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嫌なことに嫌だと言えない。発達障がい当事者のリアルな恋愛

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「発達障がいが原因で、これまで失敗経験を積んだことにより、自分に自信がなくなってしまうんです」

嫌なことに嫌だと言えない。発達障がい当事者のリアルな恋愛

対人関係が上手くいかない。

時間の逆算が苦手でいつも遅刻してしまう。

買い物の衝動を我慢できない。

発達障がいを持つ人は、こうした“生きづらさ”を抱えていることが、最近少しずつ知られるようになってきました。

特に他人との密接な関わる恋愛においては、発達障がいの特性により、相手との関係を構築することに、困難をきたすことも。けれど、同じ社会に生きている以上、発達障がいの当事者と関わりを持つ機会があれば、自分や、自分のパートナーがそうである可能性もあります。


そこで今回は、発達障がいを持つ人の恋愛傾向や、発達障がい当事者をパートナーに持った場合、どう理解を持ち、どう付き合っていくか、発達障がいの当事者の人たちの “恋愛”にスポットをあてて、『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』の著書を持ち、自身もLD(学習障がい)を持つ姫野桂さんに、お話を聞かせていただきました。

姫野桂さん/Twitter:@himeno_kei

■発達障がいにはグラデーションがある

――そもそも発達障がいってなんなのでしょうか。

大きくわけると、「ASD(自閉スペクトグラム)」、「ADHD(注意欠如、多動性障がい)」、「LD(学習障がい)」の3種類があります。

ですが、生まれつきの脳の特性によってコミュニケーションが苦手だったり、多動や、不注意が多かったり……。

あとは知能的には問題がないのに、簡単な計算や読み書きができなかったりして、それが、日常生活とか仕事に何かしら支障をきたしている場合、困っている人が多い、というものです。

――具体的に言いますと。

たとえば多動でいうと、典型的なのは小学生が授業中に座っていられずに、歩き回っちゃうやつです。映画を2時間見れない、映画館の中にずっといれないというのも多動。

チックも多動の一種です。

たとえば、発達障がい当事者のオフ会で、隣に座った女の子のことを気に入った男性が、相手は嫌がっているのに気づかず、自分の話を延々としていて、周りから見ているともう「解放してあげて」って思うんだけどもう、止まらない、というケースを聞いたことがあります。

そういうのも多動なんですよね。

――すごく範囲が広いんですね。そういうことを言われると、自分にも、発達障がいにあてはまる傾向が、あるように思えますが……。

そうなんです。「ここからここが発達障がい」っていうラインはなくて、グラデーションなんです。程度の問題なんですよね。程度で自分や周りに迷惑をかけているか、いないか。

――ということは、発達障がいであっても、生きづらさを強く感じていない人もいるということですよね。

いると思います。

――そういう人は、それはそれで問題はないともいえる。

でも、周りは困っているのに、それにまったく気づいていない人もいるんですよね。

■「オシャレじゃなくていい、まともな服装を知りたい」恋愛における発達障がいの特徴

――なるほど。それで、周りから「あの人はちょっと……」って敬遠されるようになると、それは生きづらくなりますね……。それで今回は、発達障がいと恋愛をテーマにお話しをお聞きしたいのですが、発達障がいの特性が、恋愛をする上での支障となることってあるのでしょうか。

私が知る限りのお話になりますが、男性の場合はとにかくモテに関して悩む方が多いです。

――そうなんですか。

恋愛って、コミュニケーションが大事じゃないですか。

発達障がいの場合は、そもそもコミュニケーション能力に欠けていることがあって。

あと不注意があるとみだしなみまで意識が回らずに、相手が求める清潔感に非常に欠けていたりとか。服装にこだわってないっていうのもあるんですが、それがおかしいくらいのこだわりのなさ。

毎日同じ服を着ていたり、不注意でズボンが裏表でも気が付いていない人に会ったことがあります。

――まったくの無頓着ってことですね。

この間、当事者会の人と話したんですが「オシャレを求めてるんじゃなくて、まともな服装を提案してくれるスタイリストさんが欲しい」と言ってたんですね。

仕事にはこういう服装で行けばいいんだよ、遊びにはこういう服装だよ、って。その段階からわからないので、オシャレじゃなくていいから、まともな服装を知りたいっておっしゃってました。

――休日のデートなのに、会社に行くようなスーツで来る、みたいなことがあると引いてしまうかもしれません。

“生きづらさを抱えた人がふらっと立ち寄れる場所”をコンセプトにした「発達障害 BAR The BRATs」というお店があるのですが、そこのオーナーの光武さんも、「服装にこだわりがないから毎日スーツだった」って言ってたし、わたしの著書に収録されている座談会に出席いただいたときも、スーツで来られていました。

そういうTPOにあっている格好ができないって、恋愛するとなるとけっこう厳しいのかなって。

――そうですね。「かっこいい!」とか「素敵!」とはなりにくい。

あと落ち着きがなかったりするのも特徴としてあります。落ち着きがない人って、女性からすると不安になるじゃないですか。

――こういったケースは性別に関係なく起こるのではないでしょうか?

もちろん男性だからこうとか、女性だからこうっていうケースが必ずしも当てはまるわけではありません。

ただ、女の子の場合は、多動とか不注意があっても、「ちょっとドジッコ」とか「天然」っていう要素に繋がったりするケースがあるんです。

「可愛いのに、ちょっと変わってる子」とか。

それに、女性って女の子同士で「それ、可愛いね」とか言い合うじゃないですか。そういうところで、服装のTPOなんかも、訓練されていくんです。

――女性が多少TPOに合っていない格好をしていても、男性は気にしなかったりしますしね。

むしろ、「隙がある」なんて言葉があるように、モテになるというか……つけこまれやすいというか。そういう意味で、騙されやすい人は多いです。特にASDの傾向が強い子は騙されやすいです。

――どうしてですか?

自分の思っていることを言語化できなかったり、言葉をそのまま受け取ってしまう傾向にあるんです。ナンパ師にいいように言いくるめられてしまうのがそっち系の子なんですよね。嫌なことに、NOと言えない。

――それが「素直な子」という枠に当てはめられてしまうということですね。

自己判断をすることができないから、相手を疑うことなく、DV男に引っかかったりすることもあります。

■失敗経験を積み重ねるうちに、自己評価が低くなってしまう

――著書を読んで衝撃だったのが、リナさん(27歳)のエピソードです。中学生時代、自分の意志に関係なく、聞かれたことに答えなければって思っていて、それで、クラスメイトに性について問われたときに、すべて正直に答えていたらどんどん質問がエスカレートしていった。挙句、授業中に自慰をしてみろって言われて、それで実際にしてしまったっていう。

「性に関する質問がどんどんエスカレートしていき、自慰行為について聞かれ、それにも答えました。今思うと、『そういう話はしたくない』と答えればいいのに、それがわからなかったんです。もちろん、恥ずかしいという感情はありましたが、『聞かれたことに答えなくては』という思いのほうが、優先順位が高かったんです。嫌なことは嫌と言っていいという概念すらなかったのだと思います」

――『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』P151より一部引用

彼女なんかは、ナンパ師の餌食になる典型ですよね。

「ヤラせて」っていわれたら断れなくてやってしまうっていう。

取材した中では、女性は恋愛している人が多いんです。モテない子はあまりいなかったし、それこそ、ほぼ全員パートナーがいた経験がありました。

けれど、DV男に引っかかって、相手に依存してしまったり、彼氏ができては別れ、またできてっていう、恋愛そのものに依存していたり。自己評価が低いがゆえだと思うんですが。

――自己評価が低いことと、発達障がいには関連があるんですか?

発達障がいが原因で、これまで失敗経験を積んだことにより、自分に自信がなくなってしまうんです。

――姫野さんご自身にもそういった経験がある?

これは、発達障がいの傾向なんですけど、わたし「0か100か思考」なんですよ。白黒はっきりしないと嫌で、グレーでいいって思考がないことが、恋愛するときにしんどいっていうのがあります。

――たとえばどのようなときでしょうか。

セックスフレンドっていう状態が許せずに、付き合うのか、付き合わないのかを、はっきりさせたかったり……実は、わたし自身があんまりちゃんとした恋愛をしたことがないからわからないんですよね。

ずっとバンギャとしてビジュアル系バンドを追いかけていて、あくまでもスターとファンという立ち位置からのスタートだったんです。

いくら相手のステージの上の姿をしっていても、関係性が築けているわけではない。だから相手のことをあまり知らないまま、とにかく好きで、向こうもわたしのことをそんなに知らないまま付き合うパターンばかりで。

――そういう方とお付き合いされたこと、あるんですか?

はい、二回くらい。

でも、ビジュアル系をずっと追いかけていたっていうのも、そこにしかいかない思考、ひとつのことにハマったら周りに目がいかない、とにかく自分が信じるものがそこしかないっていうのも、発達障がいあるあるだと思います。

――なるほど。ひと口に「発達障がいの生きづらさ」と言っても、人それぞれな問題を抱えているんですね。

そうなんですよ。「こういうものなんだ」ってまとめるのが難しいんです。それぞれまったく違う。

■パートナーが発達障がいの人がかかる心身の不調「カサンドラ症候群」

――では逆に、パートナーが発達障がいの場合は、どうやって付き合っていけばいいんでしょうか。

それもその人の特性によるんですが、わたし、昔付き合っていた人が、いま振り返ってみればADHDだったと思うんですよ。全然部屋を片付けられなくて。家の中のものが山になって置かれていたんです。

彼はその山のどこに何があるかわかるんですけど、わたしはそれが本当に嫌で……。1週間前にやった鍋がずっと放置されていて、悪臭を放ってるんです。臭すぎたので、彼が出かけている間に処分しちゃいました。

――それは厳しいですね。

その当時はADHDとか知らないから、散らかり放題なことや鍋を放置することを、めちゃくちゃ注意したんですよ。そうしたらすごくへこんでしまって。

頭ごなしに否定するようなことを言っちゃダメだったんだなって思いました。でも、彼自身は臭くてもまったく気にしてなかったんですよね。

――そういうパートナーがいる場合って、そのままを受け入れて認めてあげるのがいいのか、それともちゃんと会話をして嫌だという気持ちを伝えるのがいいのか、どうなんでしょうか。

発達障がいの方とのコミュニケーションに限った話ではありませんが、一方的にその人の考え方や行動を否定するのはダメだな、というのを当時付き合っていた彼との関係の中で学びました。

ただ一方で、我慢しているとカサンドラ症候群になってしまうこともあるので……。

――カサンドラ症候群というのは?

ADHDのパートナーを持つ人が陥りがちな身体的・精神的な不調のことです。

相手のあまりの共感力の低さ――共感力が低いというのは「人の気持ちがわからない」っていうことですが、一緒にいる方が、「なんでわかってくれないんだろう」「なんでできないんだろう」って悩んだ末に、鬱になったり、無気力になったり、片頭痛など心身に支障をきたすことですね。

――発達障がいを持つパートナーから影響を受けて苦しんでしまうことがあるんですね。

もちろん発達障がいのパートナーがいる人全員がなるわけではなりません。

パートナーシップを良くしていくために、お互いが向き合うことができていれば問題は解決しやすいはず。

発達障がい当事者同士で、逆に真逆の方向性を持ったふたりがうまくいったりもしています。本の中でも当事者同士の夫婦を紹介していますが、補い合うこともできる。そういうのはすごくいいと思います。

■発達障がいでも、そうじゃなくても、自分の「取り扱い説明書」を作ってみて

――なるほど。ちょっと話が戻るんですが、同じ発達障がいでも、生きづらさを強く意識する人とそうでない人がいる。それって、どうしてなんでしょう。

たとえば、子どもの頃に両親から特性を理解してもらえて、褒めてもらえて、というような教育を受けていれば、生きづらさはだいぶ減るような気はします。

本の中の座談会に出ていただいた「発達障害BAR The BRATs」の吉田さんが、「おそらく病院に行けば発達障がいって言われるんだろうけど、困ったことがない」と仰っていました。

その理由として「それはおじいちゃんおばあちゃんと一緒にいることが多かったから」と。

彼の祖父母は、彼のことをとてもかわいがっていたそうなんです。それで自己肯定感が下がらなかったから、今は困ってないみたいなことを仰っていました。

――なるほど、キモは自己肯定感なんですね。

だから、自分の両親が毒親だったりすると逆の結果が生まれるのかもしれません。

取材をしていく中で出会ったのは、自分の親が教育熱心で、度が過ぎてしまって監禁をするようになってしまった、という人です。

今は生活保護を受けていているんですが、生活保護って家賃とかも限られているじゃないですか。

でも、その人はちょっと高めのところに住んでいたんです。その理由を尋ねたら、「子どものときに虐待で監禁されていたので、ちょっと広めのところじゃないとそのときの体験を思いだしてしまうんです」って。

――発達障がいの子どもを理解できない周囲の人間によって、別の生きづらさが生まれてしまうこともあるんですね。

あると思います。

でも子どものうちにわかっていれば、寄り添う方法はいくらでもあります。たとえば「放課後等ディサービス」ってフォローしてくれる施設があるのですが、コミュニケーションの仕方を遊びながら教えてくれたり。

あと学習障がいがある子には、その子に合わせた教え方をしてくれたりするんですよ。

発達障がいの当事者を変えようとするのではなく、周囲の環境をその個人に合わせている――そういった場所に放課後や夏休みの時間を利用して通うというのは良いと思います。

――逆に肯定感を与えられ続けていれば、生きづらさを持たずに済むかもしれない。他に、具体的に生きやすくなる方法ってあるんですか?

わたしも作ったんですが、まずは自分の取り扱い説明書を作るっていうことですね。そうしたら自分の苦手なことと得意なことが可視化されるので、できないことはアウトソーシングするっていう選択肢が出てくる。

――姫野さんの著書にも、実際にその説明書が載っていましたよね。それがあるお陰で、今回のインタビューはすごくしやすいです。けれど、一度損なってしまった自己肯定感って回復するんでしょうか。

自分の取説を作って自己分析していくと、回復できると思います。自己分析にすると、自分の得意な分野と苦手な分野がわかるじゃないですか。それで、得意な分野を極めていこうって思うと、それだけ結果が出るんです。

――なるほど。これって、発達障がいと関係なく、誰もが作ってみれば、いろんな発見がありそうだし、生きやすさに繋がっていく気もします。今日はどうもありがとうございました。

姫野桂 プロフィール

フリーライター。専門は生きづらさ、発達障害、社会問題系。たまにV系バンド。愛玩動物飼養管理士2級。単行本発売中。お買い求めは書店かネットで。週刊誌やWebで執筆中。

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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