#だからひとりが好き ディレクターがすすめる「ひとり」に勇気をくれる本5冊
『DRESS』1月特集は「トモダチってナニ?」。今あらためて友達について考えます。同時に、友達という他者とではなく、ひとりで過ごす時間にも目を向けてみては。誰かとの時間も尊いものだけれど、ひとりで自分と向き合う時間もとても大切なもの。ひとりが好きな人、ひとりでいることに不安を感じる人、どちらにもおすすめの本をご紹介。
DRESS読者の皆さん、はじめまして。『ハフポスト日本版』というニュースサイトで記者・編集者をしている吉川慧と申します。うだつの上がらない29歳男。独身です。
突然ですが、「リア充代行サービス」というのをご存知でしょうか。
「自分の誕生日、友だちもパートナーもいない私を祝ってくれる人はいない……」
「ましてや、プレゼントなんて誰もくれない……」
「友達に囲まれて、誕生日パーティをやってみたい……」
そんな人に向けて、SNSに投稿できそうな「リア充っぽい」写真を自分と一緒に撮ってくれるサービスのことです。
たしかに「リア充」という言葉には“魔力”があります。同様に「パリピ」「女子会」「ママ友」といった言葉もありますね。社会では、明るく、元気で、活動的な人が好まれやすい。「集団で、ワイワイ楽しく過ごすことや、つながりを持つことが是である」とする空気があるように思います。
一方で、群れずに過ごす人々を指す「おひとりさま」「ぼっち」「非リア」といった言葉には、なんとなく後ろめたさが漂います。
そんな中、『ハフポスト日本版』では「#だからひとりが好き」という企画をスタートしました。
「みんな」と過ごすことと同様に、「ひとり」で過ごすことや「内気」であることもひとつの個性として、肯定するメッセージを発信したい――そんな趣旨で立ち上げた企画です。
学校や職場などで「みんな」と一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり。いまの社会では、つながることが奨励され、ひとりで過ごす人には生きづらいと思える場面もあるかと思います。
今回は、そんな「ひとり」で過ごすことが好きな人に勇気を与えてくれる本を5つご紹介します。
『内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える』スーザン・ケイン
いまアメリカのビジネス界では「内向的な人の働きかた」「ひとりで黙々とする作業」を再評価する「Quiet Revolution」という動きが広がっています。そのきっかけとなった1冊です。
「ビル・ゲイツも、ガンジーも、ウォズニアックも、みんな内向型の人間だった」――ひとりが好きな人にポジティブな気持ちを与え、かつ「自分に合った働き方とは何か」を考えさせてくれる一冊です。
『美しいものを見に行くツアーひとり参加』益田ミリ
世界中あちこちのツアー旅行に「ひとり」で参加したイラストレーター、益田ミリさんによるエッセイ集。モン・サンミッシェル、オーロラ、リオのカーニバル……。世界の絶景も、実は「ツアーひとり参加」だと気軽に見に行けるようです。
「ツアー」といっても、常に全員が一緒に行動するわけではありません。みんなで観光もするし、自由時間はひとりでふらっとできる。コストや安全面などを考えると、現実的な選択かもしれません。「ひとり旅に行きたいけど、海外は不安……」という方に読んでほしい本です。
『八月の六日間』北村薫
いくら「ひとりが好き」とは言っても、「好きでひとりでいるわけではない!」という人もいるかもしれません。そんな方におすすめしたいのが、この小説。
40歳を目前にした主人公が、ある日突然、登山の魅力に目覚めます。山登りは一歩間違えば命を落としますが、それは人生も同じ。
「思い通りの道をいけないことがあっても、ああ、今がいい。わたしであることがいい」。生きづらい世の中にあって、「ひとり」で過ごすことの意義を示してくれます。
『おひとりさま専用Walkerこれは、ひとりで読んでください。』
「おひとりさま専用」の東京ウォーカーです。ひとりで楽しめるレジャーや、ひとりでも気軽に入れるレストランを紹介しています。今では、焼肉もしゃぶしゃぶも、ひとりで楽しめる時代です。
ここ最近、外食・旅行産業などを中心に「おひとりさま需要」を喚起する取り組みが増えています。
日本の「生涯未婚率」(50歳まで一度も結婚をしたことがない人の割合)を見てみると、1950年は男性1.5%、女性1.4%。昭和の時代は、国民のほとんどが結婚する「皆婚社会」でした。
ところが2005年に男性16%、女性7.3%に。さらに10年後、2015年には男性23.37%、女性14.06%と、過去最高の生涯未婚率になりました。
どうやら「平成」という一時代を通して、日本人のライフスタイルが変化するにつれて、レジャーの楽しみ方もシフトしてきたのかもしれません。
『ネットの高校、はじめました。 新設校「N高」の教育革命』崎谷実穂
老舗出版社KADOKAWAと「ニコニコ動画」で知られるドワンゴを傘下に持つ「カドカワ」が設立した高校「N校」の教育内容を解説した本です。
教育現場では、部活や文化祭、サークルなどの学校行事で一体感を高める仕掛けが豊富に用意されています。しかし、同調圧力に悩んでいる子どもがいることも確かです。働きかたの多様化が進むのであれば、学びかたも多様化して良いように思います。
N高の教育方針の中で面白いのが、集団生活が苦手な子や引きこもりや不登校など「従来の高校」に合わない子が持つ潜在的な可能性にも注目している点です。
スクールヒエラルキーがなく、内気な子でも自分のやりたいことが自由にできる。校長の奥平博一さんは、『ハフポスト日本版』の取材に「それぞれに居場所がある」と語っています。
近い将来、小学校も中学校も、通学して勉強するか、自宅で勉強するか好きに選べる時代が来るかもしれません。そんな21世紀の教育のかたちを考えるきっかけを与えてくれます。
■「ひとり」は全然不幸じゃない
私が所属する『ハフポスト日本版』ではこれからも、読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいです。
ハッシュタグ「#だからひとりが好き」も用意しています。今回ご紹介した本の感想や、みなさんの「ひとり」体験がありましたら、ぜひぜひお聞かせください。
人と出会い、つながり、語り合う時間は、とても大切です。でも、「みんな」が同じである必要はありません。
この世界は、さまざまな個性を持つ人が、それぞれの生き方をすることで成り立っています。一人ひとりが、自分に合ったかたちで学び、働き、遊び、生きる。大切なのは、互いを認め合い、強制しないことではないでしょうか。
内向的は個性であり、ひとりは社会を強くする。「ひとり」は決して不幸ではない。私は、そう信じています。
Text/吉川慧
『ハフポスト日本版』ニュースエディター。1988年東京都生まれ。東京中華学校講師(世界史)、ドワンゴのニュース部門などを経て2016年3月から現職。関心領域は政治・国際ニュースのほか、歴史、美術、映画、将棋、落語、アニメ・漫画など。お肉が大好き。ハフポストの特集企画「#だからひとりが好き」ディレクター。
Twitter:https://twitter.com/dong_po_rou
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