『コウノドリ』10話。「出生前診断」は”命の選別”か? つらい選択、あなたなら?

『コウノドリ』10話。「出生前診断」は”命の選別”か? つらい選択、あなたなら?

産科が舞台の医療ドラマ『コウノドリ』第10話のレビューをお届けします。出演は、綾野剛、星野源、松岡茉優、坂口健太郎、吉田羊、大森南朋ら。今回のテーマは「出生前診断」。それぞれの迷いと決意が描かれました。


先週放送された第10話のテーマは「出生前診断 命についてのすべてのこと」。これまでのエピソードの中でも、とりわけ重いテーマだ。

■軽い気持ちで出生前診断を受けないで

NIPT(新型出生前診断)を受け、21トリソミー陽性と診断が下った妊婦の高山透子(初音映莉子)と夫・光弘(石田卓也)がサクラ(綾野剛)のもとを訪れる。この診断は、お腹の赤ちゃんが高い確率でダウン症候群であることを示していた。

さらに確度の高い羊水検査の受診を希望する光弘だが、透子は無言のままだ。しかし、高山夫妻は、結果をどう受け止め、現実的に対処するかを考えなければいけない。

「僕たちはどんな結論になっても、高山さんの結論を支えていきます。これからのこと、一緒に考えていきましょう」

サクラの言葉が本当に優しい。寄り添うってこういうことだ。

なお、ドラマ内で四宮(星野源)が指摘しているが、検査だけを行って患者を放り投げてしまう出生前診断には注意が必要だ。日本産婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」には、「検査前によく説明し適切な遺伝カウンセリングを行った上で、インフォームドコンセントを得て実施する」と明記されている。

遺伝カウンセリングでは、検査前に適切な情報提供を行うとともに、出生後の医療、ケアに関して説明しなければいけない。受ける側も、受けさせる側も、ネットで流行している性格診断のような気軽な気分で出生前診断を行ってはいけないのだ。

■出生前診断、もう一組の夫婦の事情

もう一組の夫婦、明代(りょう)と夫・信英(近藤公園)が行った出生前診断にも、21トリソミー陽性の診断が下っていた。明代は出生前診断を受ける前から、子どもに障害があるなら中絶すると決めていた。

サクラと今橋(大森南朋)に、明代は「私たちには育てられないと思います」と話す。明代たちは小さな弁当屋を営んでおり、障害のある子を育てる余裕がないというのだ。また、上に長女がいるとも話す明代。だから赤ちゃんには執着しないということだろう。ふたりの年齢が高齢だということも関係ある(演じているりょうは44歳)。彼らはダウン症のわが子を長く面倒見ることができない。

その後、保育園に長女を迎えに行って笑顔を見せる明代たち。このシーンでなんだか無性に悲しくなるのは、子どもって可愛いなぁ、素晴らしいなぁ、とあらためて思い知るからだろう。お腹の赤ちゃんとだって、こういう時間が過ごせるはずなのに、と。

■ダウン症の子を持つ母・奥山佳恵が考える理想

ここでダウン症の子・壮真の母親・弓枝役として奥山佳恵が登場する。
すでに多くの人が知っているように、奥山は実生活でダウン症の子を育てている(ドラマの中の設定と同じく次男)。多くの人に協力してもらいながら職場に復帰した弓枝の表情は明るい。

「いろんな人にお世話になって、どうなんだって思うけど。それこそ、壮真にもね」

ダウン症の息子を世話するばかりではなく、逆に息子に世話になっていると話す弓枝。ダウン症の子を育てることで、彼女自身得るものがあったのだろう。

奥山が理想として考えているのは、ダウン症の子と障害のない子が一緒に育ち、笑い合えるような社会だ。

「みんな得意、不得意があって凸凹なのが社会でしょう。じっとしていられない子、勉強ができる子、いろいろいて、支援が必要な子の数だけ先生が増える。子どもも、それぞれが自分にできることを考え、フォローするところはフォローしてクラスができあがっていく。それが私の理想です」(朝日新聞デジタル 2017年4月29日)

なお、撮影に関するエピソードを知るために奥山のブログを読んでみたら、綾野剛に演技を褒められてひたすら大喜びしていた。明るさって生きるための武器だね。

■「それぞれの事情の上に命は生まれてくる」

このエピソードには、もうひとりの妊婦が登場する。小松と同期の助産師・京子(須藤理彩)だ。45歳での高齢出産を控えていた彼女は出生前診断を受けないと決めていた。

「どんな子どもでも受け入れる! 自分の子どもなんだから。口で言うのは簡単なんだけどね」

余談だが、筆者も妻が40歳で長女を妊娠したとき、出生前診断についてよく話し合った経験がある。結論として、出生前診断は受けなかった。考え方としては京子と非常に近い。

明代は中絶を選び、透子は迷いに迷った末に産むことを決意する。しかし、誰かを賛辞し、誰かを非難するようなことはない。出生前診断を「命の選別」として否定的な見解があることも取り上げている。ただ、それも考え方のひとつに過ぎない。

このドラマのスタンスは、次のサクラの言葉に集約される。

「それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ」

ここでも『コウノドリ』全体のテーマである「生まれること、そして生きること」が貫かれている。出産は奇跡だ。だが、その後には長くてシビアな現実が待ち構えている。子どもを育てるのは家族だ。産科や新生児科の医師たちの務めは、家族に寄り添い、彼らの事情を理解し、正しい知識を与え、支えていくことだ。

なお、ドラマの公式サイトから「NIPTコンソーシアム」のリンクが目立つところに貼られている。出生前診断を受けようか受けまいか悩んでいる人はご一読を。

金曜ドラマ『コウノドリ』

http://www.tbs.co.jp/kounodori/

TBS「金曜ドラマ『コウノドリ』」番組公式サイトです。命についてのすべてのこと “ボクらは毎日、奇跡のすぐそばにいる─” 金曜 よる10時〜 放送。

この記事のライター

ライター。文春オンラインその他で連載中。ドラマレビュー、インタビュー、名言・珍言、中日ドラゴンズなどが守備範囲。著書に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』『野原ひろしの名言集 「クレヨンしんちゃん」から...

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