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アニメ好きが唸る、感動の痛ネイル。これさえあれば明日もがんばれる

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爪のおしゃれを楽しみたい人が通うネイルサロン。その中に、アニメや漫画のキャラクターなどを模写する「痛ネイル」という独特なネイルを施術してくれるサロンがあるのをご存知でしょうか。そんな痛ネイルサロンの元祖「Venus Rico」で施術とインタビューを行いました。

アニメ好きが唸る、感動の痛ネイル。これさえあれば明日もがんばれる

皆さん見てください、このネイルを!

漫画『SLAM DUNK』に登場する桜木花道と流川楓のデザインを施した痛ネイル

超名作バスケ漫画『SLAM DUNK』から桜木花道と流川楓が、作品の世界から飛び出してきて、筆者の体の一部になっています。

こちらは、アニメキャラクターをネイルに取り入れた、いわゆる「痛ネイル」。もし身近な人がこんなネイルをしていたら、二度見、いや三度見してしまいませんか?

好きなキャラクターの好きな表情が模写され、爪の上に生き生きと存在する――今回は、そんな夢のようなネイルが叶うデザイン・アートに特化した秋葉原のネイルサロン「Venus Rico(ウェヌスリコ)」を訪れました。

店内のディスプレイにはアニメ映像が流れ、ネイリストは全員アニメ好きであったり、アニメに詳しかったりと、痛ネイルをしたいアニメや漫画好きな女性にはとても居心地の良い場所。

■爪というキャンバスに描く、生きたイラスト

痛ネイルの施術時間はおよそ3時間半。

その間、優れたセンスと高い技術力に圧倒されっぱなしでした。

予約時には、「桜木花道くんと流川楓くんを左右の指1本ずつに描いてほしい。他の指はユニフォームカラーの赤か白でシンプルに仕上げてほしい」といった簡単なオーダーをしていただけで、この仕上がり。

イラストを模写してもらう指以外をどうするか迷っていると、担当してくれたネイリストの小林由佳さんから、的確で素敵な提案がありました。

「ユニフォームの数字を入れてみますか」

「ラインを入れても素敵になるかと思います」

「面積の大きい親指が少し殺風景なので、ボールをイメージしてストーンを置いてみてはいかがですか」

……などなど。

途中まではふたりがかりで、爪を整えたり、ベースとなるカラーを塗ったりして、左右4本の指を約2時間かけて完成。その後、いよいよ模写が始まります。

マットなホワイトベースを乗せた爪をキャンバスに見立て、模写するイラストを見ながら、使われている色の絵の具を紙に乗せます。画家のパレットを見ている感覚です。

筆先が0.1〜0.2ミリほどの超極細筆と水、絵の具を用いて、とんでもなく小さなキャンバスを彩っていきます。

人の顔は立体的。だからこそ生まれる自然な陰影や髪の生え際、まつ毛、肌色の濃淡……緻密な模写で表現されたふたりのキャラクターは、原作者に描いてもらったかのような惚れ惚れする完成度です。

■『あの花』を見てひらめいた痛ネイル

現在、痛ネイルと一般ネイルの顧客はおよそ半々というVenus Rico。

ですが、2013年のオープン当初から、この優れた模写技術を提供できていたわけではありません。オーナーの鹿島龍太朗さん自身も当時、アニメに詳しいわけではなかったといいます。

「2012年の終わりに、たまたま入ったバーで知り合った人から、アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(※)を勧められて、その場で朝まで全話見続けたんですね(笑)。そのとき思いがけず号泣して、これはヤバいと思ったんです」(鹿島さん)


深く感動すると同時に、鹿島さんは痛ネイルを思いつきます。キャラクターが涙を堪える表情や感動的なシーンが爪の上に乗ったら、素晴らしいアートになるのではないか、という閃きがスタートのきっかけでした。

『あの花』を勧めてくれた人物は、秋葉原という土地に精通しており、その人と親しくなるうちに、鹿島さんは秋葉原が「男性の街」と化しているのを知ります。

■アニメ好きな女性たちが興味を持つネイルを

今からおよそ6年前の秋葉原には、メイドカフェやアイドルの劇場などをはじめとした男性向けの店があふれ、そこで働く女性たちはたくさんいても、女性向けの美容に関する店はほとんどありませんでした。

「留学先から帰国し、日本の大学に入った僕は、起業したい気持ちがありました。母がアイリストをしていることもあり、秋葉原の現状を知ってから、この街で美容に関する店を出せばいいのでは……と思ったんです」

美容のなかでもネイルというジャンルを選んだのは、秋葉原に集うアニメ好きな人たちが、好きなアニメにお金を使い、特に日常的に身につけられるアイテムを買っていると知ったから。

「ネイルだとアニメのデザインとくっつけやすいんです。ちなみに、日本人女性でネイルを日常的に楽しんでいるのは3割程度。残りの7割の中には、仕事の事情でネイルができないなどの理由を抱える人もいますが、ファッション・おしゃれ全般に興味がない人もいます。

また、『美容よりも、アニメや漫画などの好きな作品にお金をかけたい』という秋葉原に集うオタク女性たちも含まれます。彼女たちが好きなキャラクターを爪に模写する痛ネイルができるとなると、ネイルに興味を持ってくれるんじゃないかと考えたんです」

■天才!? 模写技術が高すぎるネイリストとの出会い

店舗オープンまでの動きは迅速でした。模写できるネイリストを探す前に、2013年1月に不動産を契約し、DIYで2カ月ほどかけて内装を整え、Venus Ricoはその年の4月にオープンしました。

およそ半年間は、『あの花』推薦者に紹介してもらったニコニコ動画の歌い手やボーカロイド(※)と公式コラボする形で、曲やPVの世界観をネイルに落とし込む形での“簡易的”な痛ネイルを提供していたといいます。

緻密な模写を行う現サービスのような痛ネイルを提供したくても、それができるネイリストを探し、高いクオリティを担保するのは簡単なことではありません。

そんなとき、SNS上で採用を呼びかけたところ、応募してきたのが冒頭の小林由佳さん(@yuka_n.art)でした。

小林由佳さん作・岸辺露伴(『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』に登場するキャラクター)のネイル。爪の上に乗っているキャラクターを含めてすべて自作。

「たまたまSNSの告知を見て応募しました。オープニングスタッフとして入りたかったので、タイミングが良かったんです」(由佳さん)

鹿島さんは由佳さんが面接で持参した作品に度肝を抜かれたと振り返ります。

美術と生物の授業が好きで、細かい作業が得意だった彼女は、当時からハイレベルな模写技術を持っていたため、即採用されることに。

しばらくは、由佳さんから他のメンバーへ模写の指導をするなど、練習に練習を重ね、ネイリスト皆が同じレベルでの模写技術を持つようになってから、現在の形での痛ネイルをサービスとして提供開始したのでした。

小林由佳さんによるネイルデザイン。『ONE PIECE』の感動的なシーンが自分の爪の上に描かれると思うと胸がアツくなります。

小林由佳さんによるネイルデザイン。『NARUTO』や『おそ松さん』『進撃の巨人』『セーラームーン』など超人気作品がずらり。

■元気に生き抜く力をくれるネイル

それから約5年。インスタグラムをはじめとするSNSを見た人や紹介経由の人がVenus Ricoの一見さんからリピーターとなり、アニメ系イベント前の土日ともなると、痛ネイルを希望する顧客が殺到するようになっています。

模写の対象はアニメのキャラクターでなくても、イラストであれば基本的に何でもOK。Venus Ricoのインスタグラムを見ると、アルコールのロゴや缶のデザインを痛ネイルにしてほしいと訪れる女性もいたようです。

その方が同ブランドの営業さんなのかどうかはわかりません。でも、組織に所属する人が組織のロゴやマークをネイルに入れることで、名刺交換をした相手との会話が盛り上がるきっかけを作れる可能性は高くなります。

自分が好きなもの、大切にしているもの、誰かとのコミュニケーションの材料にしたいもの……それらを爪に宿らせることで、楽しいことばかりじゃない、しんどいことも起きる日々を元気に生き抜いていける。

1日に何回も、何十回も視界に入る痛ネイル。桜木花道くんと流川楓くんの凛々しく、涼やかな表情。彼らの青春を象徴するユニフォームナンバー。

作業を一時中断して、まじまじと見つめる瞬間、「がんばろう」という気合いやポジティブな感情、キュンとする感覚など、私たちにエネルギーを授けてくれる、尊いおしゃれアイテムなのだと思いました。

(編集後記)

海外ではネイリストの社会的地位はとても高く、給与水準も高いと鹿島さん。一方で、日本人ネイリストの技術力はとても高いのに、海外のそれとは比べ物にならないと言います。

鹿島さんの「海外にも痛ネイルで出店するなどして、日本の技術の高さを伝えたいし、ネイリストの地位を向上させたい。と同時に、ネイルそのものをファッションの一部として、より注目されるジャンルにしていきたい」の言葉が印象的でした。

Venus Ricoにはネイルサロンでの施術が初めてという人も多く、仕上がった痛ネイルを見た顧客は皆感動し、友人から褒められたり、自分に自信が持てるようになったりと、ポジティブな変化を語る声が多く寄せられています。

彼女たちを幸せな気持ちにしているのは、由佳さんをはじめとする高い技術力を持ったネイリストの皆さん。施術を受けた人、ネイルを目にする人に感動を与えてくれるネイルという極小のアートをこの先も生み出し続けてほしいと願います。


※『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』:2011年4月〜6月まで放送されたアニメ作品で、埼玉県秩父市が舞台となった青春物語。略称は『あの花』。2012年に漫画化、2013年8月には劇場版が公開され、2015年9月には実写ドラマが放送された。

※ボーカロイド:ヤマハが開発した音声合成技術、その応用製品の総称。ボカロとも呼ばれる。メロディーと歌詞を入力して、キャラクターに歌を歌わせる音楽ソフトの名称。ボカロを代表するキャラクターとしては、初音ミクが有名。

取材・Text/池田園子
編集・Photo/小林航平

取材協力/Venus Rico

秋葉原にある痛ネイルの模写技術をはじめ、手描きによるアートと繊細なデザインに特化したネイルサロン。常時200種以上の定額アートを用意するほか、毎月新作ネイルも更新。高品質・手描きの緻密さにこだわり、他店とは違ったネイルサロンを目指す。ネイリスト向けの痛ネイルセミナーなども開催。伊藤潤二さん、『ハリー・ポッター』など著名人や企業、作品とのコラボ商品も多数。著書に『セルフアニメネイル 自分でできる推しキャラネイル』(主婦の友社)がある。

公式ホームページ

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小林由佳プロフィール

NailSalonVENUSRICOのオープニング施術スタッフ。現在は施術の他にアートセミナーにて技術指導もしている。

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DRESSでは7月特集「”私らしさ”をつくる人」と題して、ファッションの分野でモノづくりをする方たちの仕事や想いをお届けしていきます。

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DRESS編集部

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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