ヒュッゲとは、デンマークとノルウェーの「居心地のいい雰囲気」というニュアンスを伝える言葉。「仲間との絆」や「思いやり」も意味します。
気づきが自分の内面に目を向けることなら、ヒュッゲは自分の外面、人とのつながりや周りのものに目を向けること。自分の人生や人との触れ合いにおける、ささやかなできごとによろこびを見いだすことです(中略)
でもこうしたイメージばかりが北欧の暮らしだと誤解しないで(中略)
ヒュッゲは、完璧なものでも特別なものでもありません。
(6・7ページより引用)
ヒュッゲを取り入れて、心地よく満たされる暮らしのススメ
【積読を崩す夜】32回目では、『HYGGE 北欧が教えてくれた、「ヒュッゲ」な暮らしの秘密』(著:シグナ・ヨハンセン)ご紹介します。暑いうえに忙しい毎日、本来の自分を見失わないように生きていきたいもの。北欧の「ヒュッゲ」な考え方を、いつもの日々に活かすポイントを探ります。
一気に夏らしくなりました。何かと忙しい毎日。旅に行きたいけれど、日々の生活に追われて過ごしている方も、多いのではないでしょうか。
日本でも注目される、北欧の人々の生き方「ヒュッゲ」。豊かで満たされた北欧の暮らし方・考え方を、現代の生活に気軽に取り入れるコツをご紹介します。
■ヒュッゲは「完璧で特別なこと」ではない
イギリスのメディアに多数出演し、食やレストラン関係の書籍も手がけるなど、マルチに活躍するノルウェー出身の著者。
スタイリッシュな北欧の暮らしに、多くの人がなんとなく憧れを抱くものですが、それは無意識にヒュッゲを感じているからではないかと著者は語っています。
北欧といえば、ニシンの酢漬けやミートボール。インテリアはシンプルな白で統一して、コーヒーをたくさん飲むというイメージ。
それは、暗くて寒い日の続く気候の中で生きていく上での北欧に住む人々の知恵。生活全般に対して、他の地域と異なるビジョンがあるようです。
しかし、ヒュッゲは完璧で特別なものではないと著者は言います。北欧の暮らしを、ただ崇めるのではなく、人生を最大限よく生きるための手軽な手引きとして、誰でも自分の生活に取り入れることができるのだとか。
ヒュッゲの基礎は、シンプルさ。日常のプレッシャーから離れて、限りある命を最大限に楽しむ。さらにいえば、自分や周りの人たちへのいたわりの気持ちが中心にあるようです。
住む国が違っていたとしても、生活にヒュッゲを少し取り入れると、なんだかハッピーになれそう。あまり硬く考えずに、カジュアルにヒュッゲを体感してみたくなります。
■自然に癒しを求めるのも柔軟な考え方で
人間の心や体は、本来自然と密接に関係しています(中略)
すぐにはじめられそうなのは、ガーデニング。多くの医師が、健やかな心と体のためにガーデニングをすすめています(中略)
お話ししたように、自然をテーマにした絵や映像を見るだけでもリフレッシュできます。ソーシャルネットワークを使っているなら、自然やアウトドア、ガーデニング、ランドスケープ関連のアカウントやコミュニテイー、フォトグラファーやライターをフォローしてみては。
(16・24ページより引用)
北欧では自然がお手本であり、人々は自然とともに歩んでいます。その根底にあるのは、長く暗い冬と戦うのではなく、寒さを受け入れてどう過ごすか、どう共存して工夫するかという考え方に基づいているのだと著者は言います。
激しい寒さの中にあっても、キャンドルを灯しておいしいケーキを囲み、美しいインテリアの中でリラックス。アロマオイルで春の香りを楽しむのも、賢いアイデアのひとつだといえるでしょう。
現在、ロンドンで過ごす著者は、ノルウェーに住んでいた頃には、森に花を摘みに行ったり、クロスカントリーをしたりして、日常のプレッシャーから解放されていたとか。自然の中で息抜きできる時間がたくさんあったのですね。
それにひきかえ、ロンドンの喧騒はストレスフルで、ときに逃げ出したいレベルに達するのだとか。たしかに、少し自然に触れるだけでリフレッシュできるという感覚は、私たちも理解できるところです。
そうはいっても、毎日そう簡単に、自然の中へと遊びに行けるわけではありません。すぐに始められることとして、著者はガーデニングを挙げています。自然が身近になければ、SNSなどで、自然をテーマにした絵や映像を観るだけでもリフレッシュできる、とも。
自然に癒しを求めるというあり方は、あまり難しく考えなくてもよいのかもしれません。
■アクティブでいることは生きることそのもの
もっとも重要なことは、一年中いつでもどこでもアクティブであること。それこそが、北欧の人々にとって生きることを意味します(中略)
心身ともに健康であるためには、ありのまま自然に身を委ねるのが一番よいのです(中略)
気のすすまないスポーツはしなくていいのです。たのしいという気持ちを大切に、自分がハッピーになれるものを見つけるべき。
(30・35ページより引用)
北欧の人々は、気候や季節に関係なく、外に出かけて過ごすのだといいます。
ヒュッゲの重要な要素として、自然の中でアクティブに過ごすということがあります。無理してスポーツジムに通うよりも、自然の中で過ごすあり方をチョイスする。そこにヒュッゲな暮らしがある。
外で過ごすということは、ストレスが軽減されるだけではなく、日光を浴びることでビタミンDが生成され、野外で筋肉を収縮させることで、脳はポジティブ思考に向かう効果も。
方法は、単に遠方へアクティビティをしに行くということだけではなく、近所の散歩でもよいのかもしれません。
だからといって、気のすすまないスポーツを無理やりする必要はないと著者は語ります。少しでも外に出て、自分が楽しいと感じる時間を、自然の中で過ごす時間を作り出す。
ストレスフルな毎日だからこそ、形にとらわれずに工夫。心身の健康のために、ヒュッゲな時間を取り入れていきたいものです。
著者 シグナ・ヨハンセンプロフィール
ケンブリッジ大学で考古学と人類学を修学後、ロンドンのリーズ・スクール・オブ・フード・アンド・ワインで料理とワインを学ぶ。ロンドン大学のSOAS食研究センターで修士号取得。「スピリティッド・ウィメン」共同オーガナイザー。イギリスのメディアに多数出演、食やレストラン関係の書籍も多く手がけ、マルチに活躍。