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【丸山ゴンザレス】闇を見る必要はない。けれど、綺麗な街を見るだけではわからないことがある

犯罪者も多く住むスラム、麻薬取引の現場、凶悪犯が収監されている刑務所etc……“危険地帯を巡る旅人”として知られ、クレイジージャーニー(TBSテレビ)でも、そのデンジャラスなレポートが毎回話題となっている犯罪ジャーナリストの丸山ゴンザレスさん。 今回はそんな彼に、女性も訪れることのできるスラム街について尋ねてみました。

【丸山ゴンザレス】闇を見る必要はない。けれど、綺麗な街を見るだけではわからないことがある


――世界中のスラム取材を行っているとのことですが、女性におすすめのスラム街ってありますか?

丸山ゴンザレスさん(以下、丸山):そもそも、女性ってスラム街に行きたいんですか?

――いや、どうですかね(笑)。なんとなく非日常を味わえそうだな、とは思うんですが。

丸山:あんまりその、ベースの知識とか、行く目的がないと行ってもしょうがないといえばしょうがないんですけど。ただ、「行った」ってこと自体が後々、比較対象にはなりますよね。

――普段の生活を離れて刺激を求めた時に、スラムに行くことで、自分探しじゃないですけど、ちょっと価値観が変わったりするんじゃないかと思って。

■スラムを巡るツアーがある

丸山:僕が取材している危険な無法地帯、スラムなんかの中に、あえてカテゴリを持ち込むとしたら……だいたい世界中見て回ると、大雑把に3つに分かれるんです。

完全な無法地帯と、ひとつの民族が結束しているコミュニティと、観光化しているところ。

その中でも、観光化しているところは大丈夫。ひとつの民族のコミュニティも、ツアーなんかに参加して回れば大丈夫です。ただ、無法地帯のやつは絶対にやめたほうがいい。地域でいうと、南米は無法地帯が多くて、アフリカは民族コミュニティ、アジアは観光化しているところが多いですね。

――スラムを巡るツアーなんてあるんですか?

丸山:ありますよ。日本語のサイトはなくても、現地語や英語のサイトとかであったりします。

――そういうツアーって、どうやって調べたら出てくるのでしょうか。

丸山:簡単ですよ。検索窓にスラムの名前を入れて、でtourって入れれば大概出てきます。

――なるほど!

丸山:でも、ツアーでも、まともなのもあればそうじゃないのもあるんで、過去に参加した人たちのレビューなんかを見たほうがいいですけど。あと、最低でも英語ですから、それはちょっと面倒くさいかもですね。

――ツアーなら参加しやすいですね。

丸山:僕はあんまりツアーは好きじゃないんですけどね。

あと例えば、世界最大の、ケニアのスラムなんかはツアーはないんですけど、街の入口に警察署があって、そこでお願いすると、警察官がガードについてくれるらしいです。お金を払わないといけないんですけど……警察官にお金を払うっていうのも意味わかんないんですが。ようするにどこにいっても極力安全に入る方法っていうのがある。

安全っていうのは、考え方としては「リスクを下げる」ってことなんですが、少なくとも俺みたいなやり方はしないほうがいいってことです。俺なんかはようするにトラブル込みで狙ってるところもあるから。

■おすすめのスラム街って……ありますか?

――他に入りやすい、おすすめのスラム街ってありますか?

丸山:ツアーや案内人がなくても入れる、アジアのスラムを挙げるとすれば、ひとつは韓国の釜山にある峨嵋洞(アミドン)の碑石文化村ですね。旧日本人居住区で、日本人の墓石を使ったスラム(的な雰囲気のある街)なんですけど、入りやすいです。

あとはバンコクのクロントゥーイ・スラムはツアーもあるし、中にNGO、NPOなんかもあるんで入りやすい。案内をしてくれる団体もあるはずです。

さらにもうひとつあげるとすれば、インドネシアのジャカルタに、コタ地区っていうのがあって、そこのスラム街は現地のおっさんが案内してくれる不定期ツアーがあるので参加しやすいです。

アフリカにも、いっぱいあるんだけど、例えば南アフリカのスウェトってところは有名です。ツアーもありますし。けど、同じアフリカでも、ナイジェリアのスラム街とかはやめたほうがいいかな。同じくひとつの民族で集まってはいるんだけど、ちょっと排他的すぎるので。ヨーロッパのスラムも、どこも排他性がすごいですね。ロマの人たちが集まっている場所ですが、なかなか入れない。そういう意味で、エリア的に考えると、東南アジアのスラムが入りやすいです。

――インドとかはどうですか?

丸山:あっ、インドを省いたのは、僕、あまりインドが好きじゃないんで。インド苦手なんですよ(苦笑)。

――なんでですか?

丸山:約束を守らない人が嫌いなんです。仕事で待ち合わせても時間どおりに来ないとか、そもそもすっぽかすとか。いざ、話が進んだとしても、「こうして欲しい」っていったのに答えてくれないことも多いし。過去の取材でもトラブルが多かった印象ですね。

ただ、インドのなかでも魅力的な場所っていうのはあるんですよ。ベナレスなんか、街自体がスラムっぽくて、観光地化されていてる場所もあるし、さらにヒンズー教の聖地にもなってもいる。ただ、あの街を歩いた人が誰でも面白いかっていうと、そういうわけでもないんですが、貴重な体験はできるかと思います。

まぁそんな感じで、人として価値観が変わるっていうのはないかもしれないけど、そういうところに行くことで、街の見え方が変わってくることはあるかもしれません。

■綺麗な街を見てもわからない、街を支えている人たちや街の動きが見えてくる

――そもそも、“スラムの魅力”ってなんですか?

丸山:僕のスタンスはアーバンエクスプローラー(都市冒険)というか、都市の探索ですね。物見雄山というか、興味のまま入っていく。ディズニーランドのジャングルクルーズと変わらないです。そこに、自分を変える何か、みたいな意味を見出すというのはない。

――なるほど……では、スラムを知ることで“見え方が変わる”っていうのはどういうことでしょうか。

丸山:例えば、「ゴミの全然ない綺麗な街だね」って思っていても、裏側に入るとゴミが溢れていたり、そのゴミを集めている人たちがいたりすると、「この街の美観っていうのは、そういう人たちの仕事によって成り立っているんだなぁ」って街が、立体的に見えてくる。

そういう意味では、スラム街を回るっていうのは悪いことじゃないなって思います。自分探しというよりは、自分がその時にいる街の、自分の立ち位置がよく見える。

――街が立体的を見ることができると、経験値や情報量がぐっと増えますよね。

丸山:そう。すべての物事って平面的ではないんです。

例えばニューヨークで、すごくきれいなレジデンスがあって、そこには金持ちの人たちが暮らしているっていう現実があることは、誰でも見ればすぐにわかるじゃないですか。でも周辺のホームレスの人たちが、そのレジデンスのゴミ捨て場に入る方法を知っていて、そこから拾ってきたもので生計を立てているっていう。

それで、「あのマンションには、服をしょっちゅう変える女が住んでるから、すごくいっぱい(売れるゴミが)出てくるんだよ」って。そういうことを知ることで、NYの中にも、「そういった暮らしをしている人っているんだな」ってわかってくるっていうか。「ゴミからすべてを見る」っていうんじゃないけど、ゴミひとつ取っても、そういうことがわかったりする。

――それが街を立体的に見るってことなんですね。

丸山:そう。例えば去年、フィリピンのスラム街に行った時になんですけど、僕が時々吸ってるベイプ(電子タバコ)がゴミで増えているのを見た。そうすると、「いま、ベイプがフィリピンで流行ってるんだな」ってわかったりするわけです。ゴミからは街の生活の様子がわかる。生ゴミが減ると「分別回収が進んでるんだ」とか。

――ゴミひとつにも、そういう情報がつまっていると。

丸山:ゴミに限らずなんですけど、例えばバンコクのクロントゥーイ・スラムに行った時に、鶏の足、モミジってあるじゃないすか。

あれを処理してる現場を目撃したりして「これって、何してるの?」と尋ねたら「爪を切ってるんだよ」って教えてくれて。爪を切ったモミジをどうするのかって聞くと、「その辺の屋台に売る」って。「なるほど、屋台で売られているモミジは、ここでこうして処理されるんだ」ってわかってくる。

普段、綺麗な街を見てもわからない、街を支えている人たちや街の動きなんかが見えてくる。それが「街が立体的に見えてくる」ってことです。

普通に観光地を巡るのも面白いけど、ちょっとだけ斜めからみることで、平面が立体になる。真裏にいくことはないんですよ、闇まで見る必要はない。スリルを味わうのはおすすめしません。アトラクションとはやっぱり違うので。そこは止めておいたほうがいいかなって思います。

\丸山ゴンザレスさん後半のインタビューはこちらから/

取材協力/丸山ゴンザレス

1977年、宮城県生まれ。考古学者崩れのジャーナリスト・編集者。國學院大学学術資料センター共同研究員。國學院大学大学院修了。無職、日雇い労働などから出版社勤務を経て独立。現在は国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けるかたわら、TBS系『クレイジージャーニー』に出演するなど、多方面で活動している。

現在『たそがれ食堂』(幻冬舎コミックス)で連載され、丸山ゴンザレスが原作をつとめるスラム系グルメ漫画『鳥居准教授の空腹 ~世界のスラムにうまいものあり~』は、1巻が好評発売中。

クレイジージャーニー

http://www.tbs.co.jp/crazyjourney/

TBS「クレイジージャーニー」の番組情報ページです。

Text/大泉りか
Photo/伊佐知美・Nana Takahashi

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DRESS編集部

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