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ロイヤルウエディング・ケーキに見る、新しいイギリスらしさ~ロンドン通信#01

ロンドン在住で紅茶のスペシャリストとしても知られるスチュワード麻子さんの連載がスタート。初回は5月のロイヤルウエディング・ケーキのエピソードと関連するエルダーフラワーを使ったコーディアルのレシピも紹介いただきました。

ロイヤルウエディング・ケーキに見る、新しいイギリスらしさ~ロンドン通信#01

5月に行われたロイヤルウエディングは、これまでの伝統から一歩外に出た演出が話題となり、今でもイギリスのメディアで取り上げられています。

そのひとつがウエディング・ケーキ。

■イギリスの伝統的なウエディング・ケーキ

イギリスではウエディング・ケーキはリッチ・フルーツ・ケーキと言って、大量のドライフルーツ(レーズン、カランツ、サルタナなど)入のどっしりした生地で作ります。

この生地はクリスマスケーキやバースデーケーキに共通で使われるもので、正しく作ってアイシングをしっかりかければ2年以上持ちます。

伝統的なウエディングケーキの場合、一番上の段は新郎新婦が持ち帰って保存し、最初の子供の洗礼式でゲストに振る舞われるのが古くからのしきたり。

さすがに外側のアイシングは固くなっていて食べられませんが、内側は驚くほどの状態で保存されていることがほとんどです。

2段目以下のケーキはその日のうちにカットされて、コーヒーと共に出されることもありますが、ロイヤルウエディングでは箱に入れてお土産として渡されたと聞いています。

■新しいけれど、十分にイギリスらしいウエディング・ケーキ

そんな伝統があるウエディングケーキですが、プリンス・ハリーの結婚式では、レモンとエルダーフラワーを使ったケーキを選ばれて話題になりました。

さまざまな形でこれまでの王室のしきたりや常識を破った今回のウエディングですが、ケーキに限って言えば、伝統からは離れたものの、イギリスらしさを十分に含んでいます。

その理由がエルダーフラワー。

今回はロイヤルファミリー所有のエステートであるサンドリンガムがある、ノーフォーク州産のエルダーフラワーが使われました。

エルダーフラワーは西洋ニワトコのことで、イギリスが原産の植物。5〜6月の間に可憐な小さい白い花を咲かせます。昔からイギリスではエルダーの木の皮、花、実をハーブとして生活に役立て、また夏至の前夜の真夜中にエルダーの木の下に立つと妖精に会えるという言い伝えもあります。

■エルダーフラワーを使ったコーディアルのレシピ

我が家はロンドンとは言っても比較的緑の多い地域に住んでいるため、周囲にエルダーフラワーが生えているところが数箇所あり、私は毎年自宅近くでエルダーフラワーを摘んでコーディアルを作ります。

数年前に日本でも人気になったコーディアルは、多くの場合フルーツで作る濃縮されたシロップで、水や炭酸で割って飲みます。

フルーツならラズベリーやブラックカランツなど、さまざまな種類のコーディアルがありますが、花を使うのはイギリスでも他にあまり例がありません。

作り方は至って簡単。エルダーフラワーの花を25〜30ヘッド(小さい花が集まって紫陽花のようにひとつのヘッドを作っている)集めたら綺麗に洗います。

鍋で1.5キロの砂糖と1.5リットルの水を沸騰させ、砂糖を溶かしてシロップを作り、冷ましておきます。

レモン2個を輪切りにし、エルダーフラワーの花、クエン酸と共にボウルに入れ、シロップを注いで6時間〜1晩置いておくだけ。できたシロップは丁寧に濾して保存容器に入れます。

1日中花の香りがキッチンいっぱいに広がって幸せな気分になれますし、家族にとっては家の中にこの匂いがするのが初夏を感じるひとときになっています。

できたシロップは水や炭酸水で割ると、見た目がシャンパンに似ていて、アルコールが飲めない方にも好評です。

■エルダーフラワーでイギリスの初夏の香りを楽しんで

イギリスではジン&トニックに少し加えることもあり、これも爽やかなカクテルになります。飲み物だけでなく、ゼリーなどデザートにも使えますし、ロイヤル・ウエディング・ケーキのようにケーキやクリームの華やかな香り付けにも便利。

日本でもエルダーフラワーコーディアルは販売されています。今夏はロイヤルなイギリスの初夏の香りを楽しんでみてはいかがでしょうか?

スチュワード麻子

イギリス・ロンドン在住。イギリスと日本で紅茶スクール「インフューズ・スクール・オブ・イングリッシュティー」を主宰。著書は『英国スタイルで楽しむ紅茶』(河出書房新社)など5冊。 雑誌への執筆の他、日本、英国内での講演活動を行...

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