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ベッドの上で起こることは、すべて称賛されていい。感情も、身体も、アクシデントでさえも

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セックスには誰かに決められた正解があるのではない。ベッドの上で起きることのすべてが称賛されるべきであり、大切なのは、相手に誠実に向き合うこと――そんな想いから立ち上がったセックスをシェアする革新的なサービス「Make Love Not Porn」をご存知でしょうか。

ベッドの上で起こることは、すべて称賛されていい。感情も、身体も、アクシデントでさえも

性についての“正解”がわからない。

中学校の保健体育では「セックスはふたりの愛の結晶」と雄弁に語られた。

何のことだかわからないまま、事を済ませた。

未だに「セックスがふたりの愛の結晶」なのかはわからない。

他の人のセックスを見たことがないから、“普通”も“平均”も知らない。


AVなら、ある。
整った顔立ちをした人の美しい肢体を液晶越しに見て、羨望で目は熱くなり焼けてしまった。

ベッドの中にはカンペも持ち込めないし、終わった後の答え合わせもできない。
“正解”がわからないまま、私たちは次の“試験”を受け、終わった後の相手の顔を見て、“自己採点”をする。

満足そうにしている相手の顔を見てホッとするのも束の間、行為の最中に自分がほんの少ししてしまった演技について思い出して、相手もそうなのではないかと不安になる。そうして私たちはまたふたりでベッドに潜っていく。不確かで小さな傷を勝手に負ったままで。

――性はもっとオープンに語られるべきだ。

そう声高に叫ぶ女性がいる。
彼女の名は、シンディ・ギャロップ。

シンディ・ギャロップ

シンディは、プロによる演じられたセックスではなく、一般人がセックス動画をシェアするプラットフォーム「Make Love Not Porn(以下MLNP)」を立ち上げた。一見エキセントリックにも思えるが、彼女はこのサービスが広まり、性がオープンに語られることで、恋人同士の、あるいは社会全体の性にまつわる“傷”を減らすことができると話す。

なぜセックスの動画をシェアすることが、性がオープンに語られることに繋がるのか。性がオープンに語られることで、“傷”を減らせるのか。

過去の記憶をたどりながら、シンディの話を聞いた。

■セックスの“普通”を誰も知らない

――まず、MLNPを立ち上げた理由について教えていただけますか?


今から11年ほど前に20代男性とお付き合いしていたのですが、そのときにベッドの上でビックリするような要求ばかりをされたんですね。ただ、よくよく考えてみると、どこかで見たことのある行為だと気づきました。それが、ポルノだった。

彼はポルノで見た行為を「いいこと」だと思って実践してくれたのだと思います。ただ、それは現実のセックスとはかけ離れたものだった。性やセックスについて学ぼうと思ったときに、参照できるものは現状ポルノしかないということ。これは大きな問題だと考えました。そこで、“普通”のセックスを見て学べるプラットフォームをつくろうと思ったのがきっかけです。


――ポルノやポルノで演じられるセックスはよくない、ということでしょうか?


いいえ、違います。

強調したいのですが、私たちは決して反ポルノではありません。ただ、エンターテイメント用に作られたアダルトコンテンツからしか情報を得られないとなると、ベッドの中で行われるセックスがパフォーマンスになってしまって、「間違えてはいけない」と怯えてしまいますよね。

セックスには賛成、ポルノにも賛成、そしてなによりセックスとポルノの違いを理解することにも賛成。そして、世界中のあらゆる人たちに対して、性に関してオープンに話すための手助けをすること。これが、私たちのただひとつのミッションです。

――性についてオープンに話すことをタブー視している人も多くいます。どうして性についてオープンに話す必要があるのか、シンディさんの考えを聞かせていただけますか?


性についてオープンに話さないことは、多くの人にとって多大な不安につながっているなって思うんです。

たとえば誰かとベッドに入ったとき、そこで行われている行為について何か一言でも言うと、相手の気持ちを傷つけたり、雰囲気や関係自体をも壊してしまうのではないかと思ってしまう。

一方で、「相手を喜ばせてあげたい」、「幸せにしてあげたい」と思ったときに、相手が心地よいと思うことはどんなことなのか、話し合えないまま事を進めてしまうと、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまいます。


――行為中のセンシティブな空気感に関しては、私も経験があるので、わかります。でも、だからこそ、性の話をオープンに打ち明けるのは勇気がいりますよね。


だからこそ、社会全体として、性について語ることの敷居を低くしておく必要があります。

だって、「あなたのセックスバリューは何ですか?」と聞いたところで、誰も答えられない世の中ですよ。それだけ私たちは誰にも性に関して教えてもらえなかったし、語り合えてこられなかった。そして、そうしたセックスバリューやマナーについて共有し合うために私は「MLNP」を立ち上げたのです。

■SNSで食べものをシェアするような感覚で、セックス動画をシェアする

――「MLNP」でセックス動画をシェアすることが、どうして性について語ることの敷居を下げ、オープンに話すことに繋がるのでしょうか?


性をオープンに話すためには受け入れやすいもの、また、気軽にシェアできるものでなくてはいけません。「気軽にシェアできるもの」と言えば、FacebookやInstagramなどのSNSですよね。ですから、MLNPの競合はポルノではなく、SNSなのです。

たとえばSNSでは日常で食べたものや楽しかったことをシェアしますよね。そうした食べたものや楽しかったことをシェアする感覚と同じように、セックス動画をシェアしてもらえば、性をよりカジュアルに捉えられるようになる。そうして、性についてオープンに語り合えるのではないかと考えました。私はこれを「ソーシャルセックス」と呼んでいます。


――たしかにセックスの動画をシェアする人の数が増えれば、性の話をオープンに話せる気運が生まれるかもしれません。でも、そもそもMLNPにセックスの動画をアップロードすることに抵抗のある人も多いのではないですか?

私たちは立ち上げまでの1年間、いろいろな人に私たちの理念を説明し、最後に「私たちのサイトに動画を投稿してくれませんか」とお願いして回りました。すると、驚くべきことに99%が「いいですよ」と答えてくれたんです。


――99%も、ですか⁉


もちろん顔を隠しての出演をする方もいらっしゃいますが、私たちが思っている以上に「自分のセックスを見せたい、見てもらいたい」、「もっとヘルシーに話をしたい」という気持ちを持った人が多かったようです。

実際、MLNPを立ち上げる際に出場したTEDの後に、世界中から男性も女性も、老人も若者も、異性愛者も同性愛者も、何千という数を超える人からの反響がありました。

セックスに関して共通の価値をつくり、最終的には経済的な利益を生みたいというビジネスモデルを考えたのは私ですけれど、そういった理念をぶつけたときに、これほどまでに共感を得られたのは私自身も驚きでした。

Make Love Not Porn」日本メディアの報道により、日本からのアクセスも増えてきている。


――すごい……。ちなみに、セックス動画をアップロードすることで出演者が傷ついたり、事件に巻き込まれたりする心配はないのでしょうか?


MLNPではあらゆることに心を配っているんです。

まず19歳以上かどうかIDをきちんと確認します。それから、ビデオに対してはキュレーターが一つひとつチェックし、演技や台本に添ったセックスではないかを見極める。その動画に出演している人全員と面接もするので、「知らないうちにアップロードされていた」という心配はありません。


――出演した人のプライバシーはどのように守られるのか、という疑問もあります。


会社や友人に見られたくない人は、影をつけたりマスクをつけたりして出演していただいても良いんです。

それから、投稿されるビデオは、料金を支払ったメンバーのみが見られるものであって、ダウンロードができないようになっています。したがって、外に動画が出ることはありませんし、気が変わった場合は申請さえいただければ削除対応はします。ですから、投稿することによって出演者の生活や関係が変わることはありません。

また、私たちは出演してくれる方々を「MLNPスター」として、視聴者がひとつの動画を見るときに支払う5ドルの半分をお渡ししています。彼らにはいつかYoutuberのように、MLNPに出演するだけで生計が立てられるようになってほしいですし、その報酬に見合うだけ多くの人に勇気を与えるアクションをしていると考えています。

■日本でも、性にまつわるオープンな対話が求められている

――「MLNP」への反応がほとんどポジティブだったということに驚きましたが、やはりネガティブな反応もあったのではないですか?


この9年間の経験から言いますと、反響のほとんどすべてがポジティブなものでした。世界中の人たちはそれだけセックスについてオープンに話したがっていたのです。

私たちがどうしてMLNPを立ち上げたのか、その理由がわかれば、皆さんはポジティブな反応をくれたわけですが、一方でビジネスやファイナンスの現場からは、ネガティブな反応が来たんです。

たとえば、ビジネスをするうえではインターネットやSNSなどの既存のサービスを利用することもあるかと思いますが、そうしたサービスの規約に「アダルトコンテンツを載せてはいけない」という文面が入っていることも多い。

しかし、何度も話しているように、私たちのミッションは「性についてオープンに語りあえる社会づくり」にあるので、ビジネスのように開かれた場所で展開することに意味がある。ですから、私たちの取り組みも、他のビジネスと同じように扱ってほしいと思っています。


――日本では性的な動画をアップロードすることは「わいせつ」に当たる可能性が大きく、ビジネスの観点で言うと、日本への展開はかなり難しいのではないかと思います。


実は5年前に『AERA』という雑誌に掲載された記事を見て、コンタクトを取ってきてくれた投資家の方がいらっしゃいました。その投資家の方が持っている会社の一社とパートナーシップ契約を結んだのですが、残念なことにその会社は他の大企業から買収されてしまいました。

買収契約の中には「私たちとの関係を解消すること」という文面があったため、残念ながら契約は切れてしまったのですが、私たちの活動に将来性を見出してくれた方がいたことには勇気づけられましたし、今、その方向性を探っているところです。

日本で展開する際は、今あるアメリカのMLNPとは違う、日本の法律に則った形の新しいものを立ち上げる予定です。動画にモザイクをかけるときや、警察への審査を通すための多大な費用を賄えるよう、“visionally millionaire”を見つけなければなりませんね(笑)。

――最近の日本での“性”にまつわるトピックで言えば、セクハラや性被害に関するものが連日取り上げられています。


MLNPが性についてオープンに語り合う社会をつくることで「良いセクシュアルバリューとは何か」を話し合うことができるはずです。

だからこそ、私たちが行っている活動は、#metoo運動や性的虐待、ハラスメント、レイプ、そういったものをなくすことにもつながっていくと思います。

少女を含めたすべての女性をエンパワメントすることは、男性にとってもハッピーな社会をつくることに繋がっていくはず。ですから、私たちの活動は、世界平和の達成に必要なものだと、本気でそう思っています。

それから実は、日本はアメリカに次いで世界でMLNPユーザーの数が二番目に多い国なのです。意外でしたか? こういった水面下にあるニーズに応えられるよう、頑張っていきたいですね。


――今の段階で、日本からもアクセスが多くあるんですね! 最後に、シンディさんにとってのセックスはどんなものなのか、教えていただけますか?


私にとってのセックスとは「ベッドの中での素晴らしい時間を誰かと共有すること」です。ベッドで起こるすべてのことは称賛の対象で、ふたりの感情も、どんな身体も、アクシデントさえも価値のあることだと思います。

そして、仕事や人生のほかの場面と同じように、ベッドの中でも、相手に関するセンシティブさや正直さ、誠実さが重要だと考えています。セックスが人生で起こる他の出来事と比べて、何かが著しく異なるだとか、そういったことはないのです。

私たちはベッドの中での出来事を、個人的なことだと思っている。
だから、相手がどう思っているかを“読み”、手探りで触れていく。しかし、その“読み”が外れていたとき、私たちは自分で作りだした偶像、すなわちひとりでセックスしていることになる。相手のことを思っているにも関わらず、だ。

ふたりできちんと話し合えているなら、“ふたりの秘め事”をシェアする必要は必ずしもないのかもしれない。ただ、裸になった、いつもよりも弱い状態で、1対1で相手と向き合って本音を言い合うのは恥ずかしく、不安で、とても勇気がいることだ。

その恥ずかしさや相手を傷つけるかもしれないという不安を薄めてくれるのが、MLNPなのかもしれない。

私たちは他人のセックスを見て、対話を通して、自分たちの“正解”を探っていく。

取材協力/シンディ・ギャロップ(Twitter
欧米で「最も影響力のある女性」として常にランキング上位、6.4万人のtwitterフォロワーも持つ、NY在住の実務家・兼・インフルエンサー。2018年1月下旬に自身のベンチャーのひとつである「MLNP」で、2億円の資金調達を果たした。

取材・Text/佐々木ののか(Twitter
文筆家。メインテーマは「家族と性愛」 。
取材・エッセイ・小説の仕事依頼はこちら→sasaki.nonoka@gmail.com

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DRESS編集部

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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