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恋に”自分らしさ”は必要ない? 男性は「正門」と「勝手口」を持つ生き物です

男性には正門と勝手口がある。「性格がいい」とか「明るい」とかそういった女性の内面重視を正門では善人を装いながら、勝手口では「ルックスが自分の好みであることが大前提」と、うそぶいているのである

恋に”自分らしさ”は必要ない? 男性は「正門」と「勝手口」を持つ生き物です

■”自分らしさ”は出会いの壁になる

「男性を意識したファッションなんて私はしたくありません」


かおりさんは、紅茶のカップの取っ手をギュッとにぎったままそう私に答えた。


彼女は1時間前、婚活相談にやってきた。
髪の毛をひとつにしばり、Tシャツとジーパン姿でやってきた。メイクをした形跡はひとつもない。

面談を行い、書類の説明をしたところまではスムーズだった。
しかし、婚活写真の話になった途端、彼女は口をへの字にして、体をこわばらせたのだった。


「かおりさん、もしかしてすっぴんですか」

私はのぞきこむように彼女にたずねた。

「はい」

「普段もそんな感じですか?」

「あ、そうですね。会社もノーメイクです。朝早いですし、私自身はそういう人ってことで職場でも通っていますし」

彼女は屈託のない笑顔でそう答えた。

困ったな……と思った。普段からすっぴんで通している彼女のライフスタイルに反することを言わなければならないからだ。

「かおりさん、婚活写真のときは、メイクをしてもらいますよ」

「え、結構です。私は自分らしい姿を受け入れてくれる人と結婚できたらいいので。メイクをして写真を撮るなんて、一種の詐欺ですよ」

彼女は、少し眉間にシワをよせてそう答えた。


”自分らしさ”――これはまさに出会いに対する壁だ。


私も婚活の仕事をはじめて9年目になった。
当初は、かおりさんのような女性たちにどうしたらいいのかわからず、なされるがままになっていた。

そして、ノーメイクで自撮りをしたであろう写真を婚活写真として採用した。

結果、どうなったのか――。

「こんな女性とお金を払ってまで出会いたくない」とほとんどの男性が断った。

女性たちは、お見合いがまったく決まらない状況に傷つき、婚活の場から退場していったのだ。

■男性とは「正門」と「勝手口」を持つ生き物である

男性とは「正門」と「勝手口」を持つ生き物だと思う。

私は婚活面談の前にちょっとしたアンケートをとる。
それは「どんな異性と結婚したいのか」というイメージについてだ。

9割以上の男性は

・性格が良い女性
・明るい女性
・一緒にいてホッとする女性


のどれかで必ず答える。


そこで私は面談した印象から、お見合い相手の女性を選び、提案する。

しかし、彼らはしばしばとても不服そうな態度に出る。

「一緒にいるイメージがわかない」と言ってやんわり断ってくるのだ。それは「ルックスが自分の好みではない」を意味する。
彼らにとって、いくら性格が良くても、明るくても、一緒にいてホッとするとしても……それは関係ない。

この現実は結婚相談所を経営した当初、私の胸にガツンと来た。

正直言って私は太っているし、美人でもない。だけれども、自分の見た目がうんぬんで男性から交際を断られたことはなかった。夫も、私に「痩せろ」と言ったことは今まで一度もない。本当に相性が合う男性というのは、見た目なんて超越して一緒にいられるものなのだと信じて疑っていなかったのだ。

私は「どでかいハンディを背負っていることに気づかないまま私は生きてきたのか」とショックを受けた。
同時に、男性に対してムンクの叫びのような気持ちになる。


男性には「正門」と「勝手口」があるのだ。

「性格がいい」とか「明るい」とかそういった女性の内面重視を正門では善人を装いながら、勝手口では「ルックスが自分の好みであることが大前提」と、うそぶいているのである。

■自分らしさは、何かをすることなしに表現されない

「かおりさん」

私は意識的に少し口角をあげた。押し付けがましくならないようにこれからのことを話さなければいけない。

「あなたは、自分らしさというものをわかっていないと思う」

私は、ルイボスティーを一口飲んで、少し深めに息を吸った。

「私も普段すっぴんだからわかるんだけど、すっぴんというのは白いキャンバスみたいなものなんです」

「どういうことですか?」

「『らしさ』というのはそもそも表現そのものです。すっぴんはその点、何もしていません。だから、自分がそれを『らしい』と思っても、第三者には伝わらないんですよ。そもそも、あなたにとって『自分らしさ』ってなんですか」

私がこのように尋ねると、彼女はゆっくりと首をかしげて目を上にした。

沈黙は20秒ほど続いた。

「難しいですね」

彼女はそう答えた。

「ね。自分らしいってすごく曖昧でしょ。でも、自分らしさは絶対に無視してはいけないんですよ。自分らしさの本質は、実は自分でわかることではないんです。他人を通してわかることなんですね」

「え、どういうことですか? 自分らしさって自分がしっくりくる感じだと思うんですけど、どうして他人が関わってくるんですか」

なんだか1970年代の大学生がよく喫茶店で行っていたであろう抽象的な議論みたいになる。
婚活の面談は、得てしてこういう話になりやすい。

「では、『かおりさんらしいね』って今まで言われたことはありませんか?」

「あ、あります」

「でしょ。らしさというのは自分が感じると同時に他人が感じるものでもあるんですよ。では、あなたは『らしい』と言われてどういう気持になりましたか?」

彼女はうーんと少し考えて、答えた。

「いろいろですね」

「というと?」

「嬉しかったときもあるし、嫌な気持ちがしたこともありますね」

「嬉しかったときはどういうときですか?」

「『私のこと理解してくれている』って思ったときかなぁ」

「では、嫌な気持ちがしたときって?」

「うーん、『勝手に決めつけんなよ』って思ったときですね」

これで彼女は気がついたみたいだった。

「あ、私のことを理解してくれているかどうか……ということで気持ちが変わるんですね」

「そういうことなんです」

私は、少し大きめの声で言った。


自分らしさというのは、誤解されずに相手に伝わる必要があります。

また、他人にとって魅力的なものでなければいけません。そのためには、こちらの努力もしなければいけない。
それは自分を押し曲げる努力ではなく、自分がより良く理解されるための努力だと、私は思います。

■自分らしさを伝えるとは、「装うこと」である

かおりさんとの会話は次のように続きました。

「例えば、私はかおりさんと今お話をして、かおりさんらしさというのは『素直さ』『裏表のなさ』だと感じました。それで嫌な気持ちがしますか?」

「全然。そう言ってもらえて嬉しいです」

彼女は頬に軽く手のひらを当てて、はにかんだ顔をした。

私は話を続けた。

「かおりさんの素直さ、裏表のなさを伝えるためには、まず印象から工夫しなければいけません。男性に媚びる必要はないんです。あなたの良さが伝わればいい。私が感じたあなたの良さは、普段、職場でライバルと戦いながら、クライアントと悪戦苦闘しながら高みを目指す男性にとっては癒やしになります。だからかおりさんに”癒やす力”があることを一瞬で伝える必要があるんです。それが、ファッションとメイクなんです」

彼女は、少し前に体を傾けながら私の話に聞き入ってくれている。

「素直さを表すのは白を代表とする淡いカラーです。淡いカラーならば色は好きなものを選んで構いません。裏表のなさというのは、すっぴんとギャップがなさそうなメイクです。いわゆるナチュラルメイクですね。わざわざ濃いアイラインを引いたりつけまつげをする必要はありません。すっぴんが想像できる程度のメイクでいいのです」

「だったら、すっぴんでも構わなくないですか。それなら手間が省けるし」

「だめです」

私は、途中で彼女の続きの言葉を静止した。

「すっぴんそのものに意味が出てしまうからです。すっぴんは『あなたは私にとって装う価値のない人間です』という暗黙のメッセージを与えてしまいます。ファッションも同じです。明らかにそのまま目の前のものを手にとって着ると、そのこころが相手に伝わってしまうのです。装うことというのは『あなたのために手間をかけてきました』という心遣いです。百貨店の包装紙みたいなものですね。同じものもむき出しのまま渡されるのと、包装紙にきちんとくるまれて渡されるのとでは全然印象が違いますよね」

「本当ですね。装うというと、『嘘をついている』という後ろめたさがありましたが、『自分らしさを伝える』と考えれば必要なことだと思いますね」

まさにそのとおりなのだ。

ファッションの話となると、どうしてもモテるためとかかっこよく見せるためとか、可愛く見せるため、とか印象操作的な手段として扱われやすい。

そもそも操作なんてする必要はない。自分らしさがバシッと一瞬で伝わる。これが大事なのだ。
自分らしさとは魅力なので、それが表現できれば、男性は勝手口で「この人と会ってみたい」と心騒がせるものなのである。

ぜひ、あなたらしさを表現する、そういった装いを始めてみようではありませんか。

大西 明美

婚活アドバイザー。自ら経営する結婚相談所で7年で200組以上のカップルを成婚へと導く。

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