで広報をしている西野芙美さんです。


対談の前半はこちらから:「性」を舞台に働くふたりが考える、気持ち良さの楽しみ方

■セルフプレジャーは、自分の体を知ること、愛すること

――女性が自分の気持ち良さを発見するためのラブグッズですが、未経験の人が「使ってみよう」って思いきるには、少しだけ勇気がいると思うんです。その勇気を出すコツを教えていただけますか?

西野芙美さん(以下、西野):ラブグッズを使うことに、罪悪感を感じてしまう人は多いと思います。だからこそ、自分に言い訳してあげることが大事かなと思うんです。

西野芙美さん(@ nishino_fumi )。1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部で史学、文学、哲学等を学び、卒業後は人材紹介会社、出版社での勤務を経て株式会社TENGAに入社。2017年12月より広報宣伝部広報チームマネージャー。TENGA、irohaブランドのほか、医療・福祉・教育分野の専門家と連携して性の問題解決を目指すグループ会社「TENGAヘルスケア」の広報を担当。

西野:たとえば、「膣トレ」って言葉がすごく流行りましたが、セルフプレジャーに恥ずかしさや罪悪感を抱いてしまう人は、「骨盤底筋(こつばんていきん)を鍛えることは、シェイプアップにも繋がってくる。そういう効果を期待するからやってるんだ」ってことにする、とか。

福田春子さん(以下、福田):言い訳は大事ですね。

西野:そうなんですよ。「これは悪いことじゃない、恥ずかしいことじゃない」って思っても、これまで積み重ねてきた意識を変えるのは難しいと思うんです。なので、最初のうちは「使ってみようかな」と思える理由をつくってあげる。それで気持ち良さを感じたら、どんどん「気持ちいいからやる」という感覚にシフトさせていくのが、ひとつの手かなって思っています。

福田春子さん。「LCラブコスメ」の商品開発を担当。

福田: 「セルフプレジャー」というのは、自分の体を知ることであり、愛することだと考えています。だから私は恥ずかしいことじゃないと思います。

LCラブコスメではセルフプレジャーのことを「自分磨き」と表現しているんです。自分磨きをすることで、心に余裕を持てたり、穏やかに過ごすことができて、どんどん綺麗になっていったり、自分を好きになっていったりってあると思います。

■女性がエッチなことをすることに罪悪感を感じてしまうのはなぜ?

――罪悪感とかネガティブという言葉が出てきましたが、そもそも、どうして「悪いことをしている」という気持ちになってしまうのでしょうか。

西野:私もずっとその疑問を持っていて、フェミニズム研究の本をいろいろ読んできました。『日本女性の歴史 性・愛・家族』 (総合女性史研究会)によると、性の自由も含めて、女性が自分の意思を持って動くことは「女性の財産権」と、密接につながっているそうなんです。

福田:女性の財産権ですか?

西野:はい。中世末期までは、女性にも独立した財産権があったそうで、妻から夫に高利で金を貸し付ける事例もあった。だからこそ女性が、自分の意見を強く言えることもできた。けれど、室町・戦国時代を経て、武力が権力と直結したことで、さまざまな権利が男性に集中した。さらに「家」制度の成立で、男女ともに役割を縛り付けられた結果、女性の性に制限がかけられることになった、という説があるんですね。

福田:なるほど、そういう時代の流れがあった。

西野:とはいっても江戸時代なんかは春画とかもあって、少なくとも庶民レベルでは、性はおおらかなものであったんですけど。

福田:春画は有名な文化ですよね。

西野:それが戦後、キリスト教の影響が日本に入ってきたことで、処女崇拝やマスターベーションの禁止っていう決まりがどんどんな染み渡っていった、という歴史があったようなんです。

福田:つまり、性がもともと恥ずかしいものというわけではなく、この時代に恥ずかしいとされているだけ、ということですか?

西野:そうなんです。その時々の人間が、その時代背景に合わせた価値観を持っていたということなんじゃないかって。今は一応、経済的な面で女性もどんどん自立していっているけど、そこの価値観だけは残っている。

福田:たしかに一部のメディアもいまだ「おしとやかであれ」ってメッセージを発信していますよね。

■「女性の性が自由になると、悲惨な未来が待ってるぞ」という呪い

――私たちは、生まれつき性を恥ずかしいと考えるようにプログラムされているわけではない。ならば当然、自由になることもできる。けれど、そもそも、性が自由になるって、どういうことなのでしょうか。

福田:すごく壮大なテーマですけど、単純に自分を愛すること、パートナーがいる方でしたら、そのパートナーとの愛を、心から楽しむことにつながると思います。

西野:性へのタブーが増えていくことで、セルフプレジャーやセックスなどの行為自体が楽しめなくなっていきますからね。

福田:今の世の中の人たちが自分や、パートナーのことをまったく愛せていない……というわけではないんですけど、性のことで悩んだり、想いがあるのに楽しめないのは悲しいですよね。


西野:性が自由になるって、自分の性も他人の性も尊重できる状態だと思っていて。でも今って「女性が自由になると、悲惨な未来が待ってるぞ」っていう呪いにかかっている人が多いと思います。

西野:もちろん「私はあまり性に興味がないし、そういうのはちょっと嫌だ」って思うなら、それはそれでひとつの価値観だと思うんですけど。

福田:そうですね。

西野:でも「本当はああいうことしたい、こういうことしたい」って思っているのに、押し込めていると、自分を愛せなくなっちゃうと思うんです。「はしたないことは考えたらだめ」と性に関して思考停止になってしまう。そうすると、したいことが言えないっていうだけではなく、何か嫌なことをされたときにそ「れが嫌だ」という認識を持つことすら難しい。そういうふうに性に対してコミュニケーションが取れないこと、性について言語化できない苦しみって、本当につらい。

福田:自分を愛する、そしてパートナーと愛し合う手段のひとつなのに、自分を抑えてパートナーを喜ばせるため、みたいになってしまうと、喜びを感じにくくなってしまうかもしれませんね。

■性を楽しみたい人も、そうじゃない人も、お互いの選択を尊重していきたい

LCラブコスメの商品「さくらの恋猫」に興味深々の西野さん。

――セックスに自分の喜びを見いだせない、というのはセックスレスの原因にも繋がっていきそうです。

西野:わたしの周りには「すでにセックスレスなんだけど、長く付き合っているから結婚する」って人がけっこう多いんです。「セックスレスを無視して結婚しちゃっていいのかな」って思うんですけど、本人たちに聞くと「別にセックスなんかいい。連れ添って長いし、すごく良い人だから」って。

福田:本人同士で決めたことならそういった選択肢もありますよね。

西野:そうです。でも、彼女たちが、その後、不倫が原因で離婚をするケースも少なくなくて。離婚や不倫が必ずしもダメなわけではないのですが、お互いに「セックスレスでもいいや」みたいな雰囲気で、コミュニケーションを取らないでいると大変なことになるな、とは思うんです。相手にセックスを無理強いするのはおすすめしませんが、一度、性のことについて、しっかりふたりで話し合ってみてもいいと思います。

福田:たしかに、カップル間のコミュニケーション不足を感じることはけっこうありますね。勇気を出して話し合ってみると「思ってもいないところで、お互いに遠慮していた」みたいなことがわかったりするので、やっぱり対話は大事です。

西野:私がセックスレス防止法としておすすめしているのは「感想戦(※)」です。

福田:感想戦……?



※感想戦:将棋・囲碁・チェスなどの対局が終わった後に、試合の成り行きをたどって「ここをこういう風にして、ここであなたがこうしたら、私は負けてた」のようにお互いの最善手を検討し合うこと。

西野:自分の夫とセックスした後に、「あの刺激が良かった」とか、「あのときのあなたはすごくセクシーだよね」って話を、自然発生的に言い合ったことがあったんですよ。そうしたら、夫が「僕たちって夜の感想戦が好きだよね」と。

福田:あはは(笑)。お互いのセックスに対してどう思っているかを言葉にするんですね。

西野:上から目線で「あれはちょっとイマイチだったよね」とか、ダメ出ししちゃうと、お互いに落ち込んじゃう。だから良かったことを言い合って、次に活かすんです。

福田:たしかに……そうすれば「相手がしてほしいこと・気持ち良いと感じること」が明確になって、よりポジティブな気持ちでセックスができるようになりそうです。

西野:ただ、セックスレスが完全に悪だとは思いたくないんです。ふたりの関係性の中からセックスが必要ではなくなった、ということも当然ある。「女性の性」というテーマで話すときに気を付けなければいけないのは、「性を楽しめる人はイケてる」みたいな価値観を押し付けないことなんですよね。

福田:ほんとにそう思います。

西野:「自分はセックスが好きじゃないのに、周りに理解されない」っていうような相談をいただくことがあるんです。世の中には性への興味関心が薄かったり、なかったりする人もいらっしゃるわけだから、選択肢を自分で選べること、人の選択肢を尊重することが大切なんだって意識を持つことも、大事なのかなって思います。

福田:性にオープンになるっていう流れがこれからさらに強くなっていったとき、それ自体は素敵なことだと思うんですけど、自分と相容れない人に対して否定的な行動をとる人もいると思うんです。「自分とは違うから、人を傷つる・貶める」っていう方向に流れてしまったら、それはすごく残念ですよね。

■「”恥ずかしい”を代表とする古い価値観」と、「生存政略としての結婚」が性を楽しむことを難しくする

――ここ数年で女性の性の意識も、変わってきている実感はありますか?

福田:あくまでもわたし自身の感覚でいうと、変わってきている部分もあると思っています。それはTENGAさんがいろいろやられてるっていうのが大きいのかなって。やっぱり百貨店にラブグッズを置く(※)って、以前は正直、想像もできなかったことです。



※iroha初の百貨店進出:2018年8月22日(水)~9月4日(火) 、大丸梅田店(大阪府大阪市北区)で、女性向けセルフプレジャーアイテム「iroha(イロハ)」のポップアップストアがオープンした。11月21日(水)から第2弾を同じ場所で展開

西野:大丸百貨店のポップアップストアの件は、かなり大きな出来事でした。というのも、お客様のボリュームゾーンが40代50代だったんですよ。

若い世代のほうが、性に対する価値観が変わってきている、性に対して自由になっている……と思いきや、むしろ、若い子たちほど他者の視線を気にしてしまう。一方で、40代以上の方って、結婚とか、出産とか、離婚とか、さまざまなライフイベントを経て、否応なく自分の性を体感しているようなところがあって、むしろ自由にとらえている方も多かったんです。

福田:そうだったんですね、たしかにそれは意外です。

西野:今までって若い人をメインに情報を発信したほうがいいかなって思っていたんですが、その上の世代の人たちも、やっぱり性に興味があるし、楽しみたいって強い願いがあるんだなって。“恥ずかしい”を代表とする古い価値観に縛られて、これまで積極的になれなかったその年代の方たちから、「百貨店さんが堂々と扱ってくださったおかげで、肯定されたような感じがした」って意見をすごく多くいただけたんです。

西野:ただ、性が自由になっていく一方で、押し殺してしまう人もいます。日本の女性の賃金って平均するとまだまだ男性よりも低いじゃないですか。だからこそ、生存戦略として結婚が存在していると思っていて。人によっては学生時代から、将来の経済的なことを考えて婚活する人もいるって話があるんですよ。



※男女間賃金格差:2018年2月に厚生労働省から発表された「平成29年賃金構造基本統計調査の概要」によれば、2018年における男性賃金は335.5千円(年齢43.3歳、勤続13.5年)、女性賃金は246.1千円(円(年齢41.1歳、勤続9.4年)。

福田:え、そうなんですか?

西野:まだまだ男性的な価値観が一般的とされる社会の中では、性を自由に楽しむことは、レールから外れることにもなりかねない。レールから外れると結婚できない可能性が増えてしまう。結婚が生存戦略と直結していると、自分の喜びとかそういうものを一旦捨ててでも、この社会の波に乗るしかない、という人もいると思うんです。

性を楽しめる人・自分を押し殺してでも生きていかなければならない人、この二極化が進んでいくんじゃないかなって思っていて。ここをどのように乗り越えていけばいいのか……というのが、個人的なテーマだと思っています。

取材・Text/大泉りか
Photo/飯本貴子(@tako_i

11月特集「性欲と情熱」

大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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