アラフォー女性が5年の海外生活で得たものと失ったもの
海外生活6年目に突入した筆者が、日本の常識が通用しない異国で得たものと海外生活によって失ったものについて、振り返りも兼ねてまとめました。海外生活の実態について興味のある方は参考にしていただけると嬉しいです。
海外就職を機に日本を出て丸5年が経ちました。
フィリピンとマレーシアという東南アジア新興国で5年も働いたことで、予想以上に得るものがあったと実感します。
日本に一時帰国するたびに「あのまま日本にいたらどうなってたのかな」と、過ぎ去った5年に思いを馳せることも。
今回は、この5年間の海外生活で得たものと、失ったもの・難しかったことについて書きます。
■5年間で得たもの
1.日本の常識にとらわれない、自分なりの働き方
元は大企業志向、安定志向だった私が、海外のベンチャー企業で働いていること、 「プロジェクトマネージャー」という仕事をリモートワークでこなすこと、たった2カ月の産休だけでフルタイムで復職したこと、住み込みのメイドに息子の面倒と家事を手伝ってもらっていること……。
どれもこれも日本にいたら想像すらできないことですが、海外でいろいろ見聞きして悩んで、トライアンドエラーを繰り返した結果、今のスタイルにたどり着くことができました。
ユニークなキャリアを構築できている自負がありますし、日本にいたときと比べると通勤時間、勤務時間が減り、自分の時間が増えて非常に満足しています。
2.言語や文化、宗教、民族に対する理解が深まった
国や民族ごとのお祝いごと、宗教上のマナー、付き合い方、言葉(少しですが)を学びました。
海外に出たばかりの頃は、無知による無礼もたくさんありました。そのたびに相手に許してもらったり、または鋭く指摘されたりもしました。
インドネシアからフィリピンにやってきたムスリムの同僚から、
「本当は豚肉を調理したフライパンで作られたチキンなんて食べたくないんだけど、ここはフィリピンだから仕方がないって割り切ってるの。海外だから神様も許してくれると思う。でもそれは私の判断であって、ほかのムスリムがどうかはわからない」
と言われたときは本当に驚きましたが、こういうことこそ机上では学べないと実感しました。
これらの経験から、自分は知らないことは知る努力をしようと思いましたし、また相手に対してはすべてを理解してもらうことを求めず「無知があって当然だし、私がわかることなら私が教えてあげよう」と思えるようになりました。
3.「人は人、自分は自分」と思えるようになった
日本にいるときは、自分の意思ではなく「流行りの服を着なきゃ」「ネイルは3週間に1回通わなきゃ」「XX歳だからこうしなきゃ」と、常に人の目を気にして生きてきました。
海外で「人は人、私は私! 自分のこと大好き! 自撮り大好き! SNSに自撮り写真をアップするのが日課!」な人々に囲まれているうちに、日本にいたときに勝手に作り上げていた「人の目」が気にならなくなってきました。
着たい服を着るし、化粧はしたいときだけするし、でも日差しが強いから日焼け止めはこまめに塗る、そんな素の自分でいられる気楽さを学びました。
4.「怒っても無駄」という悟りと「ゆるさ」の受容ができるように
コンビニのレジの人がのんびりしていても、デパートのレジの人が暇なときに歌っていても、電車が時間通りに来なくても、「まぁそういうモンだよね」と気にならなくなりました。
もし私が怒っても相手は私が怒る理由を理解できないでしょうし、むしろ「人前で怒りをあらわにする人は人として尊敬に値しない」と思われます。
そもそも怒っても無駄なのです。コンビニのレジの人は、日本だときびきび動くことを求められるでしょうが、フィリピンやマレーシアではそもそもスピードを求められません。レジを操作して会計ができればいいのです。
デパートのレジの人は、日本であれば恐らく待ち時間に歌を歌っていたら非難されるかもしれませんが、こちらでは「歌っていて何が悪いの?」ということになります。このゆるさが受容できるようになって、東南アジアでの生活がぐっと楽になりました。
■失ったもの・難しかったこと
得たものが多かった一方で、海外で5年も生活していると、失ったものや難しかったこともたくさんありました。
1.家族や友人と付き合う時間が圧倒的に減った
日本の友人たちとの付き合いはゼロにはなりませんが、会うことは少なくなりました。飲み会や旅行の写真がSNSに上がっているのを見ると、私も行きたかったなぁと寂しくなることも。もちろん親と会う機会も減りました。
海外生活でも友だちはできますが、日本人は「いずれは本帰国する人」がほとんどなので、結果的に会う機会が減ります。かくいう自分も、マレーシアに引っ越したことで新しい友人を得た反面、フィリピンでできた友人とは会う頻度は減りました。
2.就ける仕事の幅が少ない
日本にいれば(受かるかどうかは別として)仕事は選び放題ですが、海外だと就労ビザとの兼ね合いで「就ける仕事」に限りがあります。
国によっては「社員数に対して外国人は◯%まで」という制限があったり、大学の専攻と関係のない仕事には就けないこともあります。
会社によっては、就労ビザをサポートをしてそれなりのコストを支払っているからか、「契約期間を満了せずに退職する場合は違約金を支払う」という条項を契約書に含めている会社もあります。内定が出て契約書にサインをする段階で初めてこれを知らされるケースもあります。
3.妊娠・出産・子育てにおける海外ならではのプレッシャーがある
妊娠中の食べ物、体重管理、産後の過ごし方、離乳食として子どもに与えるものとその進め方など、総じて「日本は厳しい」「東南アジアはゆるい」という印象です。
どちらがいい悪いではなく、いろいろなやり方を知ってしまったことで、「私はどちらを選択するか」という判断が大変でした。
例えば予防接種、日本とマレーシアでは摂取時期やその種類が異なります。双方の推奨内容の違い、時期の違いを調べるのも一苦労でした。
4.日本の流行がわからない
特に「新しい言葉」に疎くなりました。自分が日本にいたときはあまり耳にすることのなかった言葉、例えば「感謝しかない」「わかりみが深い」「最&高」と言った言い回しを見かけるたびに、違和感を覚えます。
流行っている歌や歌手、芸人さんもわからなくなりました。一時帰国してテレビを見るたびに、浦島太郎になった気分です。
5.日本で開催されるイベントに行きづらい
これまでずっとファンだったアーティストの引退前のライブに行けなかったり、日本にいれば仕事が終わった後に気軽に行けたであろう勉強会に参加できず、悔しい思いを何度もしています。
上述したすべての項目に当てはまりますが、「日本だと無意識に当たり前だと思っていたこと」がそうでなくなって初めて、貴重なチャンスを失っていると実感しました。
5年間の海外生活を経て、海外生活も日本の生活も一長一短があり、どちらがいい悪いではなく「そのときの状況に応じて住みたい場所に住めばいい」と学びました。また、それができるサバイブ力が身につきました。
今後、海外への移住や就職、親子留学をお考えの方の参考になったら幸いです。