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「私なんて太ってるから」って言うのやめない? M〜6Lまで展開するブランドのデザイナーが伝えたいこと

M〜6Lまで幅広いサイズ展開をするブランド「モンスタードロップス」のデザイナー、SUSIEさんにインタビュー。現在は「大きいサイズのブランド」ではなく、「サイズ=ファッション」のコンセプトを掲げて商品展開している。

「私なんて太ってるから」って言うのやめない? M〜6Lまで展開するブランドのデザイナーが伝えたいこと

試着室から笑顔で出られない。試着室から出たくない。

ドット柄のトップスを見ていると、店員さんから「無地のほうが細く見えますよ」と声をかけられた。

試着室から「この服も入らなかった……」と沈んだ表情で出てくる彼女や奥さんを見るのが悲しい。どう声をかけていいかわからない。

自分のサイズに適した服がない――。そう気づいたとき、世間から外れているような気持ちになる。

体型に特徴のある女性、たとえばふくよかな女性は装いにおいて、傷つく経験を幾度となく積み重ねてきた人たちだ。

■「太ってる」と感じさせない。「かわいい」が全面にくる服

M〜6Lまで豊富なサイズの洋服を展開するブランド「モンスタードロップス(MONSTER DROPS)」のデザイナー、SUSIEさんはほっそりした人、中肉中背の人、ふくよかな人など、体型に関係なく「女性はみんなかわいい」「一人ひとり魅力は違う」と話す。

「お客様にはふくよかな女性も多いです。第一印象が『太ってる』じゃなくて、『かわいい!』と感じさせる洋服を作っています」

モンスタードロップスの服はポップで、色っぽさもあり、どこか「ハズした」感じもある。周りとかぶらない、甘い毒を漂わせている。そんな印象も受ける。

ある女性シンガーソングライターが以前、モンスタードロップスの洋服を買いにきたときに、「ここの服は甘い。スキがある。だから着たときに、自分の個性を出せる」と話したという。

「個人が入るスペースを残した上でデザインしているので、そんな感想をいただけたのは嬉しかったですね」

■体型とかわいさ、カッコよさは無関係

アパレル企業、レナウンでデザイナーとして8年近く勤めた後、自身のブランドを立ち上げるために独立したSUSIEさん。多方面から引き合いがあり、短編映画や舞台の衣装を担当することになった。

「舞台は男性芸人さんたちが出演するものでした。体がものすごく大きい人もいれば、細い人もいて、体型はバラバラ。

パリコレの衣装やメイクを参考にして女装させたり、思いっきりカラフルな衣装を着せたりしました。衣装とヘアメイクで、とてもかわいく、カッコよく、おしゃれになるんです。

その仕事をしたとき、体型とかわいさやカッコよさ、おしゃれさって関係ないなと思いました。その頃から人の魅力ってなんだろうと考え始めたんです」

男性芸人さんたちの衣装を担当した流れで、2004年に舞い込んできたのが、人気女芸人・森三中さんのスタイリストをする仕事だった。

3人と接するようになって初めてSUSIEさんは、ふくよかな女性が置かれていた劣悪なファッション環境を知ることになる。

■「こうすればもっとかわいい」と思いながら作ってきた

大きいサイズの服が完全になかったわけではない。黒や茶などの暗めな色で、合繊のとろみのある素材の“どろーん”として見えるものだったり、通常サイズを単に大きくしただけの、体を余計に大きく見せてしまうものだったり、あったとしても到底おしゃれを楽しめるものではなかった。

「作り手が『(体に服が)入ればいい』という発想なので、ひどいものだとトップスの袖が左右逆に付いていたり、ジャケットが着られても前で閉まらなかったり、首元やアームホールが小さすぎたり、糸の色が途中から変わっていたりするものもありました」

そんな有様だったので、3人の中には男性モノを着せられるメンバーもいたという。ファストファッションに頼ろうと思っても、当時はGUやH&Mなどもなく、ZARAくらいしかない。サイズも多くあるわけではない。

過去にリメイクした洋服の一例

そこでSUSIEさんはリメイクを始める。大きいサイズが比較的充実しているGAPで一番大きいサイズのトップスを買い、脇を切って布を足すこともあった。

パンツはデニムがメインで、男性向けのデニムを買って、かわいいレースを付けるなどして、3人が本来持っているかわいらしい魅力を最大限に引き出す工夫を凝らした。

「お三方のスタイリングをしていたとき、『太っているからこうしたほうがいい』みたいな発想はまったくなかったです。『こうしたらもっとかわいい』『この服はとても似合っておしゃれだろうな』みたいな思いで、突き進んでいましたね」

人は一人ひとり違う魅力がある。透き通るような肌、もっちりした質感が伝わるような肌質、印象的な瞳、癒し系な丸顔、人を幸せにする輝く笑顔etc.装うことで、それぞれの良いところを強調して見せるのがSUSIEさんの願いだ。

■「おしゃれしないとただのデブ」の言葉で気づいたこと

モンスタードロップス立ち上げを後押ししたのは、多くの女性たちからもらったメッセージだった。中でもSUSIEさんが今でも覚えていて、ときどき思い出すのは、専門学校生だったふくよかな女性の言葉だ。

「私太ってるから、おしゃれしないとただのデブなんだよね」。

この言葉が象徴するのは、自分のことをどう認識するかによって、自分自身の在り方が変わってくるということ。

「『もう年だしおばさんだから』なんて思うと、おばさんカテゴリに入りますよね。自分を『ひとりの女性』だと思うと、女性カテゴリに入る。自分がそうありたいと思う自分をイメージして、そんな自分でいようとポジティブに思えるブランドを作ろうと、モンスタードロップスをスタートしました」

決してはじめから順風満帆だったわけではない。ふくよかな女性向けの、カラフルでポップな明るい印象の服を出すブランドとして立ち上げたところ、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に「ちんどん屋みたい」「サーカスの衣装みたい」などと批判された。

最初に発表したコレクションの一例。

最初のコレクションを目にした男性からは「フフッ」と冷笑された。

周りからは「売れない」と言われ続けたなか、見事完売したチュチュスカート。

思いっきりカラフルなマドラスチェックのチュチュスカートを作ったところ、周りからは「絶対に売れないからやめたほうがいい」と言われた(結果的にそれは完売)。

あれから11年。実店舗や各地の百貨店でのポップアップショップなどで、認知度を上げたモンスタードロップスには、リアル・ネット含め全国からお客様が集まる。

そこには、「体型とかわいさやカッコよさ、おしゃれさは無関係」「一人ひとりの魅力を引き出す服を」という信念を曲げない、まっすぐなモノづくりにあふれる愛があった。

(編集後記)

モンスタードロップスというブランドの展開だけでなく、女性たちのキレイやカッコイイを発信したり、自信を持って活動するための支援をしたりするプロジェクト「Beaupies(びゅーぴーず)」の準備も進めるなど、女性一人ひとりの魅力を肯定し、より素敵に見せるお手伝いをしているSUSIEさん。

ブランドコンセプトの「オンナノコはみんな可愛い!」がSUSIEさんの根底にあって、それが原動力となって彼女を突き動かしているように思えた。

Text・Photo/池田園子
(洋服の写真はSUSIEさん提供)

SUSIEプロフィール

株式会社レナウンに8年勤務。退社後にフリーランスのデザイナーになり、株式会社スージードロップスを立ち上げる。衣装のデザインやスタイリングに関わるなか、女芸人の森三中と出会いスタイリストに。
2007年、ぽっちゃり体型だけどおしゃれがしたい女の子にむけたブランド「MONSTERDROPS」をスタート。2012年6月、ブランドリニューアルをして「大きいサイズのブランド」ではなく「サイズ=ファッション」の新コンセプトに変更し、レギュラーサイズから幅広く展開する。著書に『ぽっちゃり姫のおしゃれBOOK』がある。女性のためのプロジェクト「Beaupies(びゅーぴーず)」を準備中。
http://www.monsterdrops.com/

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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