ファッションの力で女性の悩みをポジティブに。「EMILY WEEK」が目指すのは選択肢の広がった世界
女性の生理週間を軸としたアイテムが揃う「EMILY WEEK」のブランドコンセプターである柿沼あき子さん。「ファッションの力でサニタリーライフをポジティブに変えていきたい」と語ります。女性特有の悩みに着目して立ち上げたブランドの誕生から、これからの展開について、お話を伺いました。
毎月くる生理によって、心身ともに不調が現れることや悩みを相談できる場が少ないなど、生理週間を快適に過ごすことができない人も多いのではないでしょうか。
女性の生理週間に合わせてライフスタイルを提案するブランド「EMILY WEEK(エミリーウィーク)」は、柿沼あき子さんがアパレルブランドを展開するベイクルーズの社内新規事業提案コンテストで立ち上げました。
天然素材で作られるショーツやホルモンバランスの変化に合わせてブレンドされたアロマグッズなど、サニタリーライフをポジティブに変えていくアイテムが揃います。そのような商品を通して、「生理をタブー視せずに自分の身体と向き合ってほしい」とブランドに込められた想いを話してくださいました。
■世界共通にある女性の悩みをサポートしたい
――「EMILY WEEK」というブランドを立ち上げられたのは、どのようなことがきっかけだったのでしょうか。
ベイクルーズの新規事業提案コンテストにおいて、女性の生理をポジティブに変えていきたいと思い、生理週間を軸としてアイテムを揃えるセレクトショップの提案をしました。
前職はWEBの企業で働いていたのですが、やはり長時間労働になると「生理が辛くて……」と同僚からの悩みを耳にすることや、女性同士でさえもあまり話さないテーマであると実感していました。
でも1カ月の中で一回くる生理週間をネガティブに過ごすことは残念ですし、女性にとっては世界共通の悩みでもあるので、少しでもポジティブな意識に変えていけたらと。
――男性社員の方も含めて周りからの反響はいかがでしたか。
選考にあたり男性役員にプレゼンをするのですが、PMS(月経前症候群)をはじめ女性ホルモンによるバイオリズムが日常生活にまで影響を及ぼすことなど、「知らなかった」と理解を示してくれました。
ベイクルーズではお客さまが女性の7割を占めているからこそ、「ファッションの力で外見だけでなく、内面的な部分もポジティブになるようサポートしたい」との想いを応援していただけたことは、嬉しかったですね。
――柿沼さんご自身も10代の頃からPMSに悩まされていらっしゃったとか。
生理前になると過呼吸のような症状と貧血になることが多く、学生の頃から本当に憂鬱でした。身体に不調があるのかなと思い、産婦人科に通いましたが異常はなく……それが後からPMSであると知りました。
少しでもそんな生理週間を良くしたくて、あるとき「布ナプキン」を使ってみたんです。そしたら、肌触りがとても気持ちよく安心感があり、すごく解放された気分になりました。
――女性の生理用品と言えば、紙ナプキンがまだまだ主流です。
自分も紙ナプキンを使うことが固定観念のようにありましたが、それ以降ほかのサニタリーアイテムもいろいろと試すようになって。
新しいアイテムを試したい気持ちから、今まで見ないようにしてきた生理が少しずつポジティブなものに変わっていきました。同時に「あらゆる選択肢から、自分の身体にあった生理期間中のスタイルを見つけることができたら、毎月楽しく過ごすことができるんじゃないか」と考え始めたんです。
(写真左から)女性ホルモンのバイオリズムを4つのWEEKに分けて時期ごとにブレンドされた精油と、リニューアルしたロールオン2種類。イライラを鎮静したりリラックスしたりと、ブルーな日こそ香りの力を借りて。
「HONEY & HERB」とEMILY WEEKのオリジナルブレンドハーブティー。花束をイメージして作られたティーバッグは、「気持ちが沈んでしまうときも、お茶を入れる時間が癒しとなるように」と考案したもの。
■女性ホルモンのバイオリズムに寄り添った商品を
――そのような経験も踏まえて生まれた「EMILY WEEK」ですが、女性ホルモンのバイオリズムを4つの時期に分けて、商品の提案をされているところがユニークですね。
生理週間だけに着目するのではなく、女性ホルモンのバイオリズムに寄り添った商品をセレクトしています。
「RESET(月経期)」は生理に関するアイテムを中心に、「ACTIVE(月経後1週目)」はダイエットやスポーツのアイテム、体の調子がだんだんと下り坂になる「NEUTRAL(月経後2週目)」は眠りが深くなるものを、PMSの症状が出やすくなる「BALANCE(月経後3週目)」は幸福感を得られる香りや素材にフォーカスしたアイテムを取り扱っています。
ベイクルーズはファッションカンパニーなのでファッションに特化したアイテム――体を締め付けない下着や心地よい素材を使ったルームウェアなどは今後も増やしていく予定です。ファッションの力で気持ちよく過ごせる商品のラインナップを心がけています。
女性ホルモンのバイオリズムを4つの周期に分けた図。(画像提供:EMILY WEEK)
――期間限定で青山の路面店にオープンされましたが、生理週間に着目した新しいショップとして話題となりました。
プレスリリースやSNSでご覧になられた地方からのお客さまも多くいらっしゃいました。また、カップルでお店に来られて、男性が彼女の悩みを聞いてプレゼントされた方まで! 今まで生理用品はドラッグストアで購入する機会が多い中で、洋服を買うときと同じようにサニタリーアイテムを選べるお店は、日本だとまだ珍しいものなんだなと実感しました。
――海外と日本のサニタリー事情の違いはありますか。
海外では「生理をポジティブにしよう」と、生理用品だけではなく概念自体をチェンジする動きがあるほか、NYのブランド「THINX(シンクス)」はトランスジェンダーの方も意識した経血吸収下着を生み出して注目されています。
日本だとサニタリーアイテムのデザインが、ファンシーで可愛らしいか、またはベージュや黒の味気ない色合いが多く、身につけてテンションが上がるものが主でした。けれど私は、スタイリッシュでミニマムなアイテムを作りたいと思ったんです。肌が敏感になりやすい時期だからこそ、コットンやシルクなどの天然繊維の素材でバックアップして、おしゃれで心地よさを感じられるデザインに重点を置いています。
■私たちの世代から選択肢を広げていくこと
――EMILY WEEKは来月に一周年を迎えられますが、今後の展開を教えてください。
9月で一周年を迎えることもあり、9月14日~9月30日までアトレ恵比寿にてポップアップを開催します。新商品や限定アイテムを置く予定なので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
生理用品や生理に対する意識は主に、母から娘に伝わるものだから母親世代の選択肢が変わらない限り娘世代も変わりにくいもの。だからこそ、私たちの世代で生理をポジティブに捉えて、より選択肢の幅を広げていきたいですね。
これからも女性がもっと生理や女性特有の悩みについて相談しやすい環境や快適に過ごせるアイテムを、EMILY WEEKが提供していければと思っています。
柿沼あき子さんプロフィール
「EMILY WEEK(エミリーウィーク)」ブランドコンセプター。2017年9月にベイクルーズの新規事業提案コンテストで同ブランドを事業化。生理週間を軸とした女性のバイオリズムに寄り添うライフデザインを提案。
雑誌&書籍の編集を経てフリーエディターに。ファッション・美容・カルチャーと幅広く担当。週2スイムと週3ゴールドジムで筋トレ好き。