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【丸山ゴンザレス】固まった価値観を動かす。文化に”触れる”旅でないと、自分探しにはならない

“危険地帯を巡る旅人”として知られ、クレイジージャーニー(TBSテレビ)でも、そのデンジャラスなレポートが毎回話題となっている犯罪ジャーナリストの丸山ゴンザレスさんに「女性におすすめのスラム」を尋ねた前編に続き、後編は「旅の危険」と「おすすめの旅行先」についてお聞きしました。

【丸山ゴンザレス】固まった価値観を動かす。文化に”触れる”旅でないと、自分探しにはならない


丸山ゴンザレスさん前半のインタビューは下記記載のリンクからご覧いただけます。


――女性が個人旅行する時に、気を付けたほうがいいことってありますか?

丸山ゴンザレスさん(以下、丸山):世界と日本では、価値基準が違うっていうこと。つまり、拒絶すること、断ること失礼じゃないっていうことです。意思表示をすることは、どんな意見であっても尊重されるべきだって考えられているので、曖昧な態度のほうがむしろ、失礼だったりするんです。あくまで僕の独自リサーチですが、曖昧さを許容する性質があるのはエチオピアとミャンマーと日本くらいですね。

――もちろん人に危害を与える側が100%悪いというのはあるのですが、ドミトリーに泊まる時に気を付けたほうがいいことってありますか?

丸山:「自分がそこそこ可愛い」って自覚は持っていたほうがいいです(笑)。

ドミとかで、可愛い子に開けっぴろげにやられるとオジサンたちのほうが正直困るんですよ。きっと女の子のほうは「襲われたらどうしよう」とか思ってるでしょ? でも実際には、それどころじゃない。

僕のようなオジサンたちは、むしろ若くて可愛い女の子がいることにキョドってしまって、目のやり場に困るんですよ! 

まあ、堂々とドミに泊まるような子っているんですよね。
果敢に挑戦するのはいいことで、否定するつもりはないんです。ただ、男側からすると目も当てられないような事故が起きることもあります。


僕の友人のライターに和田虫蔵くんっていうのがいて、そいつなんかはすごいですけどね。

昔、ドミに泊まっていたときに、地味な眉毛のない女の子が来たことがあったそうです。最初は「変な女の子が来たな」と思っていたそうなんですが、その子の携帯の裏にあるプリクラを見せられたら、メイクばっちりの思いっきりキャバ嬢風で、虫象くんのタイプだったそうです。

で、「日本で何やってるの?」って聞いたらやっぱり「キャバクラで働いてます」と。それからは果敢にアタックするようになったんですよ。で、そのアタックの仕方が、3日間くらい一緒にいた後に「そろそろセックスしませんか?」って。

――ものすごくダイレクトですね(苦笑)。

丸山:そう。そしたら向こうから「無理です」って言われて、諦めたらしいんですけど。でも、それくらい果敢にアタックするやつなんていないですよ、滅多には。長く旅していると、ナンパの仕方も忘れてるんですよ。女の子にどうやって声掛けてたかなーって。

――ということはバックパッカー同士は警戒しなくていいんですね?

丸山:バックパッカー同士、出会って付き合うことになった人たちも見たことありますけど、それ、そもそもがモテる男ですよ。旅と日常の区別がついているような。

僕みたいなのはまったくダメです(苦笑)。

丸山ゴンザレスさん/国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けながら、TBS系『クレイジージャーニー』に出演するなど、多方面で活動している。

■自分の凝り固まった価値観を揺り動かしてくれるものが旅にはある

――出会いがある人は海外でもあるし、ない人はないってことですね……。では、出会いはさておき、おすすめの旅行先ってありますか?

丸山:30代、40代って価値観が凝り固まってくるじゃないですか。それを崩したいならば、日本よりも先進国に行ったほうがいいです。

おすすめはNY(ニューヨーク)ですね。
日本って先進国ってカテゴリに入ってますけど、実はアメリカに勝ったことってない。そのアメリカの文化の最先端ってNYなんです。NYの観光マップに載っていないような、いろんなところに行ってみると「あっ。これが自分たちの文化よりも、先を行っている文化なのか」っていうことに気が付く。

――旅行っていうと、ついアジアのリゾートに癒しを……って思いますけど、そうじゃなく、文化に触れに行くってことですね。

丸山:そうです。先進国っていうのは部分部分ではたくさんあるんですよ。例えば、音楽だったら東欧いってもいいし、肉料理だったら南米にいってもいい。もしも、自分が見たいものが決まってるんだったら、後進国にいって、古いアジアに触れるよりも、ずっと自分探しにはなるんじゃないだろうかと。まぁ、触れられないと意味がないんですけどね。

――触れるってどういうことですか?

丸山:俺の話で言うと、価値観が揺れ動かされたって思ったのは、NYに行った時のことです。

現地に住んでいる友達でアーティストをしているやつがいるんですけど、そいつがブロンクスで音楽スタジオの壁にペイントアートするって。「壁に絵を描いてるから、来てよ」って誘われて。ブロンクスってヤンキースタジアムとかある地区だけど、見に行ったんです。

けど、その友達となかなか連絡がつかなくて、近くをうろうろしてたんですよ。
で、喉が渇いたから商店でジュースを買おうとして、なんの気なしに、ペプシを取ってレジに置いたんだよね。そしたら店員に「お前、なに選んでるんだよ、おいおいおい」って言われて。「コーラっていったらコカ・コーラだろ、ペプシなんて買うなよ」ってゲラゲラ笑われたんです。

丸山:いったい何かと思ったけど、ペプシっていま、CEOが代わって業務転換を果たして、ローカロリーとかヘルシー方面に移行している。もう、かつてのジャンクな味のコーラじゃないんです。だから、アメリカの黒人たちがいっぱい住んでいるようなブロックでは、人気がない。コーラといったらコカ・コーラであって、ペプシコーラではないと。

何が言いたいかというと、そこにある現象と、自分の中にバックボーンとしてある知識が結びついて、いま、世の中で起きてることがわかる。

コーラの例は些末すぎるものですが、そういった小さい“気付き”が連続してポンポンポンポンって見つかると、「ああ、そうか、俺が常識って思っていたものって、違っていたんだなぁ」って揺れ動かされる。30年、40年生きてると、なかなか自分を動かしてくれるものって出会えないじゃないですか。けど、旅することで、それが動くっていうのが面白いですよ。

■国内でも船に乗れば、「日常が断絶される旅」になる

――そういう体験って国内でもできますか? というか、そもそも丸山さんは国内旅行って行かれるんですか?

丸山:昔はよく行ってましたよ。19歳まではずっと青春18きっぷを使って国内旅してました。一番最初は、高校一年生の時に、実家の仙台から西日本を回って日本海を回って、駅とか工事現場に寝泊まりしながらずっと旅したっていう。春休みとか夏休みとか。

――海外のイメージが強いですけど、国内も回られてたんですね。では、オススメスポットってあります? できれば刺激的な。

丸山:だったら島ですね。離島って独特の文化があるので、そこが面白いです。

僕、大学で考古学を専攻していて、それで遺跡の発掘でよく伊豆諸島を回ってたんですけど。例えば、ある島では、毎週木曜日に食料品店に発注すると、その翌週とかに船で届くんですけど、その間はビールをあんまり飲まないようにしないと、島からビールがなくなっちゃうとか、再来週の天候が荒れそうだから、今うちに買っておこうとか。

食料を確保するっていうことが、島ではけっこう大変だったりします。

あとは島の公衆露天浴場みたいなところがあって、地元の人が来る前に行くのかいいのか、帰った後に行くべきなのか、そういうことを、ちょっと地元の偉い人に聞いてみたりとか。そういう独特のルールが面白い。当たり前にローカルルールがあって、島の人たちはあんまり教えてくれないんですけど、面白かったですよ。

――具体的にいうと何島ですか?

丸山:三宅島とか大島とかと利島とか、そういうところを回ってたんですけど。

沖縄の離島とかも、2、3時間でいける島もあったりして異国情緒がある。

旅行って飛行機や電車で行っても、なんとなく日常の延長感があるじゃないですか。でも船だと、通常の日常とは断絶する感じがする。違う世界に行く感じがするので、僕は国内に限らずどこかの都市に行ったときに、船に乗るようにしてますね。そうすると「旅行に来たな」って感じがする。沈んだら大変だなぁ、なんて思いながら。

――同じ旅先でも、見方や交通機関を変えることで、得られるものがぐっと違ってくるってことですね。ただ旅をするのではなく、ちゃんと体験なり経験からなにかを「得よう」って意識が大切なのかもしれません。今日は面白いお話、どうもありがとうございました!

丸山ゴンザレスさんに「女性におすすめのスラム街ってあるの?」「スラムを巡る魅力ってなに?」という疑問をぶつけたインタビュー記事はこちらからご覧いただけます!

取材協力/丸山ゴンザレス

1977年、宮城県生まれ。考古学者崩れのジャーナリスト・編集者。國學院大学学術資料センター共同研究員。國學院大学大学院修了。無職、日雇い労働などから出版社勤務を経て独立。現在は国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けるかたわら、TBS系『クレイジージャーニー』に出演するなど、多方面で活動している。

現在『たそがれ食堂』(幻冬舎コミックス)で連載され、丸山ゴンザレスが原作をつとめるスラム系グルメ漫画『鳥居准教授の空腹 ~世界のスラムにうまいものあり~』は、1巻が好評発売中。

Text/大泉りか
Photo/伊佐知美・Nana Takahashi

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DRESS編集部

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