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私たちは、自分たちの快楽を見つける旅路にいる/『OMGYes』がつくる言葉の地図

『OMGYes』は、女性の性的な快楽を研究し、その調査結果を動画などのコンテンツで発信しているアメリカ発のウェブサイトだ。日本語版もリリースされ、注目を浴びている今、運営者のひとり、キャロルさんに話を聞いた。

私たちは、自分たちの快楽を見つける旅路にいる/『OMGYes』がつくる言葉の地図

セックスが難しいのは、実践で「やり方」を覚えていかなくてはならないからだと思う。

セックスのハウツー本や、アダルトビデオを参考にする手もあるが、それでも試してみないことには、そこに紹介されているやり方が、自分と相手とにフィットするか、わからない。

それに、ハウツー本もアダルトビデオも、「相手を気持ちよくする方法」のバリエーションを学ぶには役立つが、「自分が気持ち良くなる方法」を知りたい場合は、少し難しい。

そもそも「自分が気持ち良くなる方法」を知っているのか、という問題もある。

イき方のコツや、好みのタッチなど、なんとなくはあったとしても、それを上手く言語化するのは意外と難しい。相手にきちんとそれを伝えられるかという不安もあるだろう。

日本ではずいぶんと長い間、性的に奥ゆかしい女性や、たとえ奔放に見えても、いざとなれば手に負える女性(=自分の手で、これまでとは比べようもない最上の快楽を、知らしめることのできる女性)が、望まれてきた。

もちろん全員がそうだというわけではないが、性に積極的だったり、快感に貪欲な女性は「はしたない」という言葉で貶められることさえも、あった。

しかし、時代は変わった。

いま、自らの性欲に自覚的であることは、なにも恥ずかしいことではない。むしろ、セックスを楽しむことが、人生を豊かに送るためのひとつの大切な要素ともされている。

■明確な言葉を持たない「女性の快楽」

しかしそんな世の中であっても、女性が、自らの言葉で作り上げた「快感」の共通言語はない。

例えば男性の場合、

・深く咥えたフェラチオを望むなら「ディープスロート」

・仁王立ちのポーズで乱暴に喉奥に挿し込みたいのならば「イラマチオ」

・先端だけを責めて欲しい場合は「亀頭責め」

といった言葉を伝えれば、相手の女性に伝わる。

一方、女性の場合はどうだろうか。
せいぜい「優しく舐めて」「激しく舐めて」というあやふやな表現で伝えるしかない。

女性たち自身の言葉で、言語化がされていない「女性の快楽」。これをきちんと言語化することができれば、女性たちは、これまで知らなかった、これまでよりも強い快感を、得ることができるのではないだろうか――実はその試みを実際に行っているウェブサイトがある。

■女性の快感を研究して生まれたウェブサイト『OMGYes』

それがアメリカ発の『OMGYes』だ。

『OMGYes』は、女性の性的な快感を調査し、その調査結果を公表するために開発された学術的なウェブサイト。メインのコンテンツとして18 歳から 95 歳まで 2000 人以上の女性を対象として行ったリサーチから導き出した快感の“実践レシピ”が紹介されている。

『OMGYes』のキャプチャ画面

具体的にいうと「じらしプレイ」「リズムプレイ」「じわじわプレイ」「さみだれプレイ」「不意打ちプレイ」「ピンポイント責め」「クリトリス・ミルフィーユ」「指先の旋回バリエ」など具体的な12個のエピソードに分け、それぞれがどういうものなのか、実際にどういうやり方で行うのかを、女性たちが自ら説明した動画を観ることと、タッチビデオと呼ばれるインタラクティブなトレーニングのためのコンテンツで、実際に練習をすることができる。

現在公開されているコンテンツは「シーズン1」と呼ばれ、購読料は3400円。

実際にサイトにアクセスしてみたところ、まずアップされている動画に驚いた。登場しているのは役者ではなく「個人的な体験を分かち合いたいという熱意を持ち、女性の性感に関する真実をはっきりさせたいと願っている一般女性」だというが、みなイキイキと性について語るだけではなく、時に実際にカメラの前で、“実践レシピ”を披露してくれる。

ようはマスターベーションをする姿を見せてくれるのである。

もちろん、男性向けのアダルトビデオであるような「男性を興奮させるための、作られたオナニー」ではなく、実際に彼女たちが快楽を得るために試している方法だ。

なかなか同性が本気でマスターベーションしている姿を目にする機会はない。「他の人はこうやってオナニーをしているのか」と、とても興味をそそられた。

もうひとつのコンテンツであるタッチビデオは、ゲーム感覚で楽しめる。実在する女性の性器をマウスでタッチして、満足させる方法を探る仕組みとなっているが、「こういう触り方があったのか!」と、こちらもとても勉強になった。

『OMGYes』は、大学のルームシェア時代からの友人同士であるリディア・ダニラーとロブ・パーキンズによって設立され、そのふたりを中心に、科学的で実用的な女性の性感に関する資料づくりに情熱を持つ「研究者」「映像作家」「エンジニア」「デザイナー」「教育関係者」「性科学者」などの専門家によってなりたっているという。


その運営元にいくつかの質問を投げかけてみた。

■『OMGYes』の運営者に話を聞いてみた

――『OMGYes』にアップされている動画には、利用者からどのような反響がありますか?


嬉しい反響が圧倒的に多いですね。メールやフェイスブックでコメントがどんどん寄せられています。

お互いに愛し合い、何年も幸せな結婚生活を送ってきたカップルが『OMGYes』を試してみたところ、これまでにない素晴らしいセックスになったといいます。

また、これまで一度もオーガニズムを経験したことがなかった女性が、『OMGYes』を試した夜に、三回続けてオーガニズムを得られたという声もあります。

それから、自分ひとりでもパートナーと一緒でも、快感を得る方法がしっくりこなかった女性が、『OMGYes』に出会って、同じような経験をしていた女性が他にもいることを知って嬉しかったといった反響も――。

こうしたコメントを読むと特に嬉しいですね。このようなリアクションが続々とくるので、毎朝オフィスに行くのが楽しみで仕方がありません。


――日本の男性は、女性の性の具体性を嫌う傾向にありますが、『OMGYes』がそういった事態をどのように改善していくと思いますか?


『OMGyes』のユーザーは女性だけではありません。

それには理由があります。カップルのうちのひとりが、これまでよりも快感を得られたときは、もうひとりも同じように快感を得られるからです。

「上げ潮はすべての船を持ち上げる(※)」という言葉の通り、ふたりともが喜びを感じているときは、セックスの回数も増えて、誰もが恩恵を得ることができるのです。

※上げ潮はすべての船を持ち上げる:ケネディ元大統領がスピーチで好んで用いた格言。世の中が好景気な時には企業や個人など、誰もが恩恵を受けられるという意味。

――最近日本では、「性の多様性」が少しずつ認められてきていますが、それでもまだ女性が「こうして欲しい」とは言いにくい風潮にありますし、男性のセックス(挿入し射精することを目的としたセックス)に女性が合わせていることも多くあります。アメリカでの性の現状はどうなのでしょうか。


これまでの歴史において、日本とアメリカを含めほとんどの国で、女性自身が見つけた「快感を高める方法」を話したり共有したりすることはまずありませんでした。

ですが、女性はいつの時代も自分で、快感を高める方法を見つけてきたのです。これ自体は何も新しいことではありませんが、お互いの知恵を共有するという点が、新しいのです。

快感を得るためのさまざまな方法に名前をつけて、ひとつにまとめたというは、このサイトが初めてですが、なにも恥ずかしいことではありません。


――男性にセックスで「私がしたいこと」や「私がして欲しくないこと」を伝えることは、アメリカでは当然ですか、それとも、なかなか難しいですか?


私たちのリサーチからわかったことですが、多くの女性は、自分が好きなことを見つける旅の途中にいます。性の快感について話すことがタブーとされているために、それを表現する言葉を、私たちは十分に持ち合わせていません。

自分が自分自身の好みをはっきりと理解するにも、それを表現する言葉が必要ですから、ましてそれをパートナーに対して表現するのは難しいのです。

私たちは、女性達から聞いた好みを表現する具体的な言葉を今つくっているところです。

快感に関する語彙で、卑猥なものでも、臨床的なものでもなく、多くのヒントや情報が得られる辞書のようなものです。ちょうど、知らない場所への行き方を調べるときに地図があれば助かるのと同じ効果があると感じています。

これまで名前もなく曖昧だった喜びを表現する言葉を手にすれば、最後には旅の終わりにたどり着けると信じています。


――日本では夫婦間のセックスレスが問題となっています。しかし、女性からこの問題の解決を試みようとしても、男性側に問題があることもあり、解決につながることが少ないようです。貴社が調査で集めたデータの中に、セックスレスのよい解消方法などがありましたら、ご紹介いただけますでしょうか。


リサーチの結果、性的快感は年齢を重ねるほど増えていく傾向にあることがわかっています。でも、実際には多くのカップルにとってそれは継続的なものではなく、快感が増したと感じるまでに長い期間が過ぎることもあります。

その間にマンネリ化してしまい、快感を高める多くの可能性があっても、それにほとんど、あるいはまったく気づかないのです。そして、もう何年も自分から求めることはないと、多くの人が話してくれました。

でも、自分達だけで抱え込まずに、周囲の人たちから学ぶことだって大切なこと。

たしかに、自分の仲の良い友人という小さな範囲では自分がほしい情報が見つからないかもしれませんが、何千人もの女性の知恵を集めた『OMGYes』にくれば、あふれるほどのアイデアを知ることができます。

ここで、女性は学び、言葉を手にし、自分が望んでいることを、どう相手に伝えるかのモデルを知ることができますし、パートナーやカップルは、他の人達のさまざまなヒントやテクニックを学ぶことができる。それによって、さらに素晴らしい場所へと、私たちを導いてくれる……人生の道を皆で進んでいくことができるのです。


――現在シーズン2である「内部やGスポットへの刺激」に焦点を当てた内容を制作中とのことでしたが、公開予定はいつごろでしょうか?


シーズン2には驚くような革新的な内容が盛り込まれる予定で、私たちもワクワクしています。その中には、Gスポットに関するものや、それ以外にもさまざまな内容が含まれます。できれば、この夏にもリリースしたいと思っています。

OMGYES.comはこれまでになかったメソッドで女性の快楽を探求するサイトです。

https://www.omgyes.com/ja/

女性の性感をタブー扱いしたままでは誰も救われません。最新の調査、オープンマインドな思考、そして先進的技術を使い、すべてを明らかにしましょう。

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4月大特集「正直に向き合いたい、セックスのこと」

https://p-dress.jp/articles/6632

『DRESS』4月特集は「正直に向き合いたい、セックスのこと」。性にまつわることをヘンに特別視せず、自然なことと捉えて、もう少しオープンに考えてみると、性やセックスの在り方はより良く、幸せなものへと変わっていくのではないでしょうか。性やセックスのことをじっくり考えるコンテンツをお届けします。

大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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